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05. 任務説明、行動開始

「埼玉支部には補助隊が四部隊いる。私達第三補助隊はその一つだ。補助隊は土日が活動の中心。平日は週一回かニ回の任務日あるよ。その日は学校は公欠扱いだね」


 土曜日になって私達は、職員さん運転の車で北へ向かっている。昔、群馬って呼ばれてた場所だ。

 すでに皆変身状態で、大きな車だけど雫先輩の槍が三列シートの中央を前から後ろまで陣取ってたり、よく分からない機材が乗せられてたりで、ちょっと狭苦しい。


「関東方面隊の各支部はそれぞれちょっとした特徴があるんだ。茨城や千葉は魔素発電所の防衛とかね。で、私達埼玉支部は利根川水系の防衛が重要任務ってワケ」


「ホント重要なんだよ~。そこが汚染されたら関東は広い範囲で水道水使えなくなんだからさ~」


「なるほど」


 焔(ほむら)隊長の説明を風香先輩が補足してくれる。

 たしかに水が使えなくなったら大変だ。マギ隊は魔生体から直接人を守るだけじゃなくて、水道水とかそういうのも守ってるのか。


 雫(しずく)先輩は、そ~よね~とか言いつつ槍を手で押さえている。道の舗装がボコボコで置いてるだけじゃ槍があちこち当たっちゃうのだ。

 北に行けば行くほど人工物がボロボロになっていくのが分かるね。


「ん、でも完璧じゃなくても良いんだ。利根川水系は広いからね。その全てを魔素汚染から守るなんて不可能だ。心配しなくてもある程度は浄水処理場で魔素が取り除かれる」


 知らないことだらけだ。浄水処理場の話は確か四年生のときに習ったと思うけど、あんまり覚えてないな。

 まさかマギ隊の活動に浄水処理場とかの話が出てくるとは思ってなかったよ。


 それにしても、真っ先に会話に混じってきそうなキワコ先輩が静かだ。機嫌が悪いのかブスッとして窓の外を見てる。

 なんかこの前と衣装の印象が違うな。ああ、後付けでポシェットを付けてるのか。ゴツいポシェットだからフリフリ衣装に全然あってないよ。

 でも実用性重視って感じがして好感が持てるね。


「普段、私達補助隊は埼玉支部管轄範囲の魔素濃度危険区域(レッドエリア)の巡回が主な任務でね、そこで魔生体化しそうな動植物がいないか確認して回ってるのさ」


「そーそー、魔生体って突然なるんじゃないんだ。普通の野生動物とかがちょっとずつ魔生体化してくんだよ」


「はい」


 その話はなんとなく知ってる。ペットも一年に一回、魔生体化してないか検査する必要があるって友達が言ってた。


「だけど今日は、発見済み魔生体の駆除だよ」

「はい」


「アンタ、絶対私達の言う事をききなさいよ。勝手に活躍してやるなんて思わないことね」


 ブスッとした顔のままキワコ先輩がそう言って睨んでくる。

 言われなくても出しゃばるつもりなんてない。任務が達成できれば誰が活躍したって同じだ。

 私は犬死したり足を引っ張りたくないだけなんだって。


「そろそろ魔素濃度危険区域(レッドエリア)だ。車はここまで。降りるよ」


 魔素濃度警告区域(イエローエリア)の端の川沿いに止まった車から皆が降りた。

 焔隊長が運転手さんにお礼を言ってる間に皆それぞれ動き出した。雫先輩はバックドアから槍をそうっと取り出してる。

 風香先輩とキワコ先輩はドローンの起動を確かめてる。新人研修の実地訓練のときに飛んでたヤツと同じヤツだ。


「これで活動を動画記録するのよ。見栄えが良い動画が撮れれば広報から一般公開されるわ!」


 キワコ先輩が少し嬉しそうにそう言う。

 でも顔が引きつってるようにも見えて、なんだかよく分からない表情だ。


「唯ちゃんは広報とかあんま気にしないで良いよ~。要は報告に使える動画が撮れりゃ良いんだからさ」


「はい」


「撮った動画はAI解析とかするらしいよ。知ってる? 衰退期前の時代だと何でもかんでもAIにやらせてたんだって。今は電力不足とかで使用規制かかってんだけどね。私もその時代に生まれたかったな~。だって働かなくても代わりに働いてくれてたんでしょ~」


「はぁ」


 AIとか言われても使ったことないからよく分からない。

 長くマギ隊を続けてけば使う機会もあるのかな。実力トップ層は支給される機材がまるで違うって話だし。


「風香、お喋りは終わりだ。インカムの確認をするよ。聞こえるか?」


「はい!」

「は~い」

「はい」

「聞こえます」


 インカムが聞こえることを確認する向こうで、私達が乗ってきた車が帰っていく。ここで待っててくれるワケじゃないんだ。

 まぁ、それはそうか。こんな魔素濃度危険区域(レッドエリア)ギリギリにマギ隊じゃない人がいたら危ないもんね。


「よし。今回は魔素濃度危険区域(レッドエリア)だから通信は使える筈だ。だけどキワが能力を使うと通信にノイズが入る。そうなっても動揺しないように」


 焔隊長が私を見てくる。

 私が初めてだから普段しない説明もしてくれてるんだ。


「分かりました」


 魔素濃度危険二種区域(パープルエリア)以上は通信が使えないけど魔素濃度危険区域(レッドエリア)は通信できるって新人研修で習った。

 だけど味方の能力で通信できなくなったりするのか。なかなかやっかいだね。っていうか磁力って通信に影響するんだ。


「ふん、私の磁力(能力)は派手だからね。使ったら分かるわよ。ピカーって」


 磁力って派手なの?


「魔法は魔素を使用して使う。魔法を使うと魔素は崩壊するんだ。そのときに光が出る。だから魔法を使うと光るんだね。で、キワの魔法は大量に魔素を消費するんだ。だから派手に光る」


「そうなんですね」


「そのときインカムからジーとかザザーって音で話し声が遮られるんだ」


「はい、分かりました」


「じゃぁ移動するよ!」


 そういって皆走り出した。ここから何キロも走るらしいけど、マギ隊の身体能力なら走れないことはない。

 後ろからさっき風香先輩が起動したドローンが追いかけてくる。


 いよいよ初任務だ。

 まぁ、皆の能力を見せてもらうだけだけどね。



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