ドヴァリン
*
「……こうやって、この試作艦は正式に我々の艇となったのだよ」
とオージーは語り終えた。
「そうなんだ。ところで『一緒にその試作艦を盗み出した時の仲間』って?」
とクロードが聞いた。
「それはこいつさ」
とオージーはドヴァリンに視線を向けた。
冒険者たちはその視線の先に、満面の笑みを浮かべているドヴァリンの顔を見た。
「艇長達が来た時、俺はガリア鉱石を手に入れようとドワーフの仲間のもとへ行っていた。だからその場には居なかったんだが、そのすぐ後に帰って来て艇長達にその話を聞かされた時は飛び上がったね。『これでやっとこの艦を堂々とこの空に飛ばせる』ってね」
とドヴァリンはしわがれた声であったが、本当に嬉しそうに言った。
「ドヴァリンも造船官だったの?」
とクロードが改めて聞いた。
「そうだ。あの貴重で高価な素材を細部まで調整して組み合わせる技で、ドワーフに勝る者はこの世に存在しない。あの公国の造船官の中でドヴァリンほどの腕を持った技官は他には居なかった。儂とドヴァリンはこの艦が野ざらしのまま消えて行くのを黙って見ていられなかったのだ」
とドヴァリンに代わってオージーが答えた。
「その後は早かったな。フェリーが大公にこの艦を正式に譲り受け、無事に俺たちのモノになった。で、初飛行に成功した時にアキトがこの艇の名を『バルバロッサ』から『ミカサ』に変えたんだよ」
とここまで黙ってオージーの話を聞いていたシバが言った。
「正式に手に入れてからすぐにこの艇を飛ばす事が出来たのですか?」
とフローラが聞いた。彼女は現在このミカサに乗って約四年である。しかしその当時の話を聞いたのは、これが初めてだった。
「いや……実際に飛ばすのは、それから少し時間が掛かった。まずガリア鉱石を手に入れなければこの艇は飛ばない。そしてそれなりの整備もしなくてはならなかった。しばらく飛んでいなかったからな」
とオージーが説明した。
「そうなんだ」
と少し残念そうにフローラは言った。彼女はここで一気に、この飛空艇ミカサの浮上の話を聞きたかったようだった。
「出会ってからしばらくは艇長たちも一緒にこの艇の中で暮らしていたが、丁度ドヴァリンが戻って来たタイミングで四人はオリバイエ公国へと旅立って行った。儂とドヴァリンはそこから艇長たちが置いていってくれた素材で、出来るところからこの艇の整備を始めたという訳だ」
オージーは記憶を辿るように一呼吸おいてから話を続けた。
「殿下がベニート大公に試作艦の譲渡を認めさせるのはそれからすぐだった。拍子抜けするほど話は進んで、大公陛下は快諾してくれたようだった。ついでに殿下は儂とドヴァリンの無罪放免の許しも得てくれた。これで儂らも自由に公国に足を踏み入れる事が出来るようになった。本当にありがたかった」
とオージーは明るい表情で語った。
二人にとってフレデリックは恩人であった。それをこの二人はいつまでも忘れる事は無かった。
ちなみにフレデリックは今でもシバの仲間内からは『殿下』と呼ばれていて、近頃やっと『陛下』と呼んでもらえるようになったが、それは尊称と言うより親しみを込めたあだ名のような軽い呼ばれ方になっていた。




