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皇女殿下の飛空艇~皇女殿下は鬼畜な艇長にしごかれています~  作者: うにおいくら
第5章 トウイの国

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対戦

「はい」

シバは真刀斎の目をまっすぐに見て言った。


「ここに来るまで散々暴れまわっておきながらか?」

と言って真刀斎は副島八雲からの紹介状に目を落とした。

どうやらそこにはこの男二人がここに着くやいなや、ここの武士たちとひと悶着あったと書いてあったようだ。


「それは……ここの人たちが我々を羽交い絞めに来たので思わず……」


「思わず? なんだ?」


「三十人ほどを放り投げてしまいました。こいつが」

とシバは最後にアキトに罪を擦り付けた。


「おい!」

とアキトがシバの脇腹に軽く肘鉄を喰らわした。


 (みにく)く罪を擦り付け合うシバとアキトを見つめながら


「簡単に放り投げられるような奴等では無かったと思うが……なんにせよ、お主たちに儂の教えは必要ではあるまい」

と真刀斎はあきれ顔で言った。既に目の前にいるこの二人の実力を真刀斎は見切っていた。異常なほど身体能力と異様な魔力量を一目見た時から気付いていた。


「何故そう思われます?」

シバは畳から顔を上げて聞いた。


「何故と儂に聞くか……」

真刀斎はそう答えると、しばらく黙って考えたのち


「二人ともついて参れ」

と言って立ち上がった。


 二人が連れて行かれたのは、この道場の稽古場だった。

多くの門下生がまだ剣術の鍛錬を行っていた。


「隼人は居るか?」

と真刀斎は門下生たちに声を掛けた。


「は、ここに」

と一人の道場生が真刀斎の前に進み出て(ひざまず)いた。


「この方々と手合わせを頼む」

横目でちらっと二人を見た隼人と呼ばれた男は


「は、心得ました」

と言って立ち上がった。


「彼はこの道場の若手では一番の使い手だ。当道場の準師範である」


「なるほど……腕試しという事ですか?」


「そういう事だ」


「分かりました」

シバは木刀を借りると稽古場の中心で待つ隼人に対面した。


そして


「お手柔らかにお願いします」

と頭を下げると隼人は提げ刀の姿勢のまま無言で立礼で返した。視線はシバから外さず睨みつけたままだった。

そしてそのまま三歩程歩み出たので、シバも同じように進み出た。


 隼人は無言のまま木刀を構えた。シバも同じように木刀を構えた。これまでロングソードや剣は使った事があったが、木刀で対峙するのは初めてだった。

 

 何故かシバは勝ち負けよりも今は相手の真似をする事で、それなりの礼だけは守ろうと考えていた。それは、こんな訳の分からない若者の相手をこの国の最高の武人と言われる人物が真摯に対応してくれた事に対する感謝の気持ちの表れでもあった。シバにしてみれば、それしか感謝の気持ちを表す方法を思いつかなかった。


 真刀斎が大きな声で


「はじめ!!」

と合図の掛け声をかけた。

そのひと声で道場内は緊張感で満たされた。


 しかしその緊張感とは裏腹にシバの構えを見た隼人は


――なんだこいつ? 構えが隙だらけじゃないか? なんでこんなウドの大木のような奴の相手を俺がしなけりゃならんのだ? 一瞬でけりをつけてやる!――


と隼人は完全にシバを舐めていた。隼人にはシバが放つ魔力のオーラが見えていなかった。


その上、シバもアキトも日本人である。このトウイの国では全く違和感のない風貌である。唯一差異を見つけるのであれば、その身長差であろう。

シバとアキトの身長はこの国の成人男子よりも十数センチは高かったが、腕に覚えがある隼人がシバとアキトをトウイの国の『ただ単にでかい奴』と思い込んでも無理からぬことだった。


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