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皇女殿下の飛空艇~皇女殿下は鬼畜な艇長にしごかれています~  作者: うにおいくら
第5章 トウイの国

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道場

 古びた平屋の建物の玄関の前にシバとアキトとソフィアが立っていた。

玄関の柱に『渾深館(こんしんかん)道場』と書かれた看板が誇らしげに掲げられていた。


「頼もう! 師匠!! 居るか!」

とその広い玄関口でシバが叫んだ!


 暫くしてダダダダダっと騒がしい足音が聞こえたかと思うと、玄関に顔を出したのはクロードと同じぐらいの歳の頃の少年だった。

 シバを見るなり


「わぁ! シバさん!!」

とその少年は驚きながらも満面の笑みを浮かべてシバに抱き着いた。


「弥助かぁ……元気だったか?」

とシバはその少年の頭を撫でながら懐かしそうな表情を見せた。


「うん! 勿論元気だったよ。それよりも今日はどうした? いや、何故今まで来なかった? 師匠と喧嘩でもしたか? アキトさんも元気だったか?」

と弥助と呼ばれた少年はシバに質問を浴びせた。


「待て、待て。質問は一つにしろ」

とシバは笑いながら答えた。


「こら! 弥助! 騒がしいぞ」

と顔を出したのは白い顎髭をたくわえた初老の男だった。


 その男の顔を見た瞬間、シバは


「ご無沙汰しております。勘兵衛先生!」

と頭を下げた。同時にアキトも同じように頭を下げた。それにつられてソフィアも慌てて、同じように頭を下げた。


 シバ達の存在に気が付くと先生と呼ばれたその初老の男は目を細めて


「うむ。よく帰って来た。まあ、上がれ」

という言葉を残して奥へと入っていった。


 この人、この道場主であり渾深流(こんしんりゅう)の宗家でもある榊”勘兵衛”真刀斎である。

この通称、勘兵衛と呼ばれる榊真刀斎であるが、このトウイの国において剣術で彼に勝る武人は誰一人存在しなかった。『武と力』を尊ぶこの国において無敵という事は、国民からも尊敬と信頼を集める人であるという事だった。


 奥の間に通されたシバ達三人は、床の間を背にして胡坐をかいて座っている榊真刀斎と対面するように腰を下ろした。


「ご無沙汰しております。師匠」

とまたシバは畳に手を突き再び挨拶をした。アキトとソフィアもまた同じように手を突き頭を下げた。


「うむ。息災そうでなによりじゃ。今日はどうした?」


「はい。ブリアイル王国の大使をこの国まで運んでまいりました」

とシバは顔を上げて言った。


「なる程。商売も上手くいっているという事か。良き哉、良き哉」

と言って真刀斎は笑った。


「はい。おかげ様でアキトと細々と運送屋稼業で糊口をしのいでおります」

とシバが答えると真刀斎は


「ほほぉ……『糊口を凌ぐ』とはのぉ……お主も謙遜という言葉を覚えたようじゃのぉ」

とまた楽しそうに笑った。


「いや……」

とシバは頭を掻いて困惑した表情を見せたが、どこか嬉しそうに見えた。


「ところで、そちらのご令嬢は?」

と挨拶もそこそこに、真刀斎がシバに問いただすように険しい視線を向けた。もう笑っていなかった。


「もしかして……分かりますか? 先生」

シバの表情からも笑顔が消えた。


「もしかして、お主と同じところからやって来たのか?」

真刀斎は目を細めてソフィアを見つめた。ソフィアはその眼光の鋭さに思わず目を伏せた。


「そう思われますか?」

とシバは真刀斎の表情を窺うように聞いた。


「うむ。どう見えてもこの世界の人間にしか見えんが……それも西側諸国の王族であろう……違うか?」

真刀斎はソフィアから視線を外すことなく言った。


「いえ。違いません。彼女はモルタリア帝国の皇女です」

シバははっきりとした口調で答えた。

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