【08】 丹沢独特の予想理論
丹沢「だって、今、曇りだから」
丹沢が空を差しながら平然と言った。
由利「丹沢さん本当に初めてなんだな。なんにも知らないんだ?」
丹沢「そうだよ、さっきも言ったじゃん」
由利「 じゃぁ『1―3』の『3』も、もしかして天気記号の『快晴』ってこと?」
丹沢「当たり!」
由利に向かって指さして言った。
由利「ガクッ!!」
丹沢「今日の天気予報は『曇りのち快晴』だろ」
由利「丹沢さんの予想は、天気予報の予想と一致させる訳だ」
丹沢「そうだよ。しかし由利さんは良く天気記号を覚えているね」
由利「こんなことで褒めてもらえるとは思ってもいなかった。できれば他のことで褒めてもらいたかったな」
丹沢「ははははは」
由利「良かった、良かった。丹沢さんの笑い声が聞けて。退職願を出した男とは思えないな」
丹沢「退職願を出したくらいどうってことないさ、命まで取られる訳じゃないし。ははははは」
由利「そうだよね。市役所を辞めたら舟券師になればいいんだから」
丹沢「舟券師かぁ。それはともかく、気分転換の意味で誘ってもらってよかったよ、感謝してるよ」
由利「私もボートレースを見ると気分がスカッとして、脳からドーパミンがでるんだ」
丹沢「どんな感じで出るんだ?」
由利「ドーパーっと」
丹沢「ははははは」
二人が何度もやってるギャグだった。
由利と丹沢は舟券を買うと、
第1ターンマークに近い所で見ることにした。
由利が丹沢にターンの迫力を
見てもらおうとの計らいであった。
丹沢「さぁ、『1―3』でゴールしろよ。だが待てよ?」
由利「どうかした? 」
丹沢「どこがゴールなんだ?」
由利「ゴール?」
丹沢「そうだよゴールだよ、ゴールラインがどこにもないじゃないか」
由利「ははははは。そうだよな。初めてボートレース場に来た人の多くが『ゴールはどこか?』って聞くね」
丹沢「そうだろう」
由利「あそこに大きな時計みたいな物があるだろう?」
丹沢「ああ」
由利「あの時計の横がゴールラインだ」
丹沢「そうか。でもゴールのテープが無いからわかりにくいなぁ」
由利「まぁ仕方ないんじゃないか? 水面だから」




