試作艦バルバロッサ
「なんだと?!」
とオージーは眉間に皺を寄せて驚いたように聞き返した。
「俺が乗艦したのは二年ほど前だったか……この艦は試作壱号艦で、だから大きさも本来よりも小さく作られていた……だったかな? それとコードネームが……え~と何だったかな……『バルバロッサ』だったような気がする」
とフレデリックは過去の記憶を辿りながら聞いた。
「そうだ……その通りだ……この艦に乗ったって……あんたら一体何者だ?」
とオージーはこの四人に興味を持ったようだ。
「あ、乗っていたのはこの人だけ。そしてこの人はモルタリア帝国の第二皇子だよ」
とシバが言った。
「なんだとぉ?」
とオージーは更に驚いたように聞き返した。そしてフレデリックの顔を食い入るように見た。
――確かにあの時、モルタリア帝国の皇族が乗艦していた――
とオージーは記憶を辿って思い出していた。
「俺は叔父に招待されて、兄上と一緒にこれに乗艦したんだよ」
「第二皇子だと……そんなお方がなんでこんなところで、冒険者を名乗っているんだ?」
とオージーは聞いた。この世界の常識では、皇族が冒険者になったりはしない。オージーが驚くのは当たり前だった。
「名乗っているのではない。本当にこの変わり者の皇子は冒険者になったんだよ」
とシバがオージーに教えた。
「なんと……そんな事があるのか……」
とオージーは絶句し考え込んだ。さっきまでこの不審者たちに警戒していたが、全くの予想外の展開に彼の理解が追い付いていなかった。
暫くしてオージーが落ち着いたのを見計らって
「この試作艦は廃棄されたんじゃなかったのか?」
とフレデリックが聞いた。
「その通りです」
とオージーは立ち上がり、さっきまでとは打って変わって言葉遣いが丁寧になった。
「この艦は試作壱号艦として建造されましたが、結局採用されずに終わり……そして廃棄されました」
「うむ、それは俺も知っている……その廃棄された艦が何故ここにある?」
「私はこの艦の設計に携わった者です。基本設計主任の元で、この艦の設計思想をまとめたのは私です」
「ほほぉ。つまり君はオリバイエ公国軍政部の造船官だったという事か?」
とフレデリックは聞き返した。
「はい。その通りです。殿下」
とオージーは背筋を伸ばして答えた。その姿は元軍人である事を彷彿とさせるものでもあった。
「殿下は止めてくれないか。今は単なる冒険者だ。フェリーと呼んでもらって良い。ところで君の名は?」
とフレデリックが笑顔を見せて名前を聞いた。
しかしそう言われたから『はい、そうですか』と言える訳もなくオージは困惑した表情でシバ達を見た。
「そうそう。俺たちも『殿下』なんて呼んでないから大丈夫だよ」
とシバが笑って助け舟を出した。
「そうですか……私は元造船大監オージー・グッテンベルクと申します」
と観念したように名乗って頭を下げた。
「うむ。技官だったのか……それも将校か……」
とフレデリックは意外そうに呟いた。
オージーが名乗った『大監』とは、造船官という技官の職制の一種だが、軍隊では大佐級の役職に相当する高級将校だった。
「で、なんで造船官だったあんたが、こんなところで住んでいるんだい?」
と今度はシバが聞いた。




