【13】 出走表に載った『速水爽香』
丹沢「ボーレースのことは良く知らないけれど、誰だって好きで転覆している訳じゃないんだろ」
由利「うん、その通り!」
丹沢「3番のレーサーは転覆したけれど、すごいと思うよ」
由利「えっ! どうして?」
丹沢「舟券を買ってくれた人のために、その内の百円は私だけれど。勝利にこだわり、危険を冒しても、ターンマークへ突っ込んでいったからさ」
由利「だからボートレースは『水上の格闘技』と言われているんだ」
丹沢「なかなか良いキャッチフレーズだね」
由利「うん、私も気に入っている」
丹沢「ボートレーサーは、自分の舟券を買った人のために一生懸命仕事しているんだよ」
由利「自分のためにじゃなくて、ひとのためにか」
丹沢「自分のためだけなら、そんな転覆や大ケガ、更には命の危険まであるのに突っ込んでいかないだろう」
由利「ある意味、市役所職員である消防職員が火の中を助けに行くのや、丹沢さんが市民のために全力で窓口業務を遂行しているのと同じってことだな」
丹沢「世の中みんな一生懸命働いているんだよ。ははははは。それはそうと、さて次は当てるぞ!」
由利「そうだよ、次こそ当てよう!」
丹沢「さて、ボートレース専門紙の予想はどうなっている?」
由利「どれどれ、」
トイレでポロシャツを乾かしているうちに
第2レースは終わっていた。
由利「第2レースは終わっちゃったね」
丹沢「じゃぁ、次は3レースだな」
由利「うん」
丹沢「なになに?」
丹沢が専門紙を折り返して、
3レースの出走表に目をやった。
由利も同じように専門紙を折り返して、
3レースの出走表を見始めた。
丹沢「なんだ、これは!!!」
そう言うと丹沢が思わず専門紙に顔を近づけた。
由利が隣でニヤニヤしながら丹沢の顔を見つめていた。
丹沢の顔が専門紙で隠れた。
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『ボートレース戸田』 4日目 3レース 予選 男女混合一般戦
1号艇 寺島 翔 34歳 A1級 勝率7.17 成績215112 ◎
2号艇 上條 進一 55歳 B1級 勝率3.84 成績6 2246 ―
3号艇 眞野 英三 36歳 A2級 勝率6.09 成績13 324 ○
4号艇 三善 秋幸 26歳 B1級 勝率4.52 成績426 53 △
5号艇 徳山 秀紀 38歳 A1級 勝率7.01 成績122122 ×
6号艇 速水 爽香 20歳 B2級 勝率0.00 成績6 6666 ―
※成績の後の印はモーターの良し悪し
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丹沢はボートレース専門紙を顔から少し離すと、
6号艇を指さし、
丹沢「なんだ、これは!!! まさかあいつか?」
丹沢は、眉毛を上げて叫んだ。
そこには『速水爽香』と印刷されていた。
由利「ついに見つけたね!」
由利が声高らかに言った。




