理由
「実は……廃棄が決まったこの艦を、仲間と一緒に盗み出してここに隠したのです」
とオージーは申し訳なさそうな表情を浮かべて言った。
「へぇ? オジサンやるねぇ」
とシバは心の底から感心したように言った。意外にもこの一言でシバはこの男に好感を抱いた。
「それで職も辞したと?」
とアキトが聞いた。
「その通り……というか勝手に辞めた。この艦を手に入れる事さえできたら他に何も惜しい物は無かった。この艦は儂の全てだ。世界最高の航空戦艦として自信作だった。しかし採用されずに野晒しとなっていた……」
とオージーは悔しそうに答えた。
「何故、採用されなかった?」
とアキトが再び聞いた。
「一番の理由は一艦当たりの費用が掛かり過ぎるのが問題だったのだ」
「この艦はこの世で初めての『強襲揚陸艦』として設計された戦艦だ。だから今までの航空戦艦とは全く違う設計思想の軍艦だ。艦内格納庫に艦上攻撃機を格納し、兵員を輸送するための艦だった。その為、必要になるのは大砲よりも、強力な防御力を高める為の鋼材だった」
「例えばどんな鋼材を使うの?」
と今度はシバが尋ねた。
「オリハルコン、ミスリル、アダマンタイトそれに魔晶石も……それら全てをふんだんに使う」
「ファンタジー素材のオンパレードだなぁ」
とシバとアキトは顔を見合わせてため息をついた。彼らはこの素材がいくらするのかは正確には分からなかったが、相当高価なものである事は過去のアニメやゲームの知識からおおよその見当はついた。
「それが軍の上層部に却下された理由なのか?」
とフレデリックが聞いた。
「その通りです。故に試作艦も当初の計画よりも小さめに作らざるを得ませんでした。それとそもそも『強襲揚陸艦』というのが、上層部には理解されませんでした」
――予算が無いと言われて、泣く泣くこの大きさにした。せめて計画通りの大きさで建造したかった――
とオージーは内心悔しくて仕方なかった。
「そうだろうな。戦いはまずは艦隊戦から始まるからな。砲撃でどれだけ相手の戦艦を撃沈できるかだからな。それにはまずは戦艦の数と砲門数が問われる」
「それは私も重々心得ております。しかし、この『強襲揚陸艦』は敵艦隊に突入する事も想定しております。そのまま白兵戦へと持ち込めます。敵旗艦に肉薄できればそのまま突入して制圧します。後、戦地に兵員と武器を送り込めます」
「敵艦に『強襲揚陸艦』ごと突入してからの白兵戦か……まるで空賊の戦い方だな」
「軍の上層部連中にもそう言われました」
「だろうな……戦い方に関する発想が全く違う訳か……だから試作艦以後、この形の戦艦を見なかったのか……それに一艦だけならまだしも、あんな高価な素材をふんだんに使ったのでは、『大量生産したらコストに合わない』と間違いなく言われるな……というか不憫だな」
とフレデリックは呟いた。
事実我々のこの世界でも『強襲揚陸艦』の発想が生まれたのは、第二次世界大戦時から後の話である。この世界のこの時代では、まだ早すぎた発想とも言えた。フレデリックはそれが、理解できたので思わず『不憫だな』と呟いてしまった。




