4 竜鬼人カリヤ
黒い地肌に黄金の紋様を持つ竜鬼人と化したカリヤは、僕に言った。
「そして飛べるのは、お前だけじゃない」
そう言ったカリヤの背中から、黒いコウモリ型の羽が現れる。
鬼でもあり、竜でもあり――悪魔のような姿だ。
「カリヤ……」
「クオン――」
僕とカリヤは互いに睨みあった。
「「お前をここで殺す!」」
同じ事を叫んだ僕らは、互いに向けて突進していた。
カリヤの手には黒炎そのもののような剣がある。僕は白く光る振動ソードで斬りかかった。
振動ソードと黒炎剣がぶつかりあい、僕とカリヤは間近で互いを睨みあう。
「この怪物め!」
「自分は違うと思ってるのか。おめでたい奴だな!」
僕は一旦、距離をとって、再び振動ソードを斬りつけた。
しかしカリヤは上空に飛来して、僕の攻撃を躱す。
空中で僕とカリヤは、何合か剣を合わせた。振動ソードで、カリヤの黒炎剣を斬る事が出来ない。何か強力な魔力のようなものを帯びてる剣だ。
僕の飛行速度と、カリヤの飛行速度はほぼ互角。しかし急な制動などは、念力で自在に動ける僕の方に利がある。空中で何度も斬り合って、それだけの事は読み取れた。
僕は下に潜りこむと急旋回して、カリヤの背後から斬りかかる。
この速度なら、カリヤは後方を向けない。が――
向かって来る僕に、カリヤが口から黒炎を吐いた。
そんな迎撃法もあるのか! 僕は黒炎を振動ソードで叩き割った。
「カリヤッ!」
黒炎を叩き割った勢いのまま、僕はカリヤに斬りかかる。
が、斬りかかってきたのはカリヤも一緒だった。振動ソードと黒炎剣が衝突する。
「僕は怪物なんかじゃない! ただの弱虫の能なしだ!」
「てめえはいつまで、いい子ちゃんぶるんだよ。だから虫唾が走るんだ!」
カリヤが前蹴りを出す。避けてもいい――が、僕は敢えて身体を硬化させて受けた。カリヤの蹴りが、軽化している僕の身体を思い切り蹴り飛ばす。
軽くなってるから凄い勢いで後ろに飛ぶ――その瞬間を狙って、僕は振動ソードを蹴り足に向けて振った。
「ムゥッ!」
カリヤの足首から先を斬った。斬った足の方が、墜ちていく。
「くそっ、やりやがったな!」
カリヤがその金色の瞳で、憎々し気に僕を睨む。
「しかも、お前にやられた傷は再生しない……なるほど、奴らの言う通りか」
カリヤはそう呟くと、いきなり黒炎剣で、自分の脚を膝下から斬った。
と、斬った脚はそこから再生する。
「いっとくがな……再生するからって痛みがないわけじゃねえんだ。この痛み――千倍にして返してやるぜ」
「自分で自分の脚を斬ったくせに、僕のせいにするな!」
そう叫んだ僕に、カリヤの背後から何かがやってくる。
魔龍王グルジオラスの黒炎だ!
「くっ――」
あれを喰らったら、ひとたまりもない。僕は慌ててそれを回避した。
「カリヤ、遊びはそれくらいにしておけ。我々には、目的がある」
「チッ……」
カリヤは舌打ちすると、グルジオラスの頭上に戻る。
「てめえは、こいつらの相手でもしてろ」
カリヤの金色の瞳が光ると、上空から影が差した。
いきなり吐きかけられる黒炎を、僕は猛スピードで躱す。
そこに現れたのは、体高10m体長15mサイズの竜が――三体もだった。
「特級眷属が……三体?」
こいつらはアルスロメリアとかガリーモールドクラスの奴だ。なんでこんなにいるんだ?
……多分だけど、グルジオラスが魔龍王になった事で、眷属たちはより上位のクラスに進化してる。だからその数が増えてる――と、考えるべきか。
「カサンドラに連絡しないと――」
しかし黒竜たちが黒炎を吐き、尾を振り回して攻撃してくる。
このクラスの奴は知能も高く、連携攻撃してくる。
「クッ――厄介な……」
「ハッハッハッ! ざまあねえな、クオン!」
黒竜を躱してカリヤとグルジオラスの元に行こうとするが、眷属たちに邪魔されて前に行けない。どころか、むしろこっちを守るのに精いっぱいだ。
「このままじゃ――」
「俺はな、今や竜たちを従える存在なのさ! やれ!」
二匹が一斉に黒炎を吐きかけてくる。僕はそれを躱すが、その時、突風にあおられて吹き飛ばされる。――グルジオラスだ。グルジオラスが羽で突風を作った。
なんとか念力で空中に踏みとどまる。が、そこに黒竜が牙を剥いて、襲い掛かってきた。
「しまった――」
離脱できるか? いや、もう硬化でしのぐしかない!
そう決意して身体を硬化させたその時、その黒竜が眼の前で真っ二つになる。
「な――」
驚愕する僕の目の前で、黒竜の身体が割れていく。何が上に向かって飛んだ。
その太陽の光の中から急降下してくるのは――
「ジュール・ノウ!」
「大丈夫か、クオン」
ジュールが自分の黒い飛竜――ブラックレイで飛んできたのだ。
一撃で眷属を両断したジュールは、急降下し魔龍王を狙っている。
そのジュールに向けて眷属の黒竜が黒炎を放った。
ブラックレイは信じられない動きで横に動いてそれを躱す。
このままなら魔龍王にジュールが斬りつけられる。そう思った瞬間だ。
「む――どうした! ブラックレイ!」
突如、急降下をやめたブラックレイが、苦しむように空中で悶えだす。
「一体、どうしたというんだ、ブラックレイ!?」
振り落とされないように必死で捕まるジュールが、声をあげた。
「そやつは魔龍王の眷属。我に従うのは当然のこと!」
そう声をあげたのは、魔龍王グルジオラスだ。
「ギィィィ……キーッ!」
ブラックレイがひときわ大きく悶えたかと思うと、その動きが空中で止まる。
と、当然の如く、ブラックレイは空から落下していった。
「ジュール!」
追いかけるか!? けど、僕の飛行能力では、ジュールを支えきれない。
空中で同調レクチャーして、間に合うか?
「けど、考えてる場合じゃない!」
僕は落下するジュールを追いかけた。
そして僕をあざ笑うように、上空からカリヤの声がする。
「ハッハッハ! ざまあねえな! チェスってのは、キングを獲ったら勝ちなんだぜ、クオン!」
くそ、言い返してやりたいけど、落下していくジュールを追うのでそれどころじゃない!
「重気界!」
地上の手前で、ジュールが重気界を展開する。
すると、それに巻き込まれたブラックレイが重気界で制止し、それに乗っているジュールもそこで止まった。
「うぉっと!」
僕は重気界に巻き込まれる前に、Uターンして上昇する。
と、重気界の中から、ジュールが声をあげた。
「私は大丈夫だ! 魔龍王を追ってくれ!」
そう言ったジュールをよく見ると――かなりの負傷だ。
「ジュール……最初の黒炎のダメージが――」




