第70話 世界の未来を奏でる少女
出発は三日後となり、俺はそれまでの時間を使って、今までほぼ触れてこなかった二冊目の少女、カナデを読み解いていく事にした。
「さ、さ、触らないで! 変態!」
「いや、そう言われてもこれはこの先の未来のために必要なの」
「私に触れる事が? 私はそういう趣味はないので、やめてください、お願いします」
「お願いされた?!」
ただ、二冊目と出会ってからほとんどコミュニケーション取っていなかった為、俺が読み解こうとする事を彼女は拒否。おまけに変態呼ばわりまでされたので、早くも暗雲が立ち込めてしまった。
「と、とりあえず話を聞いてくれない? 私は決してそういう意味で言っているわけじゃないから」
「じゃあどういう意味なの?」
「だってあなたは預言書なんでしょ? 私はそれを読み解ける力があるから、世界の未来のために力を貸して」
「確かに私は預言書だけど、誰かに読まれたりしたくない」
「どうしてそんな事を」
「だって私知っている。私達を巡って世界で争いが起きているのも。そしてこの先、それが何をもたらすのかを」
「だったらそれを回避するためにも」
「けどあなたの事はどこにも書いていない。だから信じられないの。貴方も預言書を悪用する人なんじゃないかって考えると」
「それは……」
言葉で悪用しないと言うのはとても簡単だ。けど、今それを彼女に言ったところで、それが信用につながるわけがない。
カナデが言っていることは間違ってもいないし、悪用されたくない気持ちも分かる。でも俺は、ここで引き下がることなんて出来ない。
「分かったよ、そこまで言うなら」
「まさか実力行使? なら尚更、私は」
「お願いします! 私に預言書を解読させてください」
だからおれは今自分にできる事をする。たとえそれが己のプライドを捨てる事になったとしても。
「ど、どうして土下座なんかまでして」
「言葉で伝わらないなら、体で示す。それが私の考えだから」
「だからってそこまでしなくても」
「そこまでしてでも、貴方には分かってほしいの。私は本気なんだって」
小さい体でもできる、誠心誠意の土下座
言葉で伝わらないなら、行動で示す。それは俺が歩んできた人生の中で、学んできた事。それが文化と表現するのは間違いかもしれないが、これが日本の和なのかもしれない。
それが異世界で通じるかは、別の話だけど。
「……本気な気持ちは伝わったよ。でも申し訳ないけど、それでも私は協力することは出来ない」
「どうして」
「分からないから」
「分からない?」
「この選択が私にとって正しい選択なのか分からないから。もし貴女がしようとしている事が、本当に正しいのか証明できたら、協力する」
カナデは土下座をしたままの俺を放置して、その場を離れてしまった。気持ちは確かに伝わった。けどそれ以上に足りないものがあった。
それはこれから俺達がする事が、本当に正しいのかどうか
預言の未来を越えた未来が本当に正しい道なのか、それは今の俺には証明できない。恐らく三冊目の少女もそれを分かっていたから、きっぱり断ったのだろう。
(ユニはそこまで分かっていたのか……)
俺に足りないものはまだ沢山ある。けどその正しさを証明するにはどうすればいい。
(どうすれば……)
そう考えているうちに時間が過ぎてしまっては意味がないと思った俺は、気がつけば体を動かしていた。今俺の力で出来る精一杯の証明。それを誰かに示すのに必要なのはやはり……。
(もう一度整理しよう、俺がこれからするべき事、そしてそれがどう言う未来を描けるのかを)
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「どういうつもり?」
ユウとカナデの一部始終を見ていた私は、少し離れたところでカナデに話しかけた。
「別に貴女には関係ないでしょ? もう預言書ですらないんだから」
「関係ある。私はユウと協力して、世界を変える」
「世界を変える……そんな事ができると思っているの? 預言書を解読したくらいで」
「私はそれを彼ならできると信じてる」
「そこは彼女じゃなくて、彼なんだね」
「あの力は彼のものだから」
「ふうん」
一度足を止めていたカナデは、勝手に歩き始めたので私はそれを追いながら、話の続きをする。
「彼女の態度を見て、何も思わなかったの?」
「思ったよ。本気な気持ちも」
「ならどうして」
「そんなの怖いからに決まっているでしょ。本当にこれから私達が必要とされなくなったら、この先どうなるの分からないじゃない」
「私はそんな事を考えたことは」
「あなたは預言を終えたからそんな事を言えるの。まだこれから先も、必要とされない未来を生きる事がどれだけ怖いものか分かる?」
「それは……む
「もし世界の未来に光があっても、私達は闇に取り残されるの。そんな未来誰が好んで協力すると思っているの」
私は何も反論ができなかった。彼女が言っている事は正しい。私もその不安がなかったといえば嘘になる。最近になって預言者の役目を終えたその時までは。
けど役目を終えた事で、次の可能性を私は見つけた。けど、カナデ三冊目はその可能性はないに等しい。
「だから私は彼女がどんな可能性を示しても否定する。私は先の見えない未来を進むのなんて、絶対に嫌だから」




