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令和最初で最後のスケバン、タイムリープだか憑依だかして昭和の極妻になって全国を制覇する‥‥とかしないとか  作者: 真夜航洋


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第13話 同盟

織田信長の略歴(一部)


1560年 桶狭間の戦い 

     少数軍勢で大大名・今川義元を討ち、  

     全国に名を轟かせる。

1562年 徳川家康と清須同盟を結ぶ

1567年 稲葉山城攻略 

     宿敵・斎藤龍興を討ち、天下布武の基

     礎を固める。

1568年 足利義昭を奉じて上洛 

     実質的な天下人となる。


       ‥‥‥‥‥



悩みどころだった。

だが、いまは瀬川隆介という得体のしれない商社マンの厚意を受けるべきだろう。


「瀬川さん。何から何まで、本当にありがとうございます」

「……私が死なせた兵士たちも、織田さんぐらいの若者ばかりでした」


そう言って、三郎を見る。

瀬川は、参謀本部で作戦立案を担当した陸軍中佐だった。

戦争終盤、学徒をはじめ若い戦死者を出したことが痛恨なのだろう。


「私は若者の未来を奪いました。これは罪滅ぼし、贖罪のひとつで…ただの自己満足です」


男が苦笑した。

その複雑な笑みだけが、今日垣間見た瀬川の感情だった。




明王会のナンバー3松家康平と、酒席で初対面した。


「やだよ。ヤクザなんかと酒飲んだって楽しくないもん」と三郎は断った。


だから今回は、帰蝶ひとりだ。

和服を着て行った。

いかにもヤクザの姐さん、を演出したのだ。


「お初にお目にかかります。あたしが、三代目織田組姐・織田帰蝶です。今夜はひとりで来させていただきました」


女一人寄こしやがって、ナメんな……と席を立たれるかもしれないと危惧していた。

だが相手は、驚きもしない。


「そうかい。おめえさんが、赤羽でド派手な花火を打ち上げた戦車”女”か。なるほどな」

「いえ。あれはウチの旦那の三代目が……」


「俺に作り話はしなくていいぜ。三代目のことはガキの頃から知ってるんだ。あいつはそんなことできるようなタマじゃねえ。ただのボンクラ、うつけ者だ。だがあんたはいいオンナだが、おっかねえ目をしてる。あんたがやったって方が信じられるぜ」

「……」

「それによ。ほれ」


懐から一枚の紙切れを取り出して、見せた。

海道グループに配った廻状だ。


「ここにしっかり『織田帰蝶』と書いてある」

(こんなものを持ってるってことは、織田組のことを調べつくしているということだな。それなら下手な芝居は逆効果だ)


「別に責めようってんじゃねえ。おもしれえ喧嘩をする極道がいるもんだ、って俺はずっと感心してたんだ。その極道が、こんな小股の切れ上がったいい女だとは。ははは。だからこの渡世は面白え」


松家もまた、織田組に好意的だった。

そして豪快な男だった。

腕っぷしでのし上がったタイプ。

義理人情に篤く、昔気質の極道だ。


「先代は実直ないいヤクザだった。だが、あんたは違うな。野心家だろ?」

「いえ。組の者を養うだけで精一杯です」

「まあ。上に立つモンはそういうもんだ」


大組織・明王会の中ではナンバー3だが、松家もまた自分の組で五十人以上を抱えている。


帰蝶は腹をくくり、織田組の現状を包み隠さずさらけ出した。

松家は、組織体制の見直しを助言した。


「まず、生え抜きを中心に正式組員を絞り込んだ方がいい。もと愚連隊は分家をつくって、そこに置いておく。別動隊にして手柄を上げたら可愛がってやり、変な気を起こすようなら外すんだな」


経験則なのだろう。

説得力があった。


「それと、戸田の件だ。瀬川さんは足利会を外したがっている。どうやら、足元を見て尾藤商事に吹っ掛けてきているらしい。それに戸田は埼玉だ。瀬川さんの息のかかった警視庁の管轄外になる。できりゃ、東京の組に建設現場を仕切らせたいんだろうよ」


腕力だけではないようだ。

松家は情報収集力と分析力も長けていた。

策略家のふたりは、意気投合した。


(ふう。やっと、頼りになる味方ができたな。敵に囲まれた時期に、徳川家康と同盟を組んだ信長の気持ちがわかったよ)




さっそく帰蝶は、敵の内情を調べてみた。

足利会は、埼玉中の博徒集団とテキ屋で構成される連合組織だ。

中枢となるのは博徒集団・足利組とテキ屋元締めの浦和興産。

足利組二代目の吉野彬を会長に戴き、戦前は一致団結し規律のとれた組織だった。


時が経ち、戦後のドサクサ。

足利会は、組織拡大のために身元不明の愚連隊を受け入れた。

愚連隊の川越黒龍会、不良少年のグループ・烈風雄飛隊、新進博徒集団・稲葉組などだ。


(稲葉組?令和の細川の組か。また、根っこを見つけたぞ)


調べによると、稲葉組は埼玉県内に初めて連発式パチンコを導入した組だそうだ。

さらにそれまで出玉を菓子や洗剤などと交換していたものを、特殊なメダルと交換させて後で買い戻す方式をとった。

打ち手は現金が手に入るのだから、熱くなる。

これがブームとなって荒稼ぎをした。

その豊潤な資金があったため、足利会への参入を許されたようだ。




新しい家屋の居間で考え事をする。

前の喧嘩で全壊したバラック小屋を建て直したのだ。


「金で代紋を買った、てわけか。う~ん。稲葉組かあ。なんか他にもやってそうだけどなあ」


ひとりごとが口をついた。


「あのう。姉さん。稲葉組と言うのは、埼玉の稲葉組のことですか?」


針仕事をしていた金美蘭が手を止めて、訊いてくる。

新たに組に引き入れたグループの中には未成年者が何人かいたので、その子たちを間借りさせている。

美蘭もそのひとりだ。


彼女は帰蝶を、姐さんではなく姉さんと呼ぶ。

兄のキム・イスンによると、帰蝶を本当の姉のように慕っているようだ。


「なに、蘭丸。知ってるの?」

「……はい。ただ、あんまりいい話ではないんですけど……」

「……」




 

つづく



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