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幼女転生から始める異世界解読術  作者: りょう
第7章 一冊目の少女は預言を終える
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第61話 天使と姉に想いを馳せて

 ユウの姉のティナとの再会、そしてクスハとの対決。

 そして最後に、会うはずもなかった場所で出会ってしまった人物。

 サラスティアに戻ってきたから、俺は不幸な事ばかりだった。でもアーニスさんとユウニをあの場から逃すことはできた。だから……。


(この身はどうなってもいいと思った。だけど)


 どうやらそういう訳にもいかなかったらしい。


「あの、あなたは?」


「王女様と一緒に囚われてたの。でもあなたが騒ぎを起こしてくれたおかげで、自由の身になれたよ」


 俺は意識を取り戻すと、何故か布団の上で寝かされていた。槍で貫かれた腹の部分には包帯が巻かれており、少し遠くで銀髪のボブヘアーの女性が何か忙しそうにしている。


「いや、だからまずあなたの名前を」


「あ、傷口が広がっちゃうから動かないでね。急ぎたい気持ちも分かるけど、体の方が大事だから」


 俺の質問には一切答えない女性。ただ分かることは、彼女が俺の事を助けてくれたという事実。一体どうやってあの場所から俺を抱えて脱出したのか気になるが、もう一つ気になるのはアーニスさん達の事だ。


(無事に脱出出来てればいいけど……)


 俺は自分の身よりもアーニスさん達の方が心配になってきた。


「無事目を覚ました事だし、はい、これ食べて」


 そんな事を考えていると、俺の目の前に食事が運ばれてくる。ただ、その料理はどう見てもゲテモノ。これを食べろと言われて食べる人は多分いない。


「み、見た目はアレだけど味には自信があるから」


「あの、私一応怪我人なんだけど」


「良薬は口に苦しと言うし、ほら食べて!」


「いや、薬って言っている時点で」


 アウトだろと言う前に、無理やりゲテモノを口に運ばれる。俺はそれが口に入ったと認識した瞬間、意識が吹き飛んだ。


「ちょ、何で気絶してるの? お、おーい、冗談だよね? ねえ冗談だよね?」


 全くもって冗談じゃありません。


 ■□■□■□

「わたしはイルナ。この国で医者をやっていたんだけど、王国騎士団長の裏切りによって地下牢に王女様と一緒に閉じ込められていたの」


 日本の食べ物で言うインスタント麺みたいな何かを料理をしながら、イルナと名乗った女性はそう説明した。


「王国騎士団長って、あのクスハって人?」


「そう。誰もが認める騎士団長だったんだけど、どうしてこんな事になっちゃったんだろうね」


 王国騎士団の存在すら知らなかった俺にとっては、その事情について詳しくは分からないが、俺はその中に一人顔見知りがいた事が気になった。


(あの声は間違いなくリルだった。何で彼女が俺を……)


 天使である彼女なら、本来王女を守る側に付くはずなのに、反乱側にいた事がどうしても分からない。おまけに彼女は俺にこうして大きな傷まで負わせた。

 それについて謝っていた気もするけど、だったらどうしてかと思ってしまう。


「それにしても騎士団長の横にいた子、あの子確か天使族の子だったよね」


「私は姿を見てないので、何とも言えないけど私を刺したのはやっぱり」


「うん、間違いなくその子だった。でもどうして今になって、天使族の子があんな場所にいたのかしら」


「それは……どういう意味?」


「あれ、知らないの? 今天界は預言書を巡った争いを止めるために、動き出しているのを」


「それは初耳かも」


 この世界の仕組みをイマイチ理解できていない俺には、まず天界の存在すら認識していなかった。天使がいるならあってもおかしくはない話だけど、問題はそこじゃない。

 天界がもう存在するはずがないのだ。


「あれ、でも天使族って確か絶滅種族のはずじゃ」


「確かに今はそうなっているわね。でも居たでしょ?」


「そうだけど」


「あなたは本を読むのが好きらしいけど、それが全部ってわけじゃないの。預言書の預言が全てじゃないように、この世界にはまだ隠されている事が沢山ある」


「隠されている事……」


 俺は仰向けになり、天井を見ながら無言で考える。確かにユウニも言っていたように、この世界は少しずつ預言書から外れ始めている。

 俺は今まで生きてきた中で、本から得られる情報が全てだと思っていた。でも預言書やその他の本にも沢山触れて、それらと現実を重ねるとピッタリと合うわけではない。


(事実は小説よりも奇なり、とはこの事か)


 それなら俺はどうして、この解読する力を得て転生したのだろうか。読み解けば読み解くほどに、俺は疑心暗鬼になっていく。


「あ、そういえばあなたが寝ている間に、あなたの姉を名乗る人物が訪ねてきたよ」


「え? お姉ちゃんが?」


「あなたの事をすごく心配してた。だけど、五分くらいあなたを見た後に、どこかへ行ったわ」


「どこかに行くとか言ってた?」


「そんな事は何にも。あくまで私とその人は他人だし、伝えても意味がないでしょ」


 正論だった。けど、同時に俺は少しだけ残念な気持ちになった。あれから色々あって、改めてティナとは話をしたかったのだけど、それは今回はお預けという事らしい。


(リルの事も含めて聞きたい事はあるけど、またどこかで会えるよな)


 俺はどこかへ行ってしまったティナに対して少しだけ想いを馳せるのであった。

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