表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
令和最初で最後のスケバン、タイムリープだか憑依だかして昭和の極妻になって全国を制覇する‥‥とかしないとか  作者: 真夜航洋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/31

第19話 参勤交代


実は加藤は、威嚇するだけのつもりだった。

あのあとすぐに大吉連合の若頭補佐・宮本保志と会って話をした。


「おめえにチャカ突きつけたのは、たぶん山縣賢三だな。田母神雄一の番犬、って呼ばれてる」

「その山縣って奴が、俺を小馬鹿にしやがったんだ。『勘弁しろよ。酒飲み野郎が』とか言ってよ」


令和と違い当時の東京都民には、関西弁は理解されていなかった。

その乱暴な語調から、常に怒っているかバカにしているように聞こえるのだ。


「だからと言って、先代の兄弟筋に弓引くわけにゃいくめえ」

「それじゃあ、俺の肚が収まんねえんだよ!」

「わかったわかった。なら、組員総出で見送りに行ったらどうだ?『お仕事、お疲れ様でした!』つってよ」

「ざけんな。なんでそんな…」

「肚ん中でこうスゴめよ。『ビビッてチャカも撃てねえ腰抜けどもが。とっとと帰れ。次来るときゃ戦争するときだ』ってよ」


興奮しきりの加藤は我に返る。


そうか。

奴ら、大吉連合の代紋にビビッてたのか。

なら、恥かいたのは向こうの方だな。

そもそも駐車場の件は、俺と奴らしか知らないことだ。

見方次第だわな。

そのへんにしとくか。

俺もだいぶ酔ってたしな。

そういや、やよいちゃん可愛かったなあ。

 

 


誤解が誤解を呼んで、話は大ごとになっていく。

田母神一行は、横浜駅でハイヤーから急行に乗り換えて無事に神戸に戻った。

加藤一家の見送り(威嚇)は、空振りに終わったのだ。

帰るなり、大和田組幹部は緊急総会を開いた。


「大和田の四菱(代紋)に泥塗られたんや。やるしかないやろ!先鋒は俺が務めたる」

 

山縣は主戦論一辺倒だった。


「山賢よ。あの御仁は、ただのやよいファンやったんちゃうか?わしには、殺気は感じられんかったで」


急行電車の中で、田母神に諫められた。

いろんな感情が渦巻いた。

俺はオヤジを守りたいだけなのにわかってもらえなかった、という哀しみ。

俺、ちゃんと謝ったモン!といういじけた気持ち。

相まって「あいつらが悪い、殺す」となっている。


だが、他の幹部には温度差がある。

現場も見ていないし、そもそも大吉連合の厚意で打った興行なのだ。


(喧嘩を売るとは考えにくい。ここは自重しとかなあかんで)


ただ、いい機会とも言える。

全国制覇を目指す上で、東京は避けて通れない。


(この際、山賢を特攻隊にしてカマすのもアリ、か)


それぞれの思惑が渦まく。

大所帯の会議はえてして、トップダウン待ちになりがちだ。

静けさの中、この場の神が言葉を発する。


「わしはな、やよいを喧嘩の引き金にしたないんや。将来の汚点になるさかいな」

 

ピリつく者。

ほっとする者。


「けど、山賢もまた、わしのかわいい息子や。その息子が虚仮コケにされたら、そら黙ってられへん」

 

山縣がうなだれる。

涙を隠しているのだろう。


「ここはどうやろな。参勤交代でもしてみよか?」

 

カリスマの言葉は、いつの世も考察を要する。

幹部たちは一斉に、ポカンと口を開けた。





[大和田組が動きました。構成員500名以上が神戸駅に集結しています。行先は品川。窓口で五百枚の切符をまとめ買いしたそうです]


この事件がラジオで全国放送された。

日本中に緊張が走った。


放送される前に警視庁から連絡を受けていた帰蝶は、すぐに明王会の松家に電話をした。


―ああ。聞いてる。大吉連合が蜂の巣をつついたような大騒ぎらしい。そうか。神戸がついに腰を上げたか。


「大和田の狙いは、友好団体の大吉連合か。決裂の原因は?」


―わからねえ。ねずみ花火投げ込まれても、戦争の理由にするのがヤクザだ。友好なんて、お互い利用できるうちだけだしな。





「はあ?全員、鈍行に乗った?なんだ、そりゃ」


加藤はそう叫んだ。


神戸・品川間は普通列車だと12時間はかかる。

車を使わないのはわかる。

検問があるし、この時代にはまだ東名・名阪高速道路はできていない。

舗装状態も怪しい国道ばかりだ。


だが半分の所要時間で済む急行にも乗らず、大の大人500人が半日かけて移動するというのか?

いや、ただの大人ではない。

強面のヤクザだ。

文句を言う奴もいるだろうし、ケンカも起きるだろう。


「加藤さん。あんたの事務所は品川だよね。心当たりはホントにないのかい?」

 

警視庁第四課、のちの暴力団対策課の刑事が、大吉連合事務所を訪ねてきている。

加藤の冷や汗は止まらない。


宮本が加藤の袖を引っ張って、耳打ちする。


「おめえよ。あんときの冗談真に受けて、お見送りなんかしちゃいねえよな?」

「あ?冗談?」

「たりめえだろ。俺が言いたかったのは『向こうもビビッてたんだから、もうこの話は忘れろ』って意味だぜ」


開いた口がふさがらない。


(この野郎、俺ひとりに責任をなすり付ける気だ)




つづく



ブクマや☆付けて欲しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ