ソフィアの気持ち
別れ際にシバがフレデリックの耳元で
「良かったな。ソフィアが士官学校に進学すると決めて」
と小声で言った。
「本当にな。スサノ帝が説得してくれたお陰だ」
とフレデリックは心の底から安堵したような表情を見せた。
「ま、結果オーライだな」
とシバは笑った。
「どういう事だ?」
とフレデリックは怪訝な表情を浮かべて聞き返した。
「何でもない。ソフィアが親思いの良い子だってことだ。それよりも、もう少しここにいたらソフィアを連れて帰るから首を長くして待っていることだな」
とシバは笑って言った。ソフィアが士官学校へ戻ると決めたのは、確かにスサノ帝の言葉によるものだった。しかしそれはソフィアの皇女としての自覚と父フレデリックへの思いがあっての事だ……とシバは思っていた。この別れ際に敢えてその話をするのは、ふさわしくないとシバは思って口をつぐんだ。
「ああ。先に帰って待っているさ」
「それよりも、もう娘と話をしなくても良いのか?」
とシバは聞いた。
「この元気な顔を見れただけで十分だ。後は頼んだぞシバ! アキト! ソフィアの事は任せたからな」
とフレデリックはソフィアに笑顔を見せて乗艦していった。
モルタリア帝国の艦隊はトウイの国の重鎮や住民に見送られながら、空へと飛び立っていった。
去って行くその艦隊を見上げながら、シバは隣で艦隊を見上げていたソフィアに
「ソフィアの修業が終わったら、俺たちも戻る事になるな」
と声を掛けた。
「はい。そうですね。まだまだ勘兵衛先生からも姫巫女様からも学ぶ事はありますが、いつまでもここに居る訳にもいきませんからね」
とソフィアもそれは覚悟していたようであった。
「それに士官学校進学の準備もしなくてはならないからね」
とアキトもソフィアに声を掛けた。
「はい。これからが大変ですね」
とソフィアは応えると二人に向き直って
「本当に我儘ばかり言ってすみません」
と頭を下げた。
「そんな事はないさ」
とシバは笑顔で応えた。
隣でアキトも同じように笑顔で頷いたが
「そうそう。僕たちも楽しかったからね。ソフィアが士官学校へ行ってしまうとクロード達が寂しがるかもしれないけどね」
とソフィアに言った。
「間違いなく寂しがるだろうな」
とシバも頷いた。
「それは私も同じです。でも……」
とソフィアは言葉を詰まらせた。実は覚悟は決まっていたが、気持ちの整理はまだついていなかった。パーティメンバーと離れる事がとてつもなく寂しく感じられていた。
「ま、慌てて答えを出す必要はないって。士官学校に通いながら、『これからどうすべきか?』『どうしたいのか?』を考えれば良いんだよ」
とシバは優しい笑顔を見せて言った。
「はい」
ソフィアはそのシバのひとことで、救われた様な気がしていた。
そして
「これからゆっくりと考えます」
と笑顔で応えると空を見上げた。
ソフィアの視線は小さくなっていった艦影を追いかけていた。
この話はこれで終わりです。
ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。
次回は多分最終話となる予定です。




