様子を窺う
「あれだな」
とシバは指をさした。陽も落ちかけてはいたが、その指の先には大きな飛空艇のような塊が横たわっている姿が見てとれた。
「あれは戦艦かぁ?」
とシバはフレデリックに聞いた。シバはこの一年間でモルタリア帝国や他の国の航空戦艦を何度か見てきたが、それほどじっくりと見ていた訳ではなかった。
「いや? どうだろ? 戦艦のような気もするが……それにしてはちょっと小さいな」
とフレデリックは曖昧な返答しかできなかった。
今目の前にあるそれは、彼の知る航空戦艦よりは、明らかに少し小さめであった。その為、フレデリック自身も答えたくても答えようがなく断言できなかった。
「確かに……それになんだかくたびれた艦だな。墜落でもしたか?」
とシバが指摘した通り、二人にはもうこの地にこの戦艦が、長らくこの場に放置されていたように薄汚れて見えていた。
「どうだろう? まさか撃墜された戦艦とか?」
「いや。落ちたというよりは着陸して隠したという感じだな」
「そうだな。艦体に損傷はないみたいだな」
とアキトもシバと同じ意見だった。
そんな会話を続けながらシバとアキトは、その戦艦らしきものに近寄って行った。
そして二人は少し離れたところでいったん立ち止まり
「戦艦ぽいが……やはり、戦艦にしては小さいな。何かの飛空艇であるのは間違いないようだが……アキトはどう思う?」
「なんだかこの世界の戦艦とは違う気がするが……」
「そうだな。形は航空戦艦ぽいが、どうだろう? 俺たちの知っているこの世界の航空戦艦は、単なる飛行船みたいな形だからな」
「そうだな……」
と会話を続けていた。
そこにフレデリックとメリッサも追いついた。
「どうだ? フレデリック?」
とシバは聞いた。
「なんだろうな? 航空戦艦のようにもみえるが、暗がりでよく分からん」
とフレデリックは首を傾げて言った。薄暮の時間も過ぎ、周りは夕やみに包まれ始めていた。彼にもこの塊が何であるか分からないようである。
この時代の航空戦艦と言えば、我々現代人の感覚では飛行船を彷彿させる形であった。全長は100~160mが主流だった。その船体の真ん中から後ろ寄りにそれほど高くない艦橋のようなものがあり、更にその船体の両舷に大砲がずらりと並んで突き出している姿を想像してくれれば、理解はほぼ間違いないと思われる。
ちなみにこの異世界では船舶よりも飛空艇の方が発達していた。
その原因は魔獣にあった。この世界の海には多くの魔獣が住み、海上で船舶がそれらに襲われる事が多々あったからである。空よりも海の方が圧倒的に魔獣が多く、そして巨大なものが多かった。その為海賊よりも魔獣での被害の方が恐れられていた。
加工技術の進歩により飛行石を利用する事が出来るようになり、より安全で快適に移動が出来る飛空艇に依存するのは自然の流れと言えた。
シバ達四人は意を決して恐る恐るその塊に近づいて行った。
窓らしきものから光が漏れ、その戦艦のような塊の前で焚火の灯りが見えた。
「誰か居るな」
とシバが歩みを止めて呟いた。それに応えるようにアキトが
「うむ。居るな……どうする?」
と聞いた。
「ここまで来て引き返すわけにもいかんだろう?」
とシバは焚火から目を逸らさずに答えた。
「だな」
とアキトは頷いた。
意を決したようにシバが歩み始めた。




