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令和最初で最後のスケバン、タイムリープだか憑依だかして昭和の極妻になって全国を制覇する‥‥とかしないとか  作者: 真夜航洋


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第10話 戦後処理

織田信長の略歴(一部)


1560年 桶狭間の戦い 

     少数軍勢で大大名・今川義元を討ち、  

     全国に名を轟かせる。

1567年 稲葉山城攻略 

     宿敵・斎藤龍興を討ち、天下布武の基

     礎を固める。

1568年 足利義昭を奉じて上洛 

     実質的な天下人となる。


       ‥‥‥‥‥



対岸から小舟に乗って来た織田帰蝶が状況を確認する。

海道グループを名乗った愚連隊は四散している。

残った者らは、傷ついてその場に倒れている。

モグリの闇医者が、野戦病院の軍医さながらに診察して回る。


「海道の大将はどいつ?」

「いねえよ。もう逃げた」


声の主を見る。


「あんたは?」

「真正海道会の惟任明光だ。降参する。だから、怪我人は助けてやってくれ」


本人はかすり傷のようだ。

動けない仲間を守るために、逃げずにここに残っていたのだろう。


「へえ。やっぱ肝がすわってんね。あたしが織田帰蝶だ」

「‥‥え?女?」

「ああ。織田組三代目姐だ」

「あんたが、この喧嘩の仕掛け人なのか?」

「まあね。おーい。怪我人をあのトラックに乗せて、先生の診療所に運んでやって」


織田組組員が、落とし穴に嵌ったトラックを引き揚げ始めた。 

惟任と戦後処理について話す。


「覚悟はできてるね?」

「ああ。完敗したんだ。こっちのシマも譲るし、組に入れてくれるってんなら、ここにいない者もあとでまとめて連れてくる」

「それと、懲役に行ける人間を何人か出してもらおうかな」


傷害、騒乱、爆破などの罪を着てもらう。


「こんだけの騒ぎを起こしたんだ。あの戦車も、当然押収されるだろう。山内の代わりに刑務所に入ってもらう人間も必要だな」

「わかった。用意する」

「おまえら愚連隊の仲間割れ、ということで口裏を合わせとけよ。織田組の名前は一切出すな」

「ああ。何でも言うとおりにする」


「で、こっちのあんたがキム・イスン?」

「はい」

「外国人グループを仕切ってる男か。あんたも、うちに入るんだね?」

「よ、よろしく……あ!」


帰蝶に襲い掛かってくる者がいた。


チングの仇!」


片手でドスを振り回している。

まだ少年のようだ。

帰蝶はタイマンやステゴロは得意ではないが、獣のようによけるのがうまい。

体を躱して、腕を捩じ上げる。


美蘭ミラン。何をやってんだ?」


キムが、か細い手に握られた短刀を取り上げる。


「ん?女の子なのか?」

「やめろ、バカ。織田組の姐さんは、そのチングを助けてくださったんだ」

「え?そうなの?ヒョンニム(兄貴)~チェソン…へヨ(ごめん)」


「このガキ!」


前田が美蘭を刺そうとするのを、帰蝶が一喝する。


「利夫。子どもに手を出すんじゃねえ!」

「…す、すまねえ。姐さん」


叱られた飼い犬のようにしょんぼりする。


向かってきたのはキム・イスンの妹で、ミランという12歳の少女だ。


「ミランって、どう書くんだ?」

「‥‥美しい、蘭」

「じゃあこれからは『蘭丸』だ。蘭丸。あんたも医者に診てもらいな」

「‥‥はい」


素直に従った。

子どもなりに、帰蝶が敵でないことを認識したようだ。


(さ。これでひと段落ついた。ただ、今夜からどこで暮らせばいいのかな?)


組事務所兼自宅は、完膚なきまでに破壊されているのだった。




帰蝶は仕方なく、診療所にいる組長で夫の織田三郎に相談に行った。

まず若頭の佐久間が、今回の抗争を事細かに報告した。

話の途中から、三郎はポカンと口を開けて聞いていた。


「そんなわけで、住む家がなくなってしまった。それにあたしはどうやら記憶喪失のようなんだ。しばらく仮住まいさせてもらえる親戚とかあれば……」

「……いや、ちょっと待て。その前に、海道グループを壊滅させたって?」

「ああ。させたね」

「きみと、たった6人の組員で?」

「いや。アルバイトで20人ほど日雇いした。あとでバイト代を払わないといけない」

「佐久間。ホントの話なのか?」


佐久間が大きく頷く。


「帰蝶。きみは、まだ女学生だったはずだよな?」

「ああ、そうなの?そこも記憶が飛んでいてね」

「まさか、俺の嫁がそんな恐ろしいことをするとは」

「親分。姐さんの作戦は見事でした。頭が回るだけじゃなくて、度胸もあるし腕も立つ。やはり、織田組は存続させるべきです。考え直してください!」


(考え直す?なんのこと?)


「だから何度も言ってるだろ。俺は荒事は苦手なんだって。だから帰蝶との結婚を機に、織田組は解散させて俺は足を洗うって」

「……」

「だいたいさあ。せっかく戦争が終わったのに、なんで好き好んで抗争なんてしなきゃなんないの?俺は絶対イヤだからね!」


三郎はスネたように枕に顔をうずめた。


「そうだったのか。佐久間。ちょっと」


佐久間を廊下に連れて行く。


「あんた、黙ってたね?あたしの記憶がないのをいいことに」

「すいやせん。あっしは先代からの組員なんです。ですが先代が戦死なすって。息子の三郎さんを担ぎ上げて、なんとか組を再建しようと……」


「本人は全く継ぐ気がないみたいだけど?」

「はい。ですが、あっしは姐さんに希望の光を見たんです」

「……」

「この渡世は男社会です。三郎さんの名前だけ借りて姐さんに組を仕切っていただけりゃ、織田組は返り咲けるんです。お願いしやす!」


佐久間が廊下で土下座する。


「あっしは、織田帰蝶さんが日本一の姐さんになれる器だ、と確信したんです!」




つづく



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