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世界征服すれば貴女と再会できますか?  作者: はの


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12/15

第12話 過去の勇者

 ――貴方達の力を貸してください。

 

 アスノの頭の中に、懐かしい声が届いた。

 それは、魔女の村を訪れた時の、セーラの声。

 

 ――死者蘇生の法を、完成させたいの。

 

 死者蘇生の法は、禁忌である。

 本来であれば、協力する人間などいるはずもない。

 

 しかし、ここは魔女の村。

 禁忌に手を染めてでも魔法の本質に迫ろうとする、魔法狂いの人間たちの集落。

 

 ――私たちは、死者蘇生の法に関与していない。私たちは、お前を村に招いていない。そういうことで、良いな?

 

 ――はい!

 

「やっぱり、来てたんだ」

 

 魔女の村の村長の記憶からセーラの訪問を知ったアスノは、思わず声を弾ませた。

 同時に、セーラがいつまでも見つからなかった理由もわかった。

 セーラは魔女の村に匿われていた。

 

 魔女の村は、人間の村の中でも異端だ。

 禁忌に手を染めることがある一方、世に存在しない魔法を生み出す場所でもある。

 国は、その危険性と有用性から、国に危害を与えない限りは干渉を避けているというのが現状だ。

 よって、セーラの捜索においても魔女の村を対象外、あるいは形式上の捜索だけで済ませた可能性は高い。

 

「死者蘇生、本当にやろうとしてたんだ。一体、何を甦らそうとして……あ」

 

 アスノが、さらに深く記憶を辿ろうとすると、突然、魔女の村の村長の頭部がはじけ飛んだ。

 鮮血が、周囲を濡らす。

 記憶を覗く行為は、対象への負担が大きく、やりすぎればこうなる。

 記憶を覗く魔物が恐る恐るアスノの方を向いてきたので、アスノはやれやれといった表情を浮かべて、記憶を覗く魔物の頭を撫でた。

 

「仕方ない。随分、年を取っていたからね。全員、引き続き人間は殺して。ただし、建物はなるべく壊さないこと」

 

 魔女の村が、地図から消えていく。

 

 

 

 魔女が全滅する裏で、アスノは村にあったあらゆる書物と素材を持ち去った。

 きっとどこかに、セーラの痕跡が残っていると信じて。

 

 小さな村出身のアスノは、文字を読むという作業に慣れていない。

 幸いにも、人間の言葉の読み書きに不自由しない魔物が存在したので、アスノはその魔物たちに解読を進めさせた。

 豚の顔の魔物も、その一人である。

 

「これは、腐ったリンゴを新鮮なリンゴに戻す魔法だな」

「便利だね」

「リンゴしか戻せない上に、すごい悪臭を放つようになるらしい」

「微妙だね」

 

 侵攻をしばらく止めてでも、アスノは読解に明け暮れた。

 破壊を楽しんでいた魔物たちは不満がっていたが、現在の魔王が決めたことならばと、我慢していた。

 時々、人語を解す魔物が、アスノに進言をしたこともあった。

 

「我々だけでも、人間の町を襲う許可を」

「駄目。見つかって、狩られるのがオチだよ」

「そんなことはありません! 魔王様はご存じないかもしれませんが、我々の隠密行動は、人間のそれを容易く超えます」

「うん。駄目」

 

 しかし、アスノはにべもなく却下した。

 力づくで押さえつけている魔物に、信用などおいていなかった。

 

「ちっ!」

 

 アスノは舌打ちをしながら去っていく魔物を見て、残された時間の少なさも感じていた。

 アスノが魔物を押さえつけることができていたのは、セーラによって大半の魔物が狩られ、魔物全体が弱体化していたからだ。

 逆を言えば、アスノが魔王となってから繁殖に励み、数をある程度取り戻した今、魔物たちは着実に力を取り戻していた。

 数々の町や村を滅ぼしたという実績を得た今、魔物たちの中に、何故アスノに従い続ける必要があるのか疑問を抱く者も現れた。

 

「魔王様」

「セーラが見つかったら、俺は魔王を止める。その後は、君が魔王だ」

「!?……はっ」

 

 アスノが魔王であることに疑問を抱くなら、魔物の中から適任を選べばよい。

 隣で話を聞いていた豚の頭の魔物に、アスノは将来の魔王の座を約束した。

 これで、豚の顔の魔物は、魔物たちの集団が崩壊することを、自分の意思で防ぐだろう。

 将来自分のものになる、力を。

 

「お前たち、解読もすすめろ!」

 

 上機嫌な豚の顔の魔物は、部下たちに指示を下した。

 

 

 

 

 

 

 月日が流れる。

 僅か一年で、魔物たちは国の三割の土地を掌握した。

 国は、周辺諸国との貿易ルートも失っていき、疲弊しきっていた。

 明確な打開策もなく、魔物たちの扱いに手を焼いていた。

 

「……おい、あれ」

「……まさか」

 

 明日に希望を見いだせない王都の人々は、王都の門を潜り抜ける一つの影を見て、目に輝きを取り戻した。

 

「勇者様!」

「勇者様だ!」

「お願いします! 魔王を、倒してください!」

 

 勇者セーラが、王都に帰還した。

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