表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
令和最初で最後のスケバン、タイムリープだか憑依だかして昭和の極妻になって全国を制覇する‥‥とかしないとか  作者: 真夜航洋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/13

第6話 廻状

織田信長の略歴(一部)


1560年 桶狭間の戦い 

     少数軍勢で大大名・今川義元を討ち、  

     全国に名を轟かせる。

1567年 稲葉山城攻略 

     宿敵・斎藤龍興を討ち、天下布武の基

     礎を固める。

1568年 足利義昭を奉じて上洛 

     実質的な天下人となる。

     

     ‥‥‥‥‥‥‥‥



競馬場の外には、怪しげな天幕が林立していた。

予想屋が佐久間に話しかける。


「よう。ダンナ。次のレース、張ってみねえか?三番の馬が中穴で5倍だが、俺はぜってえねえと思う。もし来たらウチは5.5倍払うぜ」


公営の主催者は25%の控除率と必要経費を支払うため、配当金はその分を差し引く。

だがノミ屋はその必要がないため、配当金を割り増しできる。

より儲かる馬券を買いたいと思うのがばくち打ちの性だから、この商売はなくならない。

佐久間が耳打ちする。


(こいつ、海道グループのノミ屋です)


心得た、と頷く。


「悪いな。もうオケラなんだ。だが、旨い話だな。ここでしか買えないのかい?」

「あんた、どこに住んでんだい?」

「赤羽から電車乗り継いで来てんだ。もっと近くで買えりゃあいいんだが」

「赤羽?あんたラッキーだぜ。ほれ」


安っぽい名刺を差し出してきた。


「ウチは王子でサロン構えてる海道倶楽部ってグループなんだ」

「サロン?」

「おっと。おめえさん、田舎の出かい。ハイカラじゃないねえ。競馬やら麻雀やら、みんなでワイワイ楽しくお遊びする場だよ。気軽に覗いてみてくんな」


その男と別れると、ふたりのやりとりを見ていた別の男が寄って来る。


「おい、ダンナ。あんな奴の口車に乗らねえが身のためだぞ。イカサマ博打に引き込まれてケツの毛まで抜かれんぜ。遊びてえんだったら、ほら、北千住まで来いよ」


また、別の安っぽい名刺。こっちは「真正海道会」とある。


「おや。同じ海道グループなんじゃ…」

「け。なわけあるかい。あの連中は、俺らの真似をしてる下衆どもよ」




赤羽の事務所に戻る。

組員を集めてみた。

佐久間を含めても、わずか6人しかいない。


(なるほど。こんなチンケな事務所なわけだ)


帰蝶は、佐久間だけでなく他の組員からも情報を収集した。

もともとが寄せ集めだったため、海道グループは最近三つの派閥に分裂したようだ。

 

①真正海道会 惟任明光これとうあきみつという特攻帰りの男が隊長。アジトは北千住。

②海道倶楽部 惟任の手下だった山内豊という元陸軍整備士が会長。アジトは王子。

③外人グループ 在日外国人の不良をまとめているキム・イスンがリーダー。アジトは町屋。

 

当初三人の幹部は「特攻三兄弟」などとハッタリをかましていたが、どうやら本物は惟任だけのようだ。

若頭の佐久間信男が言う。


「惟任は手強いです。モノホンの特攻帰りですから、肚のすわり具合が違います。それにキムも要注意です。満州や朝鮮の軍属をまとめてますからね」


満州・朝鮮軍属(軍隊の関係者)は、戦時中に日本に連行されて憂き目を見た。

彼らの反骨心は筋金入りだ。


「誰か、この山内ってやつを知ってるやつはいる?」


前田利夫という、体格のいい男が答える。

織田組一の武闘派で、刀やナイフの遣い手だ。


「いやあ、それが。なんでそいつが幹部なんかやれてんのがわかんないんです。なんでも、軍隊じゃ武器の整備係をしてたっつうんですけど。位は曹長で、大した武勇伝もないみたいで」


(もう少し調べてみる必要がありそうだね。いや。それとも、こっちから仕掛けた方が早いか?)


帰蝶が組員達を見回す。

正直この人数では、抗争にもならないだろう。


「ねえ、みんな。組長が今生死をさまよってるのは知ってるね?」


一同は声も出さず頷く。


「あたしは三代目姐として悔しくてね。そりゃそうだ。旦那が撃たれて、組のメンツが潰されたんだ」

「……」

「何が何でも、あたしは仇を討つ!」


心なしか、組員たちの眼が輝いたように見える。


「組長が動けるようになるまで、あたしが指揮を執る。いいね、みんな」

「「「はい!」」」


帰蝶こと上総リタには、リーダーとしての資質と経験が備わっていた。

生まれ変わった織田帰蝶にも、リタのオーラが引き継がれていたのだ。


この日以降暗示にでもかけられたように、組員達は三代目姐の指揮に従うことになる。


「まず、海道グループの連中に果たし状を送りつけるよ」

「果たし状?えっと。廻状のことですかい?」

「名前は何でもいい。あたしが内容を言うから、この‥今の時代に合う文面に書き直しておくれ」



 

【関係各位】


小生・織田帰蝶は、この度三代目織田組代行を襲名したことを関係各位にご報告申し上げる。


先代同様、北区・足立区・荒川区における各種興行を主催し、それに携わる飲食店等を保護する業務を再開するものとする。


尚、三代目組傘下に入ることを希望する団体や個人に於いては、その忠誠心を示すことでこれを許容する。北区赤羽にある織田組事務所まで来訪されたし。


諸々、ご理解賜りますよう。


 昭和ニ一年八月某日  


 三代目織田組組長姐 織田帰蝶





海道倶楽部は、王子駅前にある純喫茶のような佇まいだった。

看板も掲げていないので、会員制秘密クラブなのだろう。

その向かいにあるのが、山内工務店だった。


「なんだぁ。このナメた廻状は!」




つづく




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ