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4 ブランケッツ、集合!

 

 妖艶な美女は背中から翼を生やし、櫓よりも高い場所からランスロットたちを見下ろしていた。


「皇帝が降伏しちゃうと、もう好き勝手できないから――その前に、あたしを傷つけたオマエに痛い目を見せないと気が済まないんだよ!」


 アルスロメリアはその美貌を台無しなほど崩して、凶器とも言える笑みを浮かべて声を上げた。

 ランスロットは眉をひそめる。


「所詮、うわべを真似ただけだなアルスロメリア。今度は確実に――とどめを刺してやる」

「ニンゲンごときが、この特級眷属たる、あたしに傷を負わせるだと!? 思い上がりも大概にしな!」


 そうアルスロメリアが叫ぶと、その身体が巨大化する。

 アルスロメリアは体高20mはある、特級眷属の竜の姿へと変貌した。


「お前を半殺しにした後、お前の愛する者を喰ってその記憶と姿を奪ってやる! そしてその姿で、お前にとどめを刺してやるのさ!」


 黒地に赤い紋様を持つ竜は、ランスロットにそう言った。

 と、その言葉を聴いたミレニアが声をあげる。


「ちょっと! それって、あたしが喰われること済み? 冗談じゃないわよ!」

「前にも言ったけどね……あたしは人のものを奪うのが大好きなのさ!」


 そう言うとアルスロメリアは、いきなり櫓の上の二人に向かって黒炎を吐いた。

 ランスロットがその剣で黒炎を切り裂く。


「ミレニア、降りるぞ」

「え? えぇ?」


 驚くミレニアをよそに、ランスロットはミレニアの腰を抱くと、いきなり櫓から跳び下りた。


「ちょ――ちょっと!」

「口は閉じておけ」


 ランスロットは地面に着地する寸前に、気力を発力して衝撃を和らげる。

 ランスロットはミレニアを抱いたまま駆け出した。


「ちょっと! 自分で走るから降ろして!」

「先の角を曲がれ!」


 ミレニアを手から離して押し出すと、後方上空から迫るアルスロメリアに向けてランスロットは剣を構える。


「逃がしゃしないよ!」

「逃げるつもりはない!」


 ランスロットの姿が消える。

 と、次の瞬間には、壁を駆け登ったランスロットが、空中のアルスロメリアに斬りつけていた。


「く……やっぱり、コイツの速さは――」


 アルスロメリアが呻く中、ランスロットはその首に斬りつける。

 しかしアルスロメリアは身体をうねらせて、その首が落とされるのを防いだ。


「仕留めきれずか――!」

「こいつ! よくもあたしを傷つけたね!」


 アルスロメリアはより上空へと飛びあがり、ランスロットが攻撃できない上空から黒炎弾を吐きかけた。

 ランスロットは素早く移動して、建物の陰に隠れる。


「建物に隠れるつもりかい? じゃあ、建物ごと破壊するまでさ!」


 宣言通り、アルスロメリアが黒炎を吐く。それは街の高層住宅を破壊し、燃やしていく。建物から姿を現したランスロットを、アルスロメリアは執拗に追いかけた。


「どこまで逃げ回るつもりだい!」


 上空からアルスロメリアは、走り回るランスロットをめがけて黒炎弾を吐く。

 

「そんなに逃げ回っちゃ、付近の家は皆、ぶち壊しだねえ」


 アルスロメリアはそう愉快気に口にした。が、その後でふと気づく。


「……住民がいない――」


 そう、アルスロメリアは街を破壊する中で、一人も街の住民を見かけてなかった。


「おい! どういう事だ!? 住民は何処へ行った!?」


 ランスロットが少し立ち止まって、不敵な笑みを浮かべて見せる。


「やっと気づいたか――住民たちは二日がかりで退避したのさ。今、この帝都に残っているのは、お前たちを迎撃するための警察、軍隊、そして自分たちの街を自分たちで守ろうとする冒険者たちだ!」

「な……なんだって――」


 アルスロメリアは、空中で呆然としてそこに留まっていた。



○  ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○



 瓦礫の中から睨みつける僕を見て、魔龍大帝と化したカリヤは声をあげた。


「お前をここで始末するのも悪くない。死ね、クオン!」


 魔龍大帝が口を開けて、黒炎を吐き出そうとする。

 その時だった。


 いきなり、魔龍大帝の身体に三回閃光が走る。

 一つ目は顔を横切り、二つ目心臓を横切りに、そして最後は胴体と脚を斬り分ける形に。そして魔龍大帝は、パンと弾けて消えた。


 一瞬で三回の巨大な斬り込みをした影は、背後から僕の方へと着地してきた。

 その膝を曲げて後ろに伸ばしたて手に、巨大な――いや、巨大すぎる剣が握られている。

 

 僕の超棒剣も2m以上の長さだが、その剣は優に10mを越える長さで、刀身の幅も1mはあった。

 その刀を持った人――それはもちろん、ジュール・ノウだった。


「手ごたえがない――コピーだったのか?」


 ジュール・ノウが身体を起こしながら呟く。


「そうだよ。あれは異能の分身で、本体は別だ」

「そうか……レオンハルトは大丈夫なのか?」

「上の屋上広場にいる」


 僕がそう答えると、ジュールはいきなり壁を駆け登った。

 この人、なんでもアリだな。僕は飛行して、元の広場に戻る。


「レオナハルト、遅くなってすまない」


 ジュールはレオンハルトに駆け寄った。レオンハルトが微笑む。


「案ずるな。とりあえず、此処には死者はいない。――クオン」


 レオンハルトは、広場に着地した僕に向かって口を開く。


「カリヤの『新月の黒炎』は、魔龍王からの借り物だ。魔龍王を叩けば、カリヤの新月の黒炎は消える」

「そうすると――魔龍大帝の黒炎は、普通の黒炎になる」


 僕の言葉に、皇帝は頷いた。


「そうなれば、魔導障壁等の普通の防御策が使えるようになるだろう。ここにはジュールが来たので、もう余の心配をする必要はない。クオン、上空にいる魔龍王を叩いてきてくれ――頼む」


 皇帝は僕に向かって、頭を下げた。

 ――もったいない事……と、思ったが、この人の真摯な気持ちが判った。

 立場や地位を別にして、この人は被害を最小限に食い止めようとしてる。その証拠に、竜軍団の接近の情報が入った際には、ビジョンの広域映像を使って帝都の住民に避難を呼び掛けたのだった。


「判りました。じゃあ――行ってきます」

「クオンくん、私も行くよ!」


 エリナが声をあげる。僕は笑ってみせた。


「エリナさんは、皇帝の傍にいてください」

「いや……ゼロライズで接近して、一気に叩くべきだ。クオンくん、一緒に行かせてくれ」


 エリナは眼鏡の奥の眼で、真剣に僕に訴える。

 と、不意に別の声が響いた。


「――当然、私たちも連れて行くんだろうな?」


 声の主は、そこに瞬間移動してきたカサンドラのものだ。カサンドラは紅い髪を風になびかせ、微笑していた。


 その隣には、テレポートをしたオレンジ髪の少女ポートがいる。それだけでなく、ポートの横には白い猫耳のキャルまで一緒に連れてきていた。


「キャル! 君まで!」

「クオン――わたしたち、仲間でしょ? 一緒に戦おうよ」


 キャルが静かに、だが完全な覚悟がこもった言葉を僕に告げる。

 僕は苦笑して、皆に言った。


「判ったよ――ブランケッツ、出動だ!」

「「「おう!」」」


 僕らが一致団結の雄叫びを上げた時、上空から天を揺るがすような声が聞こえてきた。


「皇帝レオンハルト、今すぐに降伏せよ! でなければ手始めに、西区を焼く」


 僕らはその声を聴くと、お互いに顔を見合わせて頷いた。


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