幻獣たちの会話
「ほほぉ……それはそれは……あれが新しく眷属になったモルタリア帝国の皇女か……」
と『雫』は目を細めてソフィアを見つめた。
「あぁん? あれは魔導書じゃないのか?」
と『雫』は目ざとくソフィアが手にしている魔導書が『グリモワール』である事に気が付いた。
「そうだ。奴が皇女を新たな持ち主として認めたんだよ」
と『翡翠』は姫巫女とソフィアから目を離さずに答えた。
「ほほぉ……魔導書が認めましたか……それはそれは……しかしあれが姫巫女様と一緒にこの神殿にあるというのはハツネ様の時以来ですね……」
と『雫』は二人をじっと見つめて言った。
「懐かしい光景でしょう?」
と『白銀九尾』が『雫』に話しかけた。
「はい、ハツネ様が初めてこの神殿に来た時の事を思い出しましたよ」
と『雫』は本当に懐かしそうに呟いた。
「お主はハツネ様のお気に入りでしたからね」
と『白銀九尾』も目を細めて二人の修練風景を見ながら言った。
「いえ。ハツネ様は、分け隔てなく我々を好いておりましたよ。あの方はそういうお方です」
と本当に懐かしそうに『雫』は答えた。
「そうでありましたね」
と『白銀九尾』も納得した様に頷いた。
「ハツネ様がここに来られた時は、まだ幼子だったけどね」
と『翡翠』も懐かしそうに言った。
「で、あの皇女はこれからこの神殿に住むのですか?」
と『雫』は聞いた。
「う~ん。どうだろう? 多分、ここに住むことは無いと思うよ。姫巫女様もソフィアを『伍柱の守護巫女』にするつもりはないみたいだから。そもそもソフィアが眷属になったのは僕のせいなんだ……」
と『翡翠』がこれまでの経緯を『雫』に語った。ソフィアが何故姫巫女様の眷属になったのかを説明した。
「成る程。そういう事ですか……あなたの魔力は我々の中でも一番ですが、姫巫女様の魔力に依存しますからね。あんなバケモノのような人間は二度とお目にかかる事も無いというのに……本当に心配性ですね。あなたは……」
と『雫』は半ば呆れたように言った。
「そうは言ってもね……あまりにもあっけなく、僕はシバにあしらわれてしまったからね」
と『翡翠』は本当に悔しそうに言った。
「だからあれらは規格外の二人ですよ。まともに考える相手ではありません」
と『白銀九尾』も『雫』に同意するように言った。
「それにしても魔導書の魔法までも伝授するとは……姫巫女様もあの皇女には思い入れが強いようですね」
と『雫』は少し意外そうに言った。
「そりゃぁ、ソフィアの魔力を姫巫女様も使えるようになるからね。僕もだけど……」
と『翡翠』が言うと
「それだけでいいじゃないですか? わざわざ魔導書の魔法までも伝授する事はないでしょう。その姫巫女様にも匹敵する魔力だけを、姫巫女様に差し出せば良いだけの話では無いのですか?」
と『雫』は反論した。
「確かにそうなんだけど、魔導書がソフィアを新たな主人と選んでしまったんだから仕方ないだろう?」
「ふむ。あ奴も『永遠氷穴』に封印され過ぎてぼけてしまったのですか? なんと嘆かわしい……」
と『雫』はまだ納得がいかないようだった。
「そう言われればそうですねぇ……でも姫巫女様には何かお考えがあるのかもしれませんね」
と『白銀九尾』もその姫巫女の意図を計りかねていた。




