ソフィアとの会話
「それにしてもなんだか地味な館ですね。昔話に出てくる日本の原風景みたいな感じですね」
とソフィアはシバと同じように屋敷を見下ろしながら、シバの耳元で小声で感想を漏らした。ソフィアが異世界からの転生者である事はシバとアキトしか知らない事実であったので、流石に大きな声で前世の知識を話題にする事はばかられた。
ちなみに彼女は『国主の館』という限りは、石垣の上にそびえる姫路城のような白亜の城を想像していた。
「そうだなぁ……言ってみれば鎌倉時代辺りの日本って感じかな」
とシバも小声で答えた。
「そうなんですね」
とソフィアはシバの答えに納得した。
「うん。僕たちも初めてここに来た時は驚いたよ。懐かしさも感じたし……ま、ここはそういう和風の国だと思ってもらって間違いはないよ。ま、異世界モノってこんなもんでしょ。もう何があっても驚かないよ」
とシバも目を細めて見下ろしながら笑った。
「そうですね。ところで一つ質問して良いですか?」
とソフィアは声をひそめてシバに改めて問いかけた。
「なに?」
とシバもソフィアに顔を近づけて聞き返した。
「この飛空艇には『荷電粒子ビーム砲』とかは積んでいないのですか?」
とソフィアは真顔でシバの耳元で訊いた。
「それって例のファイナルがファンタジーする飛空艇に積んである奴だよね」
とシバも真顔で訊き返した。
「そうです。主動力機関は『反応型圧縮タービン』です」
「よく覚えているね」
とシバは感心したように小声で言った。
「やり込みましたから……」
とソフィアは答えながら
――シバさんもやり込んだ口でしょう。この話がすぐに理解できるんだから――
と思っていた。
「残念ながらそんな凄い武器もエンジンも積んでいないよ」
とシバは申し訳なさそうに答えた。ソフィアの想像通りシバもやり込んだ口であった。勿論アキトも同じ穴の貉である。
それを聞いて
「そうなんですか。それは本当に残念」
とソフィアは笑いながら残念がっていた。
「艇長。予定通り館の東門前の『桐の馬場』に着陸しますがよろしいか?」
とショーンが副操縦席からシバに確認した。
「ああ、そうだな。あの馬場に降りて良いよ」
とシバはうなずいて指示を下した。
他国の人間がこの国へ訪れる時は、まずここで検閲を受ける。ただ他国との交易を積極的に行う国ではないので訪れる人も少なかったが……。
飛空艇ミカサは静かに『桐の馬場』と呼ばれる広場に着陸した。
ミカサの周りを鎌倉武士のような恰好をした男たちが遠巻きに取り囲むように集まってきた。
直垂のような装束を身にまとい、腰には日本刀を差していたが、全体的にはどこか洋風の雰囲気も漂っていた。よく見れば和洋折衷のいで立ちと言えた。
トニーがカーゴドアの扉を勢いよく開き、そのまま地面に降り立った。それに続いてアキトが降り、その後ブリアイル王国の人間が降り立った。
すると人だかりの囲みが一部解けて、そこからいかにもお偉いさん然とした武士風の男が、会釈をする武士たちを尻目に飛空艇に歩み寄って来た。




