表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
令和最初で最後のスケバン、タイムリープだか憑依だかして昭和の極妻になって全国を制覇する‥‥とかしないとか  作者: 真夜航洋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/11

第8話 戦闘開始


三日後。

兵隊の頭数が揃ったにも関わらず、山内工務店に集まった愚連隊は動揺していた。

リーダーがいまだ行方不明だからだ。

誰かが言う。


「山内はどうやら逃げたらしい。荷物をまとめて列車に乗るのを上野で見かけたやつがいる」

「いや。キムがさし向けたチンピラに拉致されたらしい」

「織田組側に寝返った、って聞いたぞ」


半信半疑。

なぜなら、どれも事実に近い噂だからだ。

集まった烏合の衆の中に、織田組の組員が数人混じって噂を流している。

流言という諜報戦略だ。


誰が連れてきた兵隊なのか誰も把握してはいないから、怪しむ者もいない。

サブ・リーダーの川尻隆は頭を抱えている。


(廻状が来た時、俺もここにいた。あのあと、赤羽の事務所にトラックで突っ込む作戦を山内と立てた)


川尻が兵隊を集め、山内がトラックを用意する手はずだった。

トラックも山内もいない。

どうする?


「おい。頭がいねえからってイモ引く気かよ」


片隅で、ナイフをいじりながら男が言う。

前田利夫だ。


「頭がいてもいなくても、やることは変わんねえだろうが!」


見慣れない男が、烏合の衆を一喝した。


「派手な喧嘩が始まるっつうから来てみたが、まるで通夜じゃねえか。俺は帰るぜ」


前田が立ち上がると、ほかの扇動者たちもそれに倣う。

このままでは追随する者が出てしまう。

マズイ。

川尻が止めようとした時、入口のトタン扉が開いた。


「おう。助太刀に来てやったぜ」


退去しようとした前田たちの前に立ちはだかるように現れたのは、惟任とキムだった。


「なんだ。山内の野郎、ホントに飛びやがったのか。おい、川尻。織田組とかいうボンクラを蹴散らすぞ。てめえが先頭に立て」

「俺らが加勢してやる」

「惟任。キム」


川尻が外に出て見ると、表には数十人の兵隊が乗ったトラックが二台駐まっていた。


「一時休戦だ。ヤクザなんぞにナメられてたまるか」


惟任が野口の肩をポンと叩く。

仲間意識などという綺麗なものではない。

ふたりとも乗り遅れたくないだけだ。


(クソ。全部で二百はいやがる。姐さん。こりゃあヤバいですぜ)

 

前田は唇を噛んだ。




深夜四時。

荒川に沿った夜の堤防道路。

まだ街灯やガードレールは設置されていない。

ヘッドライトを消したトラック二台が徐行する。

官憲に見咎められないようにだ。


手に刀や拳銃を握った50人ほどが、徒歩でトラックを先導する。

荷台に数十人が乗って、そのあとから鉄パイプを持った百人ほどがついてくる。


前田は先頭集団に混じり、ドスを懐にしのばせる惟任と自動拳銃をベルトに差したキムを窺う。


(姐さん。いざとなりゃ、こいつらふたりだけでも俺が殺りますから)


前田のポケットと足首には、ゾーリンゲンのナイフが隠してあった。


「お。見えてきたぞ。ん?何だ、ありゃ」


道路沿いに3メートル高の塀が建っている。

その塀には「織田組事務所」の看板が掛けられ、その脇に垂れ幕。

川尻が垂れ幕の文字を読む。


「‥歓迎‥愚連隊御一行様?ああん!」


俺等はお客様ってことか。

ナメんのも大概にしろ。

いきり立つ。


「おい。車を突っ込ませるぞ。前空けろ」

 

この喧嘩の指揮官の指示に、先頭集団が道を空ける。

荷台に乗っていた兵隊たちも、われ先に降りる。

エンジン音が高鳴り、砂利が飛び散る。


「いいか、てめえら。海道グループの力をどヤクザどもに見せつけてやれ!」

 

おおー、と呼応の歓声。


「おい、川尻。ちょっと落ち着けよ」


惟任は何か、違和感を感じている。


「あん?何か文句あんのか?これは俺の喧嘩だぞ。助っ人は黙ってついて来いや」

 

沸点に達している。


「いや。カチコミかけるのは構わねえが、突っ込ませるのは1台だけにしとけよ」

「あん?」

「大型車両は攻撃だけじゃなく、弾除けの防壁にも使える。念の為、1台はとっておけ」

「弾除け?特攻魂はどこ行ったんだよ、この腰抜けが!」

 

特攻の無意味さを惟任は知っている。

川尻ががなり立てる精神論の無意味さも。


ふたりが言い合ってるうちに、トラックは組事務所めがけて疾走した。

塀の手前で運転手が飛び降りる。

轟音とともに、事務所の正面玄関が弾け飛んだ。

表玄関は全壊した。

だが、トラック自体も完全停止した。


砂煙が収まる。

惟任が覗き込む。


(何だ?この事務所、バラック小屋じゃねえか)

 

違和感の正体。

夜の闇と高い塀で奥行きが見通せなかったが、組事務所と称する建造物はただの掘っ建て小屋だった。


さらに小屋の床下には巨大な落とし穴が掘られており、トラックの運転席と前輪が嵌っている。


(やはり、罠か?)

 



つづく



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ