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皇女殿下の飛空艇~皇女殿下は鬼畜な艇長にしごかれています~  作者: うにおいくら
第4章 要人警護

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国防情報総局

 ソフィアは今回の飛行が始まってから、少佐達には見つからないように伯爵たちの接客を任されていた。勿論マリアとコーネルもソフィアのサポートとして同じ任務に就いていた。


「何故、大将閣下がここに?」

と驚きの表情でサンダース少佐が慌てて敬礼しながら聞いた。


「なに、シバに『欲しい手土産は自分で選べ』と言われたのでな。わしも一緒に行く事にした。それにしてもここに『東の鼠』はスミス少佐だったか……」

と軽く答礼で答えながらカクセール伯爵は視線をスミス少佐に移した。ラシール帝国のスパイはブリアイル王国においては『東の鼠』と呼ばれていた。

 

 その時、伯爵の後ろからもう一人の軍人が進み出てスミス少佐の前に立った。

そして冷めた眼つきでスミス少佐を見下ろしながら


「立ってもらおうか」

と抑揚のない声で命じた。

スミス少佐はその軍人の顔を虚ろな瞳で見上げてから力なく立ち上がった。


「サンダース少佐、紹介しておこう。彼は国防情報総局ディープ・スペンサー大佐だ」

と伯爵は紹介した。


「は、サンダース少佐であります」

と改めて少佐は敬礼をし直した。彼ぐらいの階級であっても情報総局や国家保安安全局の人間と会う事は滅多にない。それ程謎のベールに包まれた組織であった。今、少佐の前に立っているスペンサー大佐はその部門の責任者であった。


「うむ。今回は御苦労であった」

と大佐はひとこと少佐の労をねぎらった。

少佐は緊張した表情で


「はっ! ありがとうございます」

と敬礼したまま応えた。


大佐は頷くと視線をスミス少佐に向け


「それでは行こうか……少佐を連れて行け」

と命じるとスミス少佐を一緒に入室してきた部下に引き渡した。


 伯爵はシバに向き直ると


「今回の件は感謝する。流石だ。よくぞスパイをあぶりだしてくれた」

と謝意を表した。


「陸軍から二人の駐在武官と言われた時に、何かあるなと思いましたけどね。多分どちらかが問題ありか、スパイなんだろうと予測はしていましたけどね」

とシバはわざと疲れた様な表情を見せて言った。


 通常領事館の駐在武官は陸軍と空軍あるいは海軍の二人セットで派遣される。陸軍だけというのは異例である。わざわざ伯爵が『陸軍から二人だ』と念押しした意味を、シバとアキトは正確に読み取っていた。


「まさかこのタイミングで化けの皮を剥がすとは思いませんでしたけどね。トウイに着くまでは行動を起こさないだろうと思っていたぐらいでしたから」


「あの戦闘がよほど衝撃だったのだろう」

とカクセール伯爵は窓の外に視線を移しながら言った。噂には聞いていたが、実のところ伯爵も飛空艇ミカサの戦闘を見るのはこれが初めてだった。彼にとってもこの戦果は衝撃であった。


――こんな(ふね)に戦いを挑むなんて狂気の沙汰だな――


と伯爵は自らの国の艦隊がこの飛空艇と戦った事を思い出していた。


「そうだ、シバは彼に会うのは初めてだったな」

そう言うとカクセール伯爵は大佐をシバに紹介した。


「初めまして。お噂はかねがねうかがっております。今回はお手数をおかけしました」

と大佐は軽く会釈をした。軍人にしては珍しく丁寧な挨拶だった。


「いえいえ。もう少し時間が掛かるかと思いましたが、案外、スミス少佐も辛抱が足りなかったですね」

とシバは笑いながら言った。


「それにしても凄い威力ですね、この戦闘艦は……」

と心底感心したように大佐は言った。


「いえ。これは飛空艇です。戦艦ではありません」

とシバは一気に表情を硬くして否定した。


「あ、それは失礼」

と大佐は慌てて頭を下げた。


「いえ。判って頂ければ結構です。ただこの艇はそれなりに武装はしていますが、たまたま今回は相手が弱かったようです。所詮は空賊でしたから」

とシバは再び笑顔を見せた。ちゃんと受け答えをしてくれたこの大佐をシバは好ましく思った。

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