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11. 初参戦と、横取りと

「しっ! 全員止まれ。警戒態勢」


 焔(ほむら)隊長が立ち止まって空を見上げている。

 キワコが顔をこわばらせてバインダーをリュックにしまい、雫(しずく)先輩が測定器を専用のホルダーにしまった。いつも軽い感じの風香先輩の表情も鋭くなっている。

 そして次の瞬間、何か大きな影が日の光を遮った。


 あれは……、鳥?

 大きい。

 まさか、鳥の魔生体?


 でかい鳥は私達を通り過ぎてそのまま飛び去ろうとしている。

 あの速さだと鳥魔生体(アレ)は人の居るところまで行ってしまうだろう。


「風香! 気付かせろ!」

「撃つよ!」


 傍にいるこっちにまで風を感じるくらいの強い風魔法が飛んでいく。周りの木の葉とかが舞うから、風は見えないけど軌道は分かる。

 外れた。


 だけど魔生体はどうやらこちらに気付いたようだ。

 方向転換してこちらに向かってくる。魔生体は攻撃的、こちらに気付かせるだけで勝手に向かってくるから、逃がさなくてすむんだろう。


「キワ! 頭狙えるか?」

「届きません! それに速過ぎます!」


「ん、チャンスがあったら狙え。私はなんとか攻撃できないか試す。雫と風香は魔法で牽制、唯は悪いが待機だ」


「はい!」


 焔隊長が魔生体に向かってジャンプする。そして爪を振るって炎を出すけど、鳥は方向転換も速い。

 避けられたその動きで、焔隊長を襲おうとする。それを水弾が妨害した。見えなかったけど、たぶん風魔法も飛んでたっぽい。


 それに対して魔生体は、なんと風魔法で応戦してきた!

 魔生体の体が光って風が吹き荒れる。


「魔法型だ! 魔生体化がかなり進行している!」

「こんなの見落とすなんてあり得ないよー! どっかの隊が取り逃したんじゃないのッ!?」


 インカムから焔隊長と風香先輩の声が聞こえる。

 相当焦ってるみたいだ。

 魔生体化が進むと魔生体も魔法が使えるようになるってのは知ってた。学校でも習うし、ネットで再生数が多い人気の魔法少女動画はたいてい魔法型魔生体との派手な戦いだから。


 風香先輩の魔法がほとんど相殺されてる。同じ風でも向こうの方が強いんだ。

 雫先輩の魔法はそもそも威力が足りてない。



「ちょっとアンタ、その剣貸して!」

「ん」


 キワコが私の剣を奪って、突き出した両手の間に剣を浮かせる。レールガンを撃つ気なんだろう。

 でもなかなか撃たない。

 きっと鳥が速すぎて狙いが定まらないんだ。下手に撃てば外すどころか焔隊長達に当たる可能性だってあるし。


「ねぇ、魔法妨害できるって話は? アレの魔法も妨害できるの?」


 魔法は魔素がないと使用できない。

 そしてキワコの魔法は魔素を大量に使うわりに発動がすごく早いらしい。

 だから相手が魔法を使おうとしたとき、周りの魔素を消費しきることで相手の魔法発動を妨害できたりするって、前回任務の後に聞いていた。


「何よ!? ああ、もう。私の魔法は十メートルが限界なの! 届かないわ!」


 そうなのか。

 聞いたときは万能じゃんって思ったけど、あんまり万能ってワケでもないのか。


「じゃぁ、さっき言ってた頭を狙うってどういう意味?」


「私の魔法は磁力よ。鳥って磁力で方角とか把握してるらしいわ。だから鳥型なら頭の近くに強力な磁場を出せばちょっとフラつかせたりできるワケ。だいたいそれで高度を落とせる。けど、それも十メートル内の話よ」


 なるほど。

 なら、あの鳥がキワコに近付いた瞬間、磁場を出せば動きを鈍らせられるのか。


「それってレールガンを用意しながらでも狙えるの?」


「……無理ね」


「だったらレールガンはやめて、磁場ってのを狙った方がいい。相手の動きが鈍ればきっと焔隊長がやってくれる」


 それに、隣でずっとレールガンを構えられてたら私も新しい剣が出せないし。

 たぶんこのまま新しい剣を出したらキワコの両手の間に引き寄せられるハズだ。

 しかもインカムが常にザーザー言ってる。レールガンを構えてるだけで通信できないなんて、連携も怪しくなるじゃん。


「……ふん、分かったわよ」


 キワコと一緒に戦闘を観察する。

 焔隊長は鳥の高さまで届いてるけど、ジャンプしてるだけだからどうしても攻撃が直線的だ。炎もせいぜい三メートルくらいしか伸びないみたい。

 せめて空中で軌道を変えられたら……。

 行けるかもしれない。


「焔隊長、私も出ます」


「……行けるのか? 分かった」


 焔隊長の攻撃が終わったタイミングで、私も鳥に向かってジャンプする。

 鳥に近付いたら大きな剣を出して振り下ろす!


 外れた。

 けど問題ない。

 そのまま大きな剣を手放すことで私の体は若干向きを変えてさらに高くまで上がった。


 やっぱりできた。

 訓練で大きな剣を振ると、遠心力なのか体が飛ばされる感覚があったんだよね。だけど思った通りに動くのは難しいな。


 下を見ると、私の攻撃を避けるために急旋回していた鳥が見える。

 それを確認して私は剣をいっぱい出した。刃を下にして。

 剣が鳥に向かって落ちていく。


 鳥はそれすらも綺麗に避けていくけど、上からの剣の雨を避けるためにだいぶ高度を落としていった。


「キワコ!」

「ちょっとアンタ! 剣ばら撒くならそう言いなさいよ! 危ないでしょ!」


 直後、鳥の進行方向前方に光が何個も発生する。

 きっとアレがキワコの磁場なんだろう。避けられないようにいっぱい出したんだろう。


 動き、鈍った?

 それだけじゃない。どうも魔法も使えないっぽいな。

 キワコの磁場がまわりの魔素を消費しきってるから、魔生体は魔法を発動できないんだ。

 これなら焔隊長が倒してくれるね。


 連続して磁場を作ってるからか、さっきからインカムがザーザー言ってて何も話せない。

 だけど、もう大丈夫だろう。


 ついでだ、これも食らえ。

 私は左手に持ってた剣を投げつけた。

 利き手じゃない手で投げた剣は相変わらずヘロヘロだったけど、キワコの磁場に引き寄せられて途中から加速する。


 キワコの磁場は魔生体の進行方向に新しくドンドンできていって、通り過ぎた磁場は消えていき、それに吸われた剣が魔生体に当たった。

 刺さりはしなかったけど、金属の塊があの速さで当たったらそれなりのダメージになるんじゃないかな。


 それを地面に落ちながら見届けて、なんとか着地したそのとき、強い光で周りが真っ白になる。

 熱風が吹いて……、見上げると太(ぶっと)い光の柱が魔生体を飲み込んでいた。


 ああ、なるほどね。

 ホワイトシューターか。



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