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幼女転生から始める異世界解読術  作者: りょう
第8章光ある未来は少女達を闇へと落とす
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第75話 愛ゆえに

 奏は俺にとってとても大切な存在だった。絶対に手放したくなくて、絶対に居なくなってほしくない存在。それが彼女だった。

 俺が彼女に対して抱いていた気持ちを表すなら、きっとそれは恋心なのだろう。彼女が俺の事をどう思っているか分からなくてもいい。たとえ俺の気持ちが叶わなくたっていい。そう思っていた。


「よかった……龍ちゃん……。私ちゃんと守ってあげられた……」


「奏! 奏ぇ!」


 彼女の存在が、俺の中からいなくなったその時までは。


「あれ、ユウちゃん。またやって来たの? 今度は一人みたいだけど」


「カナデお姉ちゃん、会えてよかった」


「もしかして私に会いに?」


「うん」


 以前彼女と会った時とは目的が違い、スービニアから約二日の道のりをかけて、ここまで会いに来た。奏に俺が今ここにいる事を教えるために。


 そしてフリスを襲撃した真意を本人から聞くために。


「少しお姉ちゃんとお話がしたくて」


「お話? わざわざ遠くから来たみたいだけど、それほど重大な話なの?」


「うん。とっても大切なお話」


「そうなんだ。じゃあお姉ちゃんも大切なお話をしよっか」


「え?」


 思わぬ返答に俺は素が出かけてしまう。俺から話があるならともかく、奏の方から話ががあるとするなら、その内容は……。


「ユウちゃん、私に隠し事してるよね? それもとても大切な隠し事」


「き、気のせいじゃないの? そういうお姉ちゃんだって、隠し事をしているよね。フリスの事で」


「フリス? 誰の事?」


「お姉ちゃんが襲撃した私の大切な仲間だよ」


「あー、そういえばそんな事あったね。でもあれって、仕方がない事だから」


「仕方がない事? 人をあんなに傷つけておいてそれは」


「これもそれもあなたの為なんだよ? 龍ちゃん」


「っ!」


 一瞬の不意を突かれた俺は、一瞬で奏に体を持ち上げられ、首を絞められる。


「ど、どうしてこんな……」


「私全部知っちゃったの。預言書で」


「預言書? もしかしてアジールの……」


「そう。そこには事細かに書かれていた。私がここまで辿って来た事、そして龍ちゃんがずっと繰り返し転生を続けている事」


「でもそれは……奏も同じじゃ……」


「同じじゃないよ! だって、龍ちゃんが転生を続けている本当の理由は私にあるんでしょ? それをユウちゃんが協力してくれて……」


「奏の……せいじゃ……」


「ならどうして! どうして龍ちゃんは自ら命を落とすような事をしたの?!」


「そ、それは……」


 言い訳なんてできなかった。今全てを思い出した俺は、ここまでの事全てを理解している。理解しているからこそ、言い訳なんて生まれてこない。

 それが自分の正直な気持ちなのだから

 大切な人を守れなかった自分への罪滅ぼしなのだから


「奏の……た…め……」


「え?」


「奏が……す……」


 だがそれを言う前に、首を絞め続けられたユウの体は限界に到達し、そのまま意識を失ってしまった。


(今度こそ俺は……死んだんだな……)


 今度転生するならどんな形になるんだろう。


 ■□■□■□

 間に合うと信じていた。


「あ……あぁ……」


「「ユウ!」」


 けどほんの少しの差で、私は今回もユウを守ることができなかった。彼女、奏の手から落ちたユウは、駆け寄る私達の声に反応を示さない。


「奏! どうしてこんな事を……」


 私は溜まっていた怒りを奏にぶつける。彼女はただ呆然としていて、返事すら返ってこない。


「私……ここまでするつもりは……」


「なくてもした! 奏は人を殺した!」


「何よあなた……どうして私の名前を……」


「許さない! 絶対に!」


 今すぐにでも押し倒して、殴りたい気持ちになるが、それを抑えてユウの状態を確認する。


「フリス、ユウの状態は」


「息、してない。心臓も動いてないよ」


 涙目になりながらフリスは震える声で言う。私も確認するものの、やはり同じ。


「ねえこの前の儀式で生き返らせる事できないの? だってユウは、また転生するでしょ? ならその前に呼び戻せば」


「今回は事情が違う。この前は魂が抜けただけ。でも今回は、体そのものが死んでる」


「つまりユウが本当に死んじゃったの?」


「そう……なる」


 この前やった儀式は、あくまで生きた体、つまり器に魂を呼び戻した。けど、この場合は既にユウの体が死んでしまっている。つまり呼び戻すことは不可能。


 そう、不可能。光ある未来を取り戻すことは不可能


「そんな……嫌」


「フリス……」


「責任取ってよ! この前私を傷つけた事は水に流すから、ユウを返してよ!」


 その現実から生まれ出すのは怒り。そしてその怒りをぶつける矛先は、奏。彼女はというと、未だに茫然自失になっている。フリスは涙を流しながら彼女に掴みかかった。


「返すなんて……どうするの? こんな事預言にされていなかった」


「じゃあ何で預言にない事をしたの! そんなに後悔しているくらいなら……くらいなら……」


 奏の心の声が聞こえてきたのか、フリスは脱力しだした。


「ねえどうして……そんな事を考えているの……。ねえどうして!」


「何を突然に……」


「フリス、何が聞こえたの?」


「そんな事を隠してたなら……最低だよ……。最低……」


「フリス?」


 フリスの嘆きの声は、森の中に響き渡り続けた。


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