最終魔法
「あんたにはお見通しなんだな……」
と魔導書は観念したようにアキトに言った。
そして
「その通りだよ。そこのオッサンに初めて会った時に、姫巫女様もその娘の姿も直ぐに繋がったよ。吾輩は今でも姫巫女様の魔導書だからな。歴代、吾輩を手にした者たちはいたが、姫巫女様だけは別だ。正直に言うと、その姫巫女様の眷属となったその娘に吾輩の魔法は見る必要はない。姫巫女様に教えを乞えば済む話だ」
と白状した。
「だったら何故?」
と『そこのオッサン』呼ばわりされたシバが聞いた。
「吾輩がその娘に会いたかったからだ。勿論姫巫女様にも会いたかったというのもある」
「初めてお前を手にした時の第一声が『中を見せてやりたいが、お前さんではないんだな』と言うのはそういう事だったのか?」
とシバが聞いた。
「そうだ。あの王二人は吾輩を見つけた後も、そのまま何年も吾輩を手元に置いたまま何もしなかった。誰にも見せなかった。普通ならお主も指摘した通り姫巫女様に見せるだろう? それさえしなかった。そこにお主が来た。この機会を逃しては、二度とここから出る事は叶わないと判断したまでだ」
「それで俺をアキトの言う通り運び屋扱いしたのか?」
とシバが憤って言った。
「だって、それはお主の本業だろう?」
と魔導書が反論した。
「ぐっ! 確かにそうだが、ただ働きは別だ!」
とシバも言い返したが
「お前の負けだな」
とアキトがシバの肩に手を置いて首を振った。
「じゃあ、『アルマゲドンを知られたくなかった』と言うのも嘘か?」
と納得できないようにシバは魔導書に食ってかかった。
「それは嘘ではない。まさか本当に『神の領域の火』まで会得しているとは思わなかった。どうせいずれは吾輩に書かれた魔法を見ずとも、たどり着けるであろうとは予測していたが、既に近しいものを持っているとは思わなかった」
と魔導書は素直に白状した。
「手の込んだ芝居をしやがって……」
とシバはまだもやもやとした気持ちが吹っ切れていなかったが、取り敢えずはそれなりに納得するしかなかった。
『魔導書如きに手玉に取られた』と落ち込むシバを横目にアキトは姫巫女に
「ところで始祖イササギがいざという時、最後に見せろと言ったのは『アルマゲドン』の魔法陣の事じゃないですか?」
と聞いた。
「え?」
と姫巫女は唐突にアキトに指摘されたのか、動揺しているように見えた。
そんな事にはお構いなしに更にアキトは
「しかしこの魔法陣、そもそも王どころか、姫巫女様の魔力でも単独では行使するのは無理ですよね?」
と質問を重ねた。
「……はい……」
姫巫女の視線は落ち着きが無かった。
「ああ……そういう事かぁ!」
とシバはアキトが言わんとすることが理解できた。話題が変わってシバも冷静になれたようだった。
「そうだ、シバ。姫巫女様一人では無理でも、二人の魔力を合わせればこの魔法陣は発動させることができる。今はソフィアが姫巫女様の眷属だ」
とアキトは魔導書がソフィアを新たな主と選んだ真の目的を指摘した。




