04. 能力確認、マグネティカ!
「とりあえず能力の把握からね」
施設内の設備説明とかルールとかを教えてもらった後、横にある訓練場へ移動した。訓練場って言っても学校の運動場みたいで何もない。
「埼玉支部は魔素濃度警告区域に建ってるんだ。だからそこそこ魔法が使える。まずは変身して」
「はい、分かりました。……変身!」
焔隊長の指示で私の変身の掛け声はシンプルだ。
陽子はメイクアップなんちゃらかんちゃらってすごく長い呪文みたいなのを言ってたけど、私的には短ければ短い方が早く変身できて良いと思ってる。エフェクトも一瞬体が光ってそれで終わり。
地面に右手用の長手袋がパサッと落ちた。右手ないからね。
雫先輩が少し悲しそうな顔をしてる。見た目が清楚な文学少女だからか、少し表情を歪めるだけですごく悲壮感出るなぁ。
「ん、資料通り形は標準型、色はちょっと珍しいけど」
変身するとだいたい皆ミニスカフリフリ衣装になる。それが標準型だ。量産型って呼ぶ人も多いけどね。
強い魔法を使う人ほど衣装が標準型から離れて個性的になってくらしい。ホワイトシューターみたいな背中の大きな羽とかが良い例だね。
色はだいたい能力を表してる。火魔法を使える人は赤い衣装だし、水魔法を使える人は青とか水色だったり、そんな感じ。
「標準型だからって悲観することはないよ。能力が標準的なことが多いから部隊で運用しやすいし、教育マニュアルだって整ってるんだから」
雫先輩がそう言って笑いかけてくれる。
なるほど、量産型には量産型の良いところがあるんだね。
「ん、次は魔法だ。剣を出すんだって? 出してみてくれ」
言われて私は剣を出した。前は右手の近くに出してそれをすぐ掴んでたんだけど、左手だとちょっと慣れないな。剣を出してから構えるまで少し手間取ってしまった。
それを見てキワコ先輩が声を荒げた。
「アンタ、利き手がないのにどう戦うつもり? 戦う気があるのは素晴らしいと思うわ。でもこっちも命がかかってんのよ」
「おい、キワ」
焔隊長はキワコ先輩を睨む。
でも、キワコ先輩が言うことももっともだ。戦えないなら迷惑、そりゃそうだろう。足は引っ張りたくない。
左手で戦う。
持って振ってもヘロヘロだし、投げて突き刺そうにも思った方向に投げられない。
新人研修中になんとかするつもりだった。まさかこんなにすぐに正式配属されるとは思ってなかったからね。
でも、いくつか戦い方は考えてるんだ。
「唯、気に悩む必要はない。正直、魔素濃度危険区域や魔素濃度危険二種区域に入れるだけで有難いんだ。一般人は防護服がないと入れないし、マギ隊は常に人不足だからね」
魔素濃度危険区域は魔素濃度警告区域よりも魔素濃度が高い。一般人が普通に入れるのは魔素濃度警告区域までだ。
魔素濃度危険二種区域はその魔素濃度危険区域よりも魔素濃度が高くて、強い魔生体も結構出るらしい。
「そーそー、どうせ私ら学生部隊はそんな危ない任務回ってこないしね!」
風香先輩が焔隊長の言葉に続いてそう言って笑った。
変身前なのに茶髪でちょっとチャラそうだと思ってたけど、言葉もだいぶチャラそう。
「う、わ、悪かったわよ。でもさ、ほら。体の欠損とかも直せる凄腕治癒魔法使いの人がいるって聞くし、活躍してけば治してもらえるかもよ!」
「えーと……」
そんな凄い人がわざわざ新人の怪我を治しにきてくれるんだろうか。あまり期待しない方が良いよね。
「んー、ノルデナウだっけ。そう、魔法少女ノルデナウ!」
「あー、はい、そうですね」
ノルデナウ先輩は実地訓練のときに死んだ。まだここまで情報が回ってきてないんだ。
それともワザと隠してるんだろうか。怪我しても治らないって知られたら現場のマギ隊員は怖がっちゃうかもしれないし、そんなもんか。
「ん。それで、その剣は遠隔操作できたりするか?」
「いえ、できません」
この剣は魔法で出してるけど、本当にただの剣なのだ。特殊な効果なんて一切ない。
「自分の意思で消せる?」
「消せません」
「じゃぁ、変身解除で消えるとか?」
「いえ、変身解除しても消えません。ただ、変身中でも私が手放してからだいたい三十分くらいで消えます」
「ふむ。他には?」
「えーと、魔素があれば何本でも出せます」
「ほう。普通は変身すれば剣とか杖と言った固有武器やアイテムを一つ持ってるもんだ。けど唯は変身してもそういった物を持ってない。それで後から複数の剣を出せると」
「はい」
「なかなか変わってるね。それだけ聞くとあまり標準型っぽくない。柄が長い両刃の両手剣って感じだけど、他の剣も出せるの?」
「他の剣?」
腕組みした焔隊長がそう訊いてくる。
そう言えば、剣の形を変えようと思ったことなんてなかった。他の形の剣って出せるのかな。と言うか、他の形の剣ってどんなのがあるんだろう。
「ほら、あんじゃない。でっかい剣とか小っさい短剣とか、日本刀とか色々さ」
「なるほど」
その後キワコ先輩のアドバイスで色々試してみたところ、私の剣の形はかなり自由がきくことが分かった。
◆
「さて、今度は私達の能力を知ってもらおうと思う」
「はい」
「それには実際の戦闘を見てもらった方が早い。だけど今日はもう遅いからね、次の土曜に魔生体駆除へ行くよ」
焔隊長達は高校生、キワコ先輩は中学生だ。私はマギ隊新人研修ってことで学校は公欠扱いだけど、皆は学校がある。
だから遠出は学校がない土曜日なんだろう。
でも、魔生体駆除の見学。どうしても先日の実地訓練の大被害を思い出しちゃうな。大丈夫なんだろうか。
「焔先輩! まだ時間あるし私達の変身だけでも見てもらったらどうですか!?」
「ん、そうだねキワ。じゃぁ変身だけ見てもらおうか。それだけでも分かることは多いだろう」
そう言って焔隊長、雫先輩、風香先輩の3人が変身した。
雫先輩は薄い青色、風香先輩は青っぽい緑の標準型衣装だった。
雫先輩は先端が三股に分かれてる槍を持ってて、風香先輩はザ・魔法使いみたいなとんがり帽子と短めの杖。
雫先輩が前衛で風香先輩が後衛なんだ。正直逆だと思ってた。
だって、変身前の雫先輩はいかにも文学少女って感じだったし、風香先輩は少しチャラい運動部って感じだったんだから。
それから焔隊長だ。
赤い獣みたいな衣装。フリルも付いてるけどフリフリって言うよりはモフモフって感じ。右手には赤い大きな鉤爪が付いてて、一目見ただけで標準型じゃないのが分かる。
さすがフレイムファーリーって魔法少女名付きなだけある。聞けばランカー魔法少女だって言うし、伊達に部隊長って訳じゃないらしい。
ふとキワコ先輩を見る。どうして一人だけ変身しないんだろう?
するとキワコ先輩はニヤリと笑って……。
「マグネティック・パワー……」
大袈裟な動作でポーズを色々とって……。
「エキスパンド!」
変な掛け声をあげながら必要以上に光って変身した。
「キワコ先輩……」
「フッ、この姿の私は極子じゃないわ!」
「は?」
「マグネティカ! 魔法少女マグネティカよ!」
おっと。思わず先輩に「は?」なんて言ってしまった。
でも、魔法少女マグネティカ。キワコ先輩も魔法少女名付きだったのか。
衣装も赤と青のツートンカラーで髪が磁石のような重い黒色。普通の標準型は白ベースに能力を表した色が一色、髪色もその色で統一が普通だ。スカートも若干長い気がする。
標準型じゃないのかもしれない。
「あーはー。唯ちゃん、気にすることないよ。キワの魔法少女名は自分で勝手に名乗ってるだけだからー」
「は?」
おっと。思わず先輩に「は?」なんて言ってしまった。
風香先輩がケラケラと楽しそうにキワコ先輩の魔法少女名について教えてくれる。
ランカーに憧れて自分で勝手に魔法少女名を付ける人がいるって知識はあったけど、まさか自分の配属先にいるなんて。陽子でも魔法少女名自称までは行ってなかったのに。
「だいたいエキスパンドって、何?」
「よくぞ訊いたわね! 展開って意味があるのよ! 磁力のパワーを展開、それに合わせて私の衣装がバサッと広がる! めっちゃくちゃ良くない!?」
「はぁ……」
まぁ、別に名前を自称してようがしていまいが任務には関係ないか。
気にしないでおこう。
「最初に言ったけどもう一度。私が火で、雫が水、風香が風。それからキワが磁力ね」
「はい」
名前で得られる能力が左右されるのは正直良かったと思う。
今後もいろんなマギ隊員と会うだろうけど、名前と能力が連想できるなら覚えるのが楽だもんね。
「キワの能力がちょっと特殊だから、自然と私達の連携も少し特殊になってる。その辺りを土曜に見てもらうから」
「分かりました」
さて、次の土曜までに自分も戦えるようになっとかないとね。




