3 頼もしい味方
凄まじい光の爆発の後、城は三分の一以上も破壊されていた。
あちこちの塔や城壁が崩れ落ち、残った塔も壁に穴が開いている。
「す……凄まじい威力だ――」
カサンドラが声を洩らすと、スレイルが息をついて両手を膝についた。
「ふぅ……だいぶ消耗したね」
「大丈夫か、スレイル?」
「いやあ、極大魔法とか久しぶりに使っちゃったよ。威力がありすぎて、ダンジョンでは使わないからね」
スレイルはそう言うと、カサンドラに苦笑してみせた。
傍ではレガルタスがマジホで指示を出している。
「よし、一班突入! ――我々も移動するぞ」
レガルタスが先導して城に接近する。裏口まで来ると、イオラが声をあげた。
「よし、野郎ども! アタシたちも行くぞ、2班突入!」
イオラが率いる2班が爆発で混乱を極める城内部に突入していく。
それを見ながら、カサンドラが呟いた。
「先ほどの極大魔法で、敵も全滅してるのではないか?」
「そんな簡単な相手ではあるまい。少なくとも、赤目のビヤルと剛魔竜ガリーモールドは残っているだろう」
レガルタスの言葉に、カサンドラは感心して頷いた。
と、カサンドラが苦笑する。
「見事な作戦指揮だ……レガルタスがトップに立った方がいいかもしれんな」
「現場には現場の動き方があり、俺たちはそこのプロだ。だが、組織全体をまとめるには、確固たる指針を持ち、それを示して成員たちがついていくだけの人間力が必要だ。現場の事は俺に任せてもらうが……組織の方向性では、俺はあんたの指示に従う」
レガルタスの確固たる言葉を聴いて、カサンドラは気を引き締めた。
「そうか……判った。頼りにしている」
「フフ…。二拠点の同時突入は、俺では下せない判断だ。俺は、あんたはトップに立つ器だと思っている。――よし、3班突入する! 長官、あんたはその魔力の枯渇したスレイルを護衛しながら、自分の力も温存してくれ」
レガルタスの言葉を聴いて、カサンドラは少し首を傾けた。
「赤目のビヤル、剛魔竜ガリーモールド戦では、二人の力が必要だ。そこまで力を温存してくれ。そこまでは――俺とロンで敵陣を突破する。サムの班はカサンドラとスレイルの後につき、後ろからの敵を排除してくれ」
「判りました!」
後方にいたサムが声をあげた。
「よし、3班突入するぞ!」
レガルタスが声をあげると、ロンが遊眼を前に飛ばした。
そのままレガルタスを先頭に、一隊は先へ進む。
「右3、左2!」
ロンはそう声をあげると、背中から矢を取り出して弓を放った。
立て続けに放った二本の矢は、飛んでいた先でカーブして左に曲がる。
矢の後を追うように先へ進むレガルタスに、右の曲がり角からドラモグラーが3体襲い掛かって来た。
「破ッ!」
先頭にいたドラモグラーの頭部に対し、先にレガルタスの棒が当たる。
と、その頭がいきなり吹っ飛んだ。
さらに続けて襲い掛かるドラモグラーの膝を、逆側の先端で突く。膝を破壊されたドラモグラーが体勢を崩したところを、身体を回転させて側頭部を横殴りにした。
「グギッ!」
ドラモグラーが小さく呻く。が、その首の骨が折れてドラモグラーの身体が沈む。
その沈んだ身体を踏みつけて跳躍すると、レガルタスは後ろにいたドラモグラーの脳天に棒を叩きつけた。その頭部が凹み、ドラモグラーが後ろに倒れる。
一瞬の出来事で、カサンドラはレガルタスの実力に、改めて感嘆した。
「さすがだな、レガルタス。一撃でドラモグラーを倒すとは……」
「俺のは点爆気功といって、一点に気力を集中させる技法だ。再生力が強いならば、頭を潰せばいい。それも敵が来ると判っているから迎撃できる。ロンのおかげだ」
レガルタスはそう言うと、不敵な笑みをみせた。
と、カサンドラは左側の通路に、2体のドラモグラーが倒れているのを見つけた。
その頭部に、一本ずつ矢が刺さっている。
「こっちのドラモグラーは……どうしたのだ?」
確かに急所を射抜いているとはいえ、この矢の威力でドラモグラーが倒せるとは思っていなかったカサンドラは、疑問を感じた。
と、ロンがそれに答える。
「実は、ドラモグラー用に調整した特殊毒を使ってましてね。オレ、実は毒の専門家でもあるんで」
ロンは魔力で遊眼を操りながら、そう微笑してみせた。
カサンドラは舌を巻いた
(なんたる実力者ぞろいのチームだ……。これがエターナル・ウィスル。しかし、今は皆、私に力を貸してくれる部下たちだ。これほど頼もしい味方はいない)
カサンドラは、思わず微笑みを洩らした。
と、スレイルが傍から声をあげる。
「どうしたの、カサンドラ?」
「……いや、頼もしい、と思ってだな」
カサンドラは、スレイルに微笑んで見せた。
* * *
黒髪をポニーテールにしたイオラが、通路を突っ込んでいく。
「いくよ、野郎ども! 遅れをとるなよ!」
疾走するイオラの速さに、2班の班員5名は必死でついていく。
そのイオラの前に、ドラモグラーが現れた。
イオラは走りがながら、背後の腰部に十字に刺した刀を、腕を十字に交差させて鞘から抜く。両手に刀を持ったイオラは、疾走した。
その瞬間にも、ドラモグラーの爪が振りかかってくる。
が、その腕が途中から宙を舞う。刀が閃いた刹那、ドラモグラーの腕は斬り上げられていた。そしてもう一方の刀で、イオラはドラモグラーの首を切り飛ばした。
すぐに近くのドラモグラーが口から黒炎を吐く。
イオラは跳躍し、壁をもう一度蹴ってさらに上に跳んだ。
驚いたドラモグラーが空を見上げる――間もなく、身体を回転させながらイオラはドラモグラーの首を切り飛ばした。
着地した、と思った瞬間に、既にイオラは再び跳躍している。
両サイドにいた二体のドラモグラーの首を切り飛ばしながら、イオラの身体が宙を舞った。
イオラが回転して着地した後に、二体のドラモグラーの頭が床に落ちる。班員たちはイオラの剣技に、感嘆を洩らした。
「す、凄い……」
「まるで舞を見ているようだ――」
イオラは振り返り、班員たちに声をあげた。
「行くよ、野郎ども! しっかりついてきな!」
「「「は、はいっ!」」」
イオラが先頭にたってドラモグラーを撃退する。
「一体、まわした! 片付けな!」
「はいっ!」
イオラの指示の下に、班員たちは通路を駆け抜けた。
と、目的だった施術室に到着する。そこには慌てふためいているドクロのような外見の男――Dr.ロウがいた。
Dr.ロウを庇うように、ドラモグラーが襲って来るが、イオラと班員たちはそれを一瞬で撃退してしまった。
「なんたることじゃ……ドラモグラーを一瞬で倒すとは――」
「お前がDr.ロウだね?」
イオラは刀を両手に下げたまま問うた。ロウが頷く。
イオラは班員たちに声をあげた。
「お前たちは、1班の陽動に引っかかって後を追ってる奴を、背後から襲いな。1班と協力して挟み撃ちにして、殲滅するんだ。行け!」
「ハッ!」
班員たちは駆けていく。それを見送ると、イオラはロウの方を向いた。
「Dr.ロウ、ヒモグラー製造に関する資料は何処だ?」
「ヒッヒッヒ――そこの棚じゃよ。やはり、帝国はワシの技術を必要としてるのじゃろう」
イオラは冷たい眼をロウに向けた。と、次の瞬間、刀をその棚に向ける。
刀から気光弾が発射され、棚は炎上を始めた。
「な! なんてことを! 資料が燃えてしまうぞ!」
「お前の汚い研究資料なぞいらん」
「バカな! ワシの技術を持ってすれば、帝国の兵士を今の倍に強くできるのじゃぞ! ワシの技術を欲しがらぬわけはない!」
そう怒鳴るロウに、イオラは冷笑を浴びせた。
「確かにな。だが新しい帝国に……お前みたいな奴は必要ない」




