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世界征服すれば貴女と再会できますか?  作者: はの


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第8話 追放の勇者

 馬車で数日かかる道のりを、徒歩で向かえばどれだけ時間がかかるだろうか。

 それも、万が一アスノを追いかけて来る村人がいたとしても見つからないように、馬車のルートを大きく迂回したならば。

 

「ぬかるんでる。足元がベチャベチャだ」

 

 馬車がいつも通る道は、馬車の通行によってある程度固められ、人間にとっても歩きやすくなっている。

 しかし、馬車が通らない道は、自然が溢れかえっている。

 ぬかるんだ地面に、茫々と生える草。

 過酷な道は、アスノの体力を着実に奪っていった。

 

「待ってて、セーラ。今、助けに行くから」

 

 アスノを突き動かすのは、セーラへの想い。

 セーラに告白してから五年間。

 鍛えに鍛えた体力と、膨らみに膨らんだ体力が、アスノの体を動かし続けた。

 

「お腹空いた」

 

 唯一苦しむことと言えば、食料が定期的に入手できないことだ。

 水分は、草を齧れば補給できるし、雨が降れば飲み込める。

 問題は、肉だ。

 村から持ち出した干し肉を非常用として温存し、獣の姿が見えれば何を差し置いてでも狩りをした。

 狩った獣だけが、アスノの食料だ。

 

「まだかな」

 

 王都に行ったことは、たった一度だけ。

 朧げな記憶と、僅かな空気の変化だけで、進行方向を決めて歩き続けた。

 

 

 

「あ……。王都の……匂い……」

 

 村を出てから、十日と少し。

 アスノはついに、王都へと辿り着いた。

 王都の壁の周りには馬車がほとんど止まっておらず、セーラがパレードをした頃とは雲泥の差だ。

 アスノがふらふらと入口の門に近づくと、門兵たちがアスノを怪訝そうな目で見て、門の中に入らないように行く手を阻む。

 

「なんだお前は? 通行証はあるか?」

「い、いえ。その…‥セーラ……勇者様は?」

 

 セーラの名を口にした瞬間、門兵の表情がさらに険しくなり、アスノの首根っこを掴んだ。

 

「貴様! セーラの仲間か? セーラは今、どこにいる!」

 

 宙ぶらりんになったアスノは、苦しそうに門兵の手をはがそうとしながら、必死に潔白を叫ぶ。

 

「な、仲間じゃないです!」

「ならばなぜ、セーラの名を出した?」

「す、好きなんです! セーラが!」

「ちっ。お前も、ただの信者か」

 

 アスノの言葉に納得した門兵は、乱暴にアスノから手を離す。

 アスノはその場に尻もちをつき、痛む尻をさすりながら、門兵に尋ねる。

 

「あの」

「なんだ?」

「セーラがどこにいるって、どういうことですか? セーラはもう、王都にはいないんですか?」

 

 食い入るような表情のアスノを見て、門兵たちは顔を見合わせる。

 

「伝達官から、何も聞いていないのか? どこの辺境の人間だ? セーラは、国外追放を前に、王都から姿を消した」

「え!?」

「禁忌に手を出したことに加え、裁きを受けずに逃亡するという大罪。セーラはいま、指名手配犯として探しているところだ」

 

 門に、新しい馬車が近づいてくる。

 門兵はそれに気づくと、アスノを追い払って、仕事へと戻っていった。

 

 門兵の仕事は、入街希望者の身元と荷物を確認し、王都にとって危険でないことを確認すること。

 王都の外からやって来た、小汚い餓鬼を世話することではない。

 

 門から少し離れたところで、アスノは笑っていた。

 セーラの無事を喜んでいた。

 

「そうか。そうなんだ。セーラ、無事に逃げ出すことができたんだ」

 

 裁きを受けずに逃亡することは、国へ立てつくことだ。

 セーラの状況は、さらに悪くなったことだろう。

 しかしアスノには、国の戦力をぶつけられてなお、セーラが勝利し逃げ延びることができるという確信があった。

 それほどに、アスノの記憶にあるセーラは強かった。

 

 セーラは国内にいる可能性が高い。

 それだけで、アスノには十分な希望だった。

 

「セーラを探そう。会いに行こう」

 

 騎士になると言うアスノの夢からは、大きく外れる選択だ。

 しかしアスノは、躊躇いなく選んだ。

 アスノにとって、セーラの隣に立つことが一番で、それ以外は些末なことなのだ。

 

「きっと、どこかで生きてる。セーラが救った村のどこかが、匿ってるに違いない」

 

 アスノは王都を離れ、再び歩き始めた。

 行く当てなどない。

 ただただ、セーラの噂を辿りながら、国を歩き続けた。

 

 

 

 

 

 

「勇者様? ええ、来たわよ。恐ろしいわよね」

「私、悲鳴上げちゃった」

「え? どこに向かったかって。そうね、東の方に歩いていったと思うわ」

 

 意外にも、勇者の目撃情報にはすぐに遭遇した。

 ボロボロの赤い服を着た、生気のない少女の存在を。

 

「倉庫から人の気配がしてね。獣かと思って桑持って見てみたら、びっくり。あれは勇者様よ」

「村の食べ物を奪おうだなんて、ふてえやつだよ」

「すぐに通報してやったわ。早く、捕まるといいんだがなあ」

 

 同時に、いくつも遭遇した。

 セーラを恐れ、疎み、拒絶する声に。

 

 

 

「セーラ? どこにいるの、セーラ?」

 

 この国のどこにも、セーラの味方はいない。

 なら、自分が味方にならなくては。

 

 孤独な少女を探すため、アスノは国中の町や村を渡り歩いた。

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