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皇女殿下の飛空艇~皇女殿下は鬼畜な艇長にしごかれています~  作者: うにおいくら
第5章 トウイの国

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勝敗

 同じ国の素人に負けるわけにはいかない……というか負けるわけがないと思っても不思議ではない。その上シバは真刀斎と面会していた時とは違い、更に漏れ出る魔力を抑え込んでいたので隼人は全く気が付いていなかった。もっとも真刀斎であれば、そうやってシバが抑え込んでいた魔力も見破ったであろう。


 いざ隼人が仕掛けようと上段に構えた瞬間


――待てよ? 俺に指名が掛かったという事は、それなりにこいつらも腕が立つのかもしれない。でないと師匠は準師範の俺に『相手せよ』とは言わぬ。他の奴で十分だ。見た目に騙されてはならんという事か?――


と思い直した。


 流石、準師範を名乗るだけあって隼人は、真刀斎の意図に気が付いた。シバを見た目で見下していたが、考えを改めた。上段の構えから腰を落として中段の構えに変化した。魔力は見えなかったが自分の腕に慢心する『脳筋』ではなかった。


 その様子を見て真刀斎は感心したように少し表情を緩めた。


 じりじりと間合いを詰めていく隼人。それを見ながら


――木刀はああやって握るんだな――


等と素人丸出しのシバは隼人の真似をする事にした。


 それを見つめながらアキトは


――シバ、お前は時代劇が好きだと言ってなかったか? なんだそのへっぴり腰は――


と心の中で笑っていた。


 隼人はじりじりと『一足一刀の間合い』まで詰めていた。『一足一刀の間合い』とは一歩踏み込めば相手を打突し、一歩退けば相手の攻撃をかわす事が出来る間合いの事である。隼人は自分の一番得意とする間合いを創り出していた。


 シバは


――なんか間合いを詰められてないかい?――


と気がついてはいたが、それでどうすれば良いかとか何も思いつかずに、相変わらず緊張感を全く感じていない様子だった。今までこれで何とかなっていたので焦りもしていなかった。


 その瞬間、隼人がシバの喉仏を狙って突いてきた。目にもとまらぬ速さであった。

しかしシバは左斜めに下がりながらかわした。


 かわしながら


――う~ん。全然遅いぞぉ。 ハエが止まって一服しそうだ。間合いの詰め方は流石だけど踏み込みは遅いな――


と感じていた。

チート持ちのシバからすれば誰が相手でも遅く見える。

最初の一撃の突きをかわされた隼人は、そのままもう一歩踏み込んで薙ぎ払うように斬りつけた。


 余裕をかましてその刃もかわしたシバであったが、素人むき出しのぎこちない逃げ方だった。それを見た隼人は一気に攻めると決めて上段に構えた。


――ふん! かわしたか。なかなか逃げ回るのが得意なようだな。これはたまたまだろう。こいつはやはり素人だ。考え過ぎていたようだ。上段から頭をたたき割ってやる――


と隼人は木刀を振り下ろした。

シバはそれを今度はかわさずに、取り敢えず木刀で受けた。


 その瞬間隼人の木刀が木刀を握りしめるシバの右手目掛けて滑って来た。

木刀を安易に受けると滑ってそのまま握っている親指を直撃する。

木刀を持ったことがないシバは『刀には鍔があるのだが、今シバが握っている木刀にはそれがない』という事に今初めて気が付いた。


――やばい! このまま木刀が滑ってきたら、俺の親指の爪が割れる!――


とシバは悟った。瞬間、シバは木刀を握っていた左手を離し、身体を捻り隼人の渾身の一撃を流した。シバは同時に右手の力も緩めた。木刀はそのままシバの右手を軸に、隼人の木刀の威力を借りて一回転するように回った。

まるでバトンを回すように木刀は手の平の上で弧を描いた。シバは木刀を両手で握り直すと、勢い余って振り下ろした木刀を戻すのが遅れた隼人の肩口に木刀の剣先を軽く当てた。


 一瞬でけりがついた。


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