我々の艇
「本当にこの艦が飛ばせるのか……」
とオージーは感動したように身体を震わせながらシバに聞いた。
「ああ。あれが言うのだから間違いないだろう。しかし問題が一つある」
とシバは冷静に答えた。
「なんだ?」
とオージーは目を見開き聞き返した。
「あんたも我々の仲間になるという事だ。でないとこの試作艦は我々のモノになるだけだ」
とシバはオージーに言った。彼は既にフレデリックがオージーが一緒に加わる事を前提に、話を勝手に進めている事に気が付いていた。
「なんだそんな事か……それなら何の問題もない。この艦を飛ばす事が出来るのであれば俺は何でもする」
とオージーは事もなげに即答で快諾した。
「そうか。では決まりだ。これからはあんたも俺たちの仲間だ。よろしく頼む」
とシバはオージーに握手を求めた。
オージーはその手を両手で握りしめて
「ありがとう。この艦の事は全て俺に任せてくれ」
と力強く握り返しながら言った。
今ここに五人目の仲間が増えた。
結局、四人の冒険者はオージーの厚意により、この試作艦に泊まる事になった。
翌朝、シバとアキトは改めて森の中に佇むこの試作艦を見た。
「この時代にリフティングボディに前進翼って……あのオージーっていうオッサン凄いな」
とずんぐりとした艦体を見ながらシバは声を上げた。彼はそのこの世界に於いて斬新なデザインに本気で驚いていた。
「ああ、昨日は分からなかったが、この時代の設計思想ではないよな。あのオッサンこそ転移者でないのか?」
とアキトも同意見だった。
「本当にそう疑いたくなるよな」
とシバは改めて艦体を見返して感心していた。ちなみにオージーは転移者でも転生者でも無かった。
「どうだ。俺がこの艦に乗りたくなった理由が分かっただろう?」
と二人の背後からフレデリックが自慢げに声を掛けた。
「なんで、あんたがドヤ顔してんだ?」
とシバは言ったが、アキトは
「うん、これは乗りたくなるな。実寸だったらこの倍ぐらいの大きさになるのか?」
と聞いた。
「そうだな。戦艦というのであれば、全長はこの倍近くにはなるだろうな」
とフレデリックが答えたが、その言葉に付け足すように
「いや、そこまで大きくはならん」
と声がした。
三人が振り向くとそこにはオージーが立っていた。
「気に入って貰えたようで安心したぞい」
とオージーは笑っていた。
「そうなの?」
とシバが聞き返すと、
「うむ。まずはこの艦は上陸奇襲戦を想定しておったからな。しかし艦隊戦の中で白兵戦に持ち込むのであれば、小回りの利くこれぐらいの大きさの方が良いかもしれん。ただ、そうなると武装に少し手を加えなければならんじゃろうな」
とオージーも試作艦に目をやりながら言った。
シバも同じように見つめながら
「この艦は戦艦よりも、もっと平和な最強な艦にしたいな」
と呟いた。
「平和な最強艦?」
とアキトが首を傾げながら聞いた。
「そうだ。この大空を戦いではなく、自由に飛び回る事が出来る艇だ。しかし、売られた喧嘩は幾らでも買えるような最強の艇だ」
とシバは目の前に横たわる試作艦を見つめながら言った。
「それも面白いかもな」
とアキトはシバの意見に同意した。
オージーも黙って頷いていた。




