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世界征服すれば貴女と再会できますか?  作者: はの


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第11話 不明の勇者

 かつての魔王は、魔物たちを自由に行動させていた。

 よって、群れと言っても魔物の数はたかがしれ、村人たちだけで村を守った前例もあるほどだ。

 対してアスノは、全ての魔物で一つの村を襲うという集中を選択した。

 現在のところ、村人たちだけで村を守れた事例はないどころか、救援が間に合った事例もない。

 

 人類にとって、未曽有の事態となっていた。

 

 

 

「次は、どこを責めますかい?」

「この村かな」

 

 いつ、どこを攻めるかは、アスノが決めていた。

 アスノは人間として、人間の村や町を歩き、人間の情報を集めてきた。

 魔物の持つ希少な宝を換金し、地図を買い、噂を買った。

 そうして得たのが、国にとって重要な場所とそうでない場所、災害や進行が発生した時に援軍が到着しやすい場所とそうでない場所。

 人間として得た知識と感性は、実に容易く魔物たちの侵攻を実現し、町や村を滅ぼしていった。

 

 国もまた、指を咥えて見ていたわけではない。

 かつてセーラが作った特別騎士団主導の元、魔物討伐の遠征に乗り出していた。

 しかし、国にとって想定外だったことに、特別騎士団は魔物を見つけることができなかった。

 遠征先で、まったく的外れな場所で魔物の襲撃が起きたという緊急の報を、ただ聞くことしかできなかった。

 

 アスノは、村を滅ぼした帰り道、豚の顔の魔物に尋ねた。

 

「君たち、隠れるの上手いよね。こんなに人間と遭遇しないとは思わなかった」

 

 豚の顔の魔物は、大きな鼻の穴をさらに膨らませながら、自慢げに語った。

 

「そりゃあ、魔物は人間より獣に近いからな」

「獣に近いと、逃げるのが上手いの?」

「人間は、住み心地のために村や町を作って、向かってくる敵を返り討ちにする生き方を選んだ。獣は、天敵に見つからないように移動を続ける生き方を選んだ。獣の方が、見つからずに移動する能力が高いんだ」

「そうなんだ」

 

 ズシンズシン。

 ドシンドシン。

 これだけ足音を響かせても見つからないなんて不思議な物だと、アスノは丸くて巨大な魔物の背を撫でた。

 

「実は、侵攻中と帰還中で、足音の波長を分けてるんだよ。帰還中は、意外と足音が遠くまで聞こえねえんだだ」

 

 アスノの疑問を察したように、豚の顔の魔物は言った。

 

 

 

 

 

 

 一つ。

 また一つ。

 人間の住む集落が消えていく。

 

 自分が魔王に近づく度、自分の目標が叶う度、アスノは焦燥感に襲われていた。

 

「ねえ、セーラ。国が、ぼろぼろだよ?」

 

 目標の先、セーラが一向に現れないことに。

 

 人間の町で噂を聞いた。

 人間の世界でも、新たな魔王が出現したという常識が作られていた。

 人々が、国のどこかにいるであろう勇者セーラの帰還を待ち望んでいた。

 しかし、セーラが魔物を狩ったという噂は、一つもなかった。

 

「魔王様?」

「このまま、続ける」

 

 泣きそうな顔をしていたアスノは、豚の顔の魔物の言葉で我に返った。

 

 もしもセーラが既に死んでいたとしよう。

 そうすれば、アスノの行動に意味はなくなる。

 ただ、人間を大量虐殺しただけの狂人として、世界に名を残すだけで終わる。

 

 セーラのためという正義感で行動を続けていたアスノにとっては、心を砕きかねない不都合な事実だ。

 

 しかし、アスノは飲み込んだ。

 自分が闇に染まるなど、セーラと再会できる可能性に賭けるための、安い代償だと。

 

 

 

 

 

 

「魔王様」

 

 事態が動いたのは、二年後。

 アスノがニ十歳になる年。

 魔女の村と呼ばれる、魔法を極めるために集まった人間たちだけが住む村を襲った日のことだ。

 

「これ、セーラの髪の毛だ」

 

 村の倉庫に仕舞われていた道具の中に、アスノは見覚えのある物を見つけた。

 

「人間を、一人連れてきて。一番偉そうな人」

 

 体の半分が口の魔物に下半身を咥えられ、上半身だけ外に出た魔女の村の村長がやってきた。

 魔女の村の村長は、アスノの姿を見るなり、鋭い瞳で睨みつけた。

 

「反神者め……! ぐう……!」

 

 反神者。

 人間社会に歯向かった人間。

 

 アスノへ殺意を向けたことで、体の半分が口の魔物は、嚙む力を少し強くした。

 魔女の村の村長は、脚も骨盤も砕かれそうな痛みに、表情を歪める。

 

「止めろ。死んだら困る」

 

 アスノの言葉で、痛みは治まる。

 ぜえぜえと苦しそうに息をする魔女の村の村長に近づき、アスノはセーラの髪を突きつける。

 

「これ、セーラの髪だよね?」

「…………」

「ここに、セーラが来たの?」

「…………」

「答えて」

「…………うぅ!?」

 

 体の半分が口の魔物が、再び嚙む力強くする。

 魔女の村の村長の全身が、みしみしと悲鳴を上げる。

 

「反神者に……教えることなどない」

「……残念だ。素直に言えば、痛くなかったのに。来て」

 

 アスノが呼びかけると、後方から一匹の魔物がやって来る。

 大きな目が一つついた丸い球体に、二本の手と一本の足が生えている。

 記憶を覗く魔物は、魔女の村の村長の頭をがっしりと掴んで、指を頭に突き刺した。

 

「ぎ……ぎゃあああああああ!?」

 

 大きな目が近づき、魔女の村の村長をじっと見る。

 その顔を。

 表情を。

 記憶を。

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