別れ
フレデリックがモルタリア帝国に帰国してからしばらく経って、シバ達もトウイの国を離れる日がやってきた。
ソフィアは魔導書に記載された魔法を、姫巫女の指導により無事に自分のモノとする事が出来た。勿論今、そのソフィアの手元にはその魔導書がある。
今のソフィアは言ってみれば一か八かで、『シバとアキトと対等に戦えるかもしれない可能性』を手に入れた唯一の人類とも言えた。
乗組員が全て乗艦した後もシバとアキトは、まだ地上でスサノ帝や真刀斎や重鎮達と言葉を交わしていた。
「今度はいつ来る予定だ?」
とスサノ帝は聞いた。
「さぁ? 仕事次第ですねえ……もっともこの国はブリアイル王国だけでなく、モルタリア帝国とも国交を樹立しましたからねぇ……これからは来ることが増えるような気がしますね」
とシバは答えた。
「うむ。これからは遠慮なく頻繁に来るが良い。その時は手土産の酒は忘れぬようにな」
とスサノ帝は笑って言った。
この帝は西側諸国から入る酒が大変気に入ったようで、それが今回の条約締結の目的ではないかとシバ達は陰口を叩いていた。
「分かっていますよ。今度はモルタリア産のワインを持ってきますよ」
とシバは笑って応えた。シバとアキトにとって、この『トウイの国』は故郷のような気がしていた。今回の訪問で特にその気持ちが強くなっていた。
「うむ。それは愉しみである」
とスサノ帝は満面の笑みを見せた。
「フェリーも喜んで帰りましたしね。酒も沢山持って帰ったようですし、それは大丈夫でしょう」
とシバは約束した。
「そうだったな」
とスサノ帝は笑いながらうなずいた。
「それでは名残り惜しくはありますが、この辺りでお暇致しますか……」
とアキトが別れを切り出した。
「うむ。そうじゃな。では達者でな」
とスサノ帝が別れを告げた。
「はい。帝も」
とシバとアキトは頭を下げると、ミカサに向かった。乗艦する前にシバとアキトは、真刀斎と隼人たち道場生たちに軽く会釈をしてからミカサに乗り込んでいった。
アキトがスライドドアを閉めた。そして伝声管を開き操縦室へ
「離陸しろ」
と命令した。飛空艇ミカサはゆっくりと浮上を始めた。
シバとアキトはスライドドアの窓から離れずに別れを惜しんでいた。
スサノ帝と重鎮たちや見送りの人々はミカサを見上げながら手を振って笑顔で見送った。
地上が遠くなり、スサノ帝たちの姿が小さくなった。
アキトはスライドドアから離れると
「あっという間だったな」
とシバに声を掛けた。
名残惜しそうに窓から地上を見ていたシバは、
「ああ」
と答えるとやっと窓から離れた。
二人は操縦室に戻る前に食堂に顔を出した。
そこでオージーとドヴァリンが向かい合って座っていた。その周りを取り囲むように冒険者チームのメンバーが座って談笑していた。
「おや? 珍しい組み合わせだな?」
とシバが意外そうな表情で声を掛けた。
「え? そう?」
とクロードが振り向いて応えた。
「何の話で盛り上がっているんだい?」
とアキトが興味深そうに聞いた。
「ドヴァリンとオージーにこの艇を手に入れた経緯を聞いていたの」
とクロードは楽しそうな表情を見せて答えた。




