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令和最初で最後のスケバン、タイムリープだか憑依だかして昭和の極妻になって全国を制覇する‥‥とかしないとか  作者: 真夜航洋


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第4話 リタ、帰蝶に生まれ変わる


銃口が火を噴く。


「おまえは、生まれる時代を間違えた。ゆえに、あるべき世界に送り込む」


男が発した言葉ではない。

直接脳に伝わる声だった。


スーパースローの映像のように、銃弾が自分に向かってきているのが見える。


(あ。これ、心臓を撃ち抜くな)


冷静に観察していた。


男は「新井組」を名乗った。

だが、その上の足利会や玉木玲央が雇ったヒットマンかもしれない。


(誰だろうが、あたしは死ぬ)


「帰蝶!」


誰かが叫ぶ。


(キチョウ?誰のことだ?)


誰かの身体が覆いかぶさる。


(あたしを庇っている?)


スーパースローの銃弾は、その誰かの背中に命中した。


「おやっさん!」

「親分!」


周りが騒がしい。

いや。

周りの景色が変わっている。

路上ではない。

広い和室。

畳の上に、庇った男の身体がゴロリと転がる。


「はっはっは。時代遅れのくそヤクザども。文句があるなら、いつでも来い!あばよ」

「おい。逃がすな!」


ヒットマンを見る。

さっき見た男とは違う。

古臭い軍服のような衣服。


自分の身体を確かめる。

着ている和服が赤く染まっている。

返り血なのか、それとも……。


「……帰蝶。無事か?」

「……」

「……よかった。あとを…た、の、む……」


男はがっくりとうなだれた。

絶命、という言葉が脳裏をよぎる。


「親分!」

「医者だ。医者を呼んで来い!」


喧騒が遠くなっていく。

自分もまた気を失っていくのだろう。

視界がぼやける。


全てが夢であることを願いながら、眠りについた。





診療所のベッドの上だった。

白い和服。

患者衣というのか、これも着物だ。

病室の質感も古い感じがする。


「あ。目が覚めましたか?いま先生を呼んできますね」


看護師も着物に前掛けというスタイルだ。


(あ。これ、ドラマとかであるタイムリープってやつかな?)


冷静だった。

まだ夢の可能性があったから。

それに、もともとの気質。

仮に現実だとしても、冷静に対応しなければ危機回避ができない。


室内には簡易的な洗面台がある。

起き上がって、顔を見てみる。

確か、キチョウと呼ばれていたはずだ。

映る顔は自分ではないのだろうか?


(ああ。なるほどね)


別人だ。

ただ女ではあるし、年齢もだいたい17歳前後ではないだろうか。

以前の顔がハーフ顔だったのに対し、ザ・東洋人だ。

色白のうりざね顔。


(自分じゃないってことは、タイムリープでもないな。言ってみれば、時空を超えた憑依)


異世界転生系のゲームもやったことがある。

転生だと、生まれたところからやり直すはずだ。

これは既に存在する何者かに憑依した、というべきか。


(だけど憑依先は悪くない)


派手な顔立ちが、ひそかにコンプレックスだった。

なりたかった系列のビジュアルだ。

タイムリープ憑依をさせた神が、ここだけ希望をかなえてくれたのだろうか?


「お加減はいかがですかな?」


背後に医者の姿が映る。

続いて着流しの男。

全てが古臭い。


「あの。今日は何年何月何日ですか?」

「昭和24年10月18日です」

「西暦では?」

「ああ。いまはその方が流行りですな。1949年です。あなたはまる一日寝込んでいたことになります。どうぞ、そこに腰掛けて」


暗算。


(2027ー1949=78年前。直前まであたしがいたのは、3月だった。規則性は見当たらないな)


「あたしの名前は何でしょう?」

「……やはり、ショックで記憶が混濁してらっしゃるようですね」


隣の男が代わりに答える。


「姐さん。あんたの名前は、織田帰蝶さん。博徒一家織田組組長・織田三郎親分の奥様でやんす」


(織田……待てよ。三郎は信長の幼名だな。キチョウが帰蝶なら、そりゃ濃姫の本名だ)



〈以下、彼女の呼称は「帰蝶」とする〉



帰蝶は、昨夜徹夜したSLゲームを思い出す。


(いや。そんなことより、組長?姐さん?)


「あんたはウチの対抗組織・海道グループのチンピラに撃たれかけたんですよ」

(カイドウグループ?情報が渋滞してきたな)

「あんたを庇って、おやっさんが身代わりに撃たれたんです」


記憶の断片にある、庇ってきた男の顔。

特に深い感慨はない。

なにせ赤の他人だ。


(あ、いや。奥さんなら、ここは取り乱すとこか?)


「ええ!あのひとが?それで、夫は、夫は無事なんですか?」


帰蝶が男の胸倉をつかむ。

精一杯の演技だ。


「落ち着いてくだせえ。そこは、先生から」

「おほん。旦那さんの一命はとりとめました。銃弾は重要な臓器を傷つけてはいなかった。摘出もうまくいって、輸血と点滴で今は眠っておる。お会いになりますか?」


その男は、ベッドに寝かされて点滴を受けていた。

無論ICUのような集中治療室ではなく、酸素吸入器なども付けていない。

ぐっすり気持ちよさそうに眠っているようにも見える。


(これが組長か。せいぜい20代。なんか、おっとり系の男っぽいな)

「ん。ん~~ん。帰蝶」

「おや。夢の中で奥さんの名を呼んでるな。ほら。旦那の手を握ってあげて」


医者に言われて、仕方なく手を握る。


「‥‥あなた。しっかり‥ン?」


三郎の手が、寄り添う帰蝶のお尻を撫で回す。


「いいケツだなあ。なあ。嫁には内緒でイッパツやらせて‥」


重病人に頭突きを入れる。


「このクソが。さっさと死ね!」


恐らく入院期間が延びただろう。




つづく



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