飛ばしたい
その上、勝手に軍から逃げ出している。これは脱走罪に値する。戦地に在っては敵前逃亡で、縛り首にされてもおかしくはない。勿論、そんな者と一緒に居れば、皇族と言えどもただでは済まないであろう。
「そんな事は言われなくても分かっているさ。本当にお前は男のロマンが分からん奴だな」
とシバは納得がいかないようだった。
「バカな事を言ってるんじゃないよ。飛ばしたい気持ちは分かるよ。私だって『この艦を飛ばしてみたい』というあんた達の気持ちも分からなくもないさ。でもその前に片付けなければならない問題っていうのもあるだろう?」
とメリッサは、シバの意見には同意しながらも冷静であった。
「そうだな。メリッサの言う通りだ。片付けなければならない問題がある」
とフレデリックがシバとメリッサの会話に割って入って来た。
「……という事で、俺は今から首都に行って、この艦を叔父に貰った事にしよう。そうすればオージー元大監の罪も消える」
とフレデリックは冷静に言った。まるで散歩のついでに、親戚の叔父さんからお小遣いでも貰うかのように軽く言ってのけた。
「叔父……って?」
と恐る恐る聞くオージーに
「ベニート大公である」
とフレデリックは力強く言った。
その様子を見てシバが
「ほぉ……俺、初めてフェリーが神々しく見えたよ」
とアキトに言った。
「いや、俺も同じ事を思っていた。流石、皇子だと改めて認識したよ」
とアキトも激しく同意していた。
それを横目にメリッサは何も言わなかったが、彼女も同じように思っていた。
――本当にこいつは皇子だったんだ――
とメリッサはまだ疑っていたようだった。
「そんな事が……」
とオージーは声を詰まらせた。
「出来る。怖いもの知らずのフェリーなら何でもできる!」
とシバはオージーに力強く言い切った。
「俺もこの戦艦に初めて乗った時に『ああ、こんな戦艦が帝国にも有ったらなぁ』と思っていた。正規採用になった暁には絶対に我が帝国で買うと決めていた。しかし一向に最終運用試験が終わったという噂さえも聞こえてこずに、ただ不採用の連絡が来ただけだった。それが今、目の前にある」
とフレデリックは熱い感情をむき出しに語り出した。
「シバ! この艦を我々の艦にしないか!?」
とフレデリックは意気込んで聞いた。
「したいな」
「アキトはどうだ?」
「勿論だ」
「なら、決まりだな」
「おい! フェリー!」
とメリッサが憤ったように口を挟んだ。
「なんだ? メリッサ? 反対か?」
「私の意見も聞け!! 無視するな!」
「お前は男のロマンをバカにしていたじゃないか!」
とフレデリックは憤ったように言った。
「しとらん。私は常識論を述べただけだ!」
「では?」
「勿論、大いに賛成である」
とメリッサも笑顔で同意した。
「よし。満場一致で決まりだな」
とフレデリックは四人の顔を見渡して満足そうに言った。
この時点で『ゲルオン王国に行く』という当初の目的を、完全に忘れ果てている四人であった。




