宴会である
「おお!! フェリーではないか!!」
と叫んで、上座のフレデリックの前に胡坐をかいて座り込んだ。
慌ててフレデリックが上座を譲ろうと立ち上がったが、それをスサノ帝は制して円座を持って来させてその上に座り直した。
「ご無沙汰しております。帝」
と改めてフレデリックが手をつき挨拶をした。
「何を言う。お主も帝になっておるではないか! がはは」
とスサノ帝は豪快に笑った。
「は、そうでしたな。それよりもその節は色々とご指導いただき、いくら感謝してもし切れません」
とフレデリックは手をついたまま礼を述べた。今フレデリックの脳裏には、草庵で茶を飲みながら聞いたスサノ帝の言葉が蘇っていた。
「それはもうよい。それよりも戴冠式に行けなんで済まなかったのぉ」
と今度はスサノ帝が頭を下げた。
「いえ。状況を鑑みもせずにお声がけして申し訳ありませんでした。ご配慮いたみ入ります」
とフレデリックが申し訳なさそうに更に頭を下げ礼を述べた。
当時、『トウイの国』は今よりも鎖国状態が厳しく守られていた。それは始祖イササギの教えがまだ強く残っていたからだ。それと同時に今までどこの国とも国交がなかった『トウイの国』が、モルタリア帝国の皇帝戴冠式だけに参列する事も他国の注目を集め、余計な詮索を生むことになるという危惧もあった。
それ故にスサノ帝だけでなく『トウイの国』の王太子アメノも参列しなかった。
「しかし、この三人とこうやってまた相まみえる事が出来るとは感無量である」
とスサノ帝は本当に嬉しそうに破顔した。
「私もです。我が娘の事もありますが、帝にお会いしたいという気持ちも嘘ではありません。シバとアキトがこの国へ暫く逗留していると聞いて、居てもたってもいられなくなりました」
とフレデリックは正直に気持ちを伝えた。
「良き哉、良き哉」
とスサノ帝は嬉しそうに笑った。
この日はそのまま急ごしらえの宴席となり、フレデリックを中心に旧交を温める事となった。途中で王太子のアメノと次男のヒコネ王子も呼ばれ、宴を共にする事となった。
呼ばれたアメノとヒコネはスサノ帝の両側に座った。
そしてアメノは床に手をつき
「フレデリック三世皇帝陛下におかれましても、お変わりはなく……」
と慇懃に挨拶を始めた。
「止めてくれ! アメノ! お主にそれをされると居心地が悪すぎる!」
とフレデリックは慌ててアメノの挨拶を止めた。
――スサノ帝を目の前にして上座に座っているだけでも居心地が悪いのに、それは嫌味か!!――
と本来ならフレデリックはこう叫びたかったのだが、それは流石に抑え込んだ。
「そうなのか? 皇帝になってもやはりお主は変わらんな」
とアメノは床に着いた手を上げると肩の力を抜いたように笑った。やはり軽い嫌味だったようだ。
暫くして宴もたけなわになったころに
「失礼します」
との声と共に障子がすっと開いた。
そこにはソフィアが正座しており、障子が開くと手をついて
「遅くなりました。お召しにより参上いたしました」
と口上を述べた。




