【02】 由利の誘いと謎多き女性
由利「そうか、転出証明書を持ってなかったのか。世の中、転出証明書が必要書類だと知らない人は多いんじゃないかなぁ」
丹沢「なるほど。一般人からすると、常識には入らない訳か」
由利「決して常識とは言えないだろ」
丹沢「私が毎日、転出証明書を見ていたから、常識だと錯覚していたんだな」
由利「その女性が役所に来たのは、二度とも曜日は水曜日だったんだ?」
丹沢「それが何か?」
由利「いや、確認しただけだ。そして『仕事は水に関係あり』って言ってたんだな」
丹沢「ああ」
由利「それともうひとつ。その女性はテニスボールを持ってたって?」
丹沢「うん、なんのおまじないなんだろうな?」
由利「変わっているな」
丹沢「うん」
由利「金曜日は、その女性の自宅に行っても会えなかったんだ?」
丹沢「あぁ、そうだ」
由利「それだけで住民課長は虚偽の届け出だと決めつけたのか?」
丹沢「いや、それだけではないな。その部屋の水道使用量が、一ヶ月で風呂2、3回分だったらしく『そんな量で人が住んでいる訳がない』と」
由利「あの課長、そこまで調べたんだ」
丹沢「うん」
由利「相手もなかなかやるもんだな」
丹沢「相手を褒めてどうするんだ」
由利「相手を知ることも必要だろう」
丹沢「いつもながら冷静だな」
由利「ところで、どうだ、ボートレースにでも行ってみないか?」
丹沢「また急にどうしたんだ?」
由利「丹沢さんは、ボートレースを見たことがないよな?」
丹沢「うん。ない」
由利「こんな近くにあるのに?」
丹沢「あまり興味がなくて」
由利「退職するのなら一度ぐらい見ておいた方がいいんじゃないか? 次の就職活動に入ったら忙しくなるから」
丹沢「次の就職ねぇ?」
由利「私は、ちょっとボートレースが見たいな」
丹沢「こっちは、そんな気分じゃないんだ」
由利「そんな、ふさいでいてもしょうがないだろう?」




