【03】『ボートレース戸田』へ
丹沢「でも、仲間たちが、私のために速水爽香の部屋を見張っているというのに、私だけボートレース場に居たら、仲間の信頼を裏切ることになる」
由利「そのことなら大丈夫。私が嫌がる丹沢さんを無理矢理誘った、と伝えるから」
丹沢「でもなぁ~」
由利「もう、退職届を出したんだろう?」
丹沢「うん」
由利「役所勤めの最後ぐらい、私とデートしてもいいだろう?」
丹沢「なんで男とデートしなきゃいけないんだ?」
丹沢がぶっきらぼうに言った。
由利「まぁ、そう怒らずに。丹沢さんが市役所を辞めたら、二度と丹沢さんと会えなくなるかもしれないし。私の最後の頼みだ」
由利が両手を合わせて、
土下座をして頼み込んだ。
丹沢「わかった、わかった! そこまでされちゃ、仕方ないな。でも、ちょっとだけだよ」
由利「もちろん、ちょっとだけさ。よし決まった! これからボートレース場に行くぞ!」
丹沢「ところで、いろんなレジャー施設があるのに、なんでボートレース場なんだ?」
由利「そんなことは簡単さ。単に私が、ボートレースが大好きだからさ」
丹沢「なるほど、それは分かりやすい理由だな」
由利「こんな面白い遊びは、他に無いぞ。一度見たら病みつきになるって」
丹沢「ほんとかなぁ?」
由利「まあいいから、行くぞ!」
◇
埼玉県『ボートレース戸田』。
日曜日ということもあって場内は賑わっていた。
丹沢と由利は入場料百円を払って中に入った。
由利「いまどき百円で一日中ボートレースを見て楽しむことができんだから安いものだ」
丹沢「それは安いな。今、どこのレジャー施設に行っても千円以上かかるぞ」
由利「うん、まったく」
丹沢「ボートレースって両手でオールを漕いで競うのかい?」
由利「ははははは、そんな訳ないだろ!」
丹沢「じゃぁあ、ペダルを漕いで競うんだ?」
由利「スワンボートじゃないって!」
丹沢は無理におどけて見せた。
由利もそれにのった。




