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一人じゃ無能、ふたりで万能 〜双子姉妹の現代魔法ビジネス〜  作者: ゆらゆら
第一章

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第11話:半導体危機と、台湾の極秘サプライチェーン

ドバイから帰国し、私たちが次に向かったのは高級タワーマンション——ではなく、東京都内の隠れ家的なプライベートオフィスだった。


「お姉ちゃん、ドバイで11億稼いで資産も20億超えたのに、まだオフィスを秘密基地みたいにしてるの?」


「当たり前でしょ。クオリア・ロジスティクスの存在は、今や世界の裏社会や各国の情報機関から『謎の超高速物流組織』としてマークされ始めてるのよ。目立たないのが一番の防衛策よ」


私はセキュアなノートパソコンの画面を指で叩いた。


「それより容子、今回の依頼オファーは今までとはワケが違うわ。金額のけたも、影響力も国家レベルよ」


画面に表示されたのは、日本の大手半導体メーカーの役員から届いた、極秘のダイレクトメッセージだった。


「半導体……? ニュースでよくやってる、車とかスマホに入ってる精密部品?」


「そう。今、世界中で次世代AI用超高性能半導体の奪い合いが起きているのは知ってるでしょ? でもね、その製造に不可欠な『超高純度なフォトレジスト(感光材)の特殊添加剤』が、台湾の製造プラントのトラブルと海上物流の停滞で、日本への供給が完全にストップしてるの」


「え……それってどうなるの?」


「日本の主要工場が数日以内にストップして、数千億円規模の経済損失が出るわ。しかも、その添加剤は常温だと数時間で変質する超繊細な化学物質。通常の航空便でも輸送成功率が極めて低い『配送不可能物資』なのよ」


「……あ。時間停止と即時転移の出番……!」


「その通り」


私は不敵に笑った。


「クライアントからの提示報酬は、わずか数十キロの添加剤の即時輸送で——30億円よ」


「台湾・新竹シンチューサイエンスパーク……! 大学の卒業旅行で台北に行ったついでに、電車で近くまで行ったことある!」


フッ


容子の【転移】により、私たちは一瞬にして台湾のハイテク産業の中心地・新竹の裏路地へと舞い降ろした。

南国の生ぬるい風と、ほのかに漂う小籠包と排気ガスの匂い。


「容子、ナイス! 事前に連絡を取っておいた、プラントの極秘技術者と合流するわよ!」


厳重なセキュリティをかいくぐり、工場の裏口で待っていた研究員から、特殊なチタン製保冷容器に入った液体(超高純度添加剤)を受け取る。


琴陵ことおかさん……! この薬品は衝撃や温度変化に極めて弱い! 1時間以内に日本の工場へ届けなければ全滅だ! 本当に運べるのか!?」


「ご安心ください。私たちの『クオリア・ロジスティクス』の保管環境は、絶対ゼロ度よりも静寂ですから」


私はチタン容器に手を触れた。


(格納——!)


シュン!


一瞬で脳内の『漆黒の無限空間』へと収められる超極密化学物質。

時間停止機能により、化学反応も温度変化も完全に「ゼロ」で固定される。


「よし、買い付け……じゃなくて輸送品受領完了! 容子、日本の熊本の半導体巨大工場へ飛ぶわよ!」


「熊本!? 行ったことある! 去年の社員旅行で阿蘇と工場地帯の近く観光した!」


「手を繋いで! 空間跳躍テレポート!!」


フッ


同日、午後三時。


熊本県にある最新鋭の半導体巨大工場の極秘受入室。


青ざめた顔で時計を見つめていたメーカーの専務取締役・アサクラの目の前に、私たちは突如として姿を現した。


「な……!? どこから入ってきた!? 警備員はどうした!?」


「お約束の物資をお持ちしましたわ、アサクラ専務」


私はアタッシュケースから、先ほど台湾で預かったばかりのチタン容器を取り出し、テーブルの上に置いた。


「ば、バカな……! 台湾のプラントを出発したという連絡から、まだ10分しか経っていないぞ……!? 航空機を使ったとしても不可能な速度だ!」


「品質をご確認ください。劣化は『ゼロ』です」


専務が震える手で検査機器を接続し、数値を測定する。


次の瞬間、検査室のモニターに『品質維持率:100.0%(完全状態)』の文字が躍った。


「か……完全状態……! あり得ない……! これでラインを止めずに済む! 日本の半導体産業が救われた……!!」


アサクラ専務は涙を流し、その場に膝をついて私たちに感謝した。


「約束の報酬30億円は、今すぐ指定の法人口座へ送金手配させる! 琴陵社長……君たちは一体何者なんだ……!?」


「ただの、フットワークの軽い『個人貿易商社』ですよ」


私はウィンクしてみせた。


その日の夜、東京へ戻った私たちは、高級ホテルのラウンジでシャンパンを傾けていた。


法人口座に着金した30億円。

そして、この国家レベルの大仕事の緊張感により、私の心臓は終始バクバクと高鳴り続けていた。


「ねえお姉ちゃん……アプリの残高見て……」


容子が震える手でスマホを見せてくる。


『クオリア・ロジスティクス法人口座:5,240,000,000円』

『個人口座(心拍数ボーナス累計):1,080,000,000円』


「……合計で、60億円オーバー……」


「ついに10億台どころか、50億の壁も突破しちゃったわね」


私はグラスを揺らし、夜景に映る自分の顔を見つめた。


手取り20万円の社畜OLだった私と、低賃金に喘いでいたパタンナーの妹。

一人では使い道のないポンコツスキルだった【アイテムボックス】と【転移魔法】。


だが、ふたりが手をつなぎ、現代社会の歪みと需要を見抜いた瞬間——世界は彼女たちの掌の上で転がり始めた。


「ねえ、お姉ちゃん。次はどこへ行くの? アフリカのレアメタル? それとも宇宙ステーション?」


容子が楽しそうに目を輝かせて尋ねてくる。


私は妹に向かって、最高に不敵で魅力的な笑みを向けた。


「どこへでも行けるわ、容子。私たちの行く手に、物理的な限界(壁)なんて存在しないんだから!」


双子姉妹のハッピーで破天荒な現代魔法ビジネスは、これからも世界を驚かせながら、どこまでも加速し続けていく。

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