表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
令和最初で最後のスケバン、タイムリープだか憑依だかして昭和の極妻になって全国を制覇する‥‥とかしないとか  作者: 真夜航洋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/14

第11話 失速


ため息が出る。


(まあ。今のところ、令和に戻れるアテもないしね。そもそも、何がどうなって昭和時代にいるのかも知らんし)


そういえば、タイムリープだか憑依だかしてからずっと考えてなかった。

それどころではなかった。

銃で襲撃されたのだ。

追撃があるかもしれない。

すぐに対応しなければ、命の危機だった。


(落ち着いたらゆっくり考えてみようと思ってたけど、考える材料もないしな。まぁしばらくは、運命に身を任せるか)


乗りかかった舟でもある。

帰蝶は三代目姐として、このゲームを続ける覚悟を決めた。





昭和二五年(1950年)6月。

上総リタが織田帰蝶に憑依して、すでに半年以上が経っていた。

米ソに分割統治されていた朝鮮半島で戦争が始まった。


朝鮮戦争は日本の独立発展を促した。

戦争によって焦土と化した国土が戦争によって復興する、という皮肉。

朝鮮特需という好景気が始まったのだ。

だが、三代目織田組はその流れに乗り遅れかけていた。


所詮は愚連隊だった。

枯れ木も山の賑わいと仲間に引き入れた海道グループだが、規律がない暴力装置はゼロどころかマイナス要因だった。

相手構わず喧嘩を吹っ掛けては、組長である三郎が相手方に謝罪する。

佐久間や前田が何を言っても、言うことを聞かないようだ。

 

劇的な初戦を勝利して一目置かれたはずの織田組も、渡世の信用をなくしかけている。


いわく、辺り構わず噛みつきまくる狂犬集団。

組長は愚連隊もまとめきれない若造。

さっそくメッキが剥がれた。


(桶狭間後の信長もそうだ。帰蝶の父・斎藤道三が亡くなり、息子の龍興との戦いで低迷した。この辺も史実通りか)


帰蝶がため息をつく。


渡世の先輩たちは三郎に助言する。


「あんたはまだ若いんだし、明王会に後見人になってもらったらどうだい?」


博徒集団の明王会は、東京の大組織だ。

明王会が後見人になれば、組の運営は安定するだろう。

その助言をそばで聞いていた帰蝶は思う。


(それじゃあ、大組織に吸収されんのは目に見えている)


令和にいた頃も同じような話があった。

上総リタが立ち上げた安土会。

悪いことは言わないから大吉連合の傘下に入れ、と勧誘された。


(令和も昭和も変わらない。やつらはすぐに親分面をし始め、いずれは組を乗っ取る気だろう)


とはいえ、組の運営は順調とは言えない。


(シノギをもっと大胆に変えないと、ジリ貧だな)

 

また、ため息が漏れた。





居間で考え事をしていると、背後に悪寒を感じた。


「き~ちょ、お」


誰かが抱きついてくる。

反射的に肘打ちを入れる。


「うげ。ぐおお」


案の定、三郎だった。

おそらくバックハグをしようとしたのだろうが、みぞおちを押さえてのけぞっている。


「な、何すんだよお」

「おまえが怪しいマネするからだ」

「俺ら夫婦なんだぞ。おっぱいぐらい揉ませろよ」

(こいつ、そこまでする気だったのか)


退院してしばらくすると、三郎は帰蝶にまとわりついてきた。

最近入籍したばかりの新婚夫婦なのだから、ある意味自然ではある。

だが帰蝶の中身、上総リタは性に対して潔癖だった。


「三郎さん。あたしの記憶が戻るまでは、そういうことはしないでください」


そう釘を刺したつもりだったが、そもそもこの男はクズ男だった。

組のことはもとより、外で働くこともしない。

昼過ぎまで寝てパチンコして帰って、帰蝶にちょっかい出して殴られる毎日だ。


(帰蝶という女は、この男のいったいどこに惚れたんだ?)


上総リタにとって、もっとも嫌いなタイプの男だ。


(クソ親父を思い出す。せっかく生まれ変わったのに、またか?そういう宿命なのか?)


「失礼しやす」


佐久間が居間に入ってきた。


「姐さん。いい伝手が見つかリました。捕虜収容所で知り合った、もと参謀本部の捕虜で瀬川という男です。この男はいま尾藤商事という商社に勤めていますが、政治家、官僚、企業など軍隊時代からの人脈が豊富です。ここでつながっておきましょう」

「商社マンってやつか。ヤクザとは無縁の人種のように思えるけど?」

「今、荒っぽい仕事を下請けしてくれる団体を探しているようです。金と人脈が必要です。すぐに挨拶に行きましょう」


珍しく興奮気味だ。


「尾藤商事って、一流の商社じゃなかったっけ?」

「あ。親分もいらしたんですか?」

「俺んちだもん。そりゃあ、いるよ」


組員達はもうすっかり、帰蝶をトップだと思っている。

鈍い三郎でも、それは薄々気づき始めていた。


「なので、できるだけ早く姐さんに……」

「俺も行く!」


帰蝶と佐久間が顔を見合わせる。


「名前だけだとしても、俺が組長なんだ。俺が会って話をつける!」




つづく



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ