本当の目的
「そうだ。この聖域に入った時にそれは確信に変わった。すでにお主達は同じような力を持っておると……それも『神の領域の力』だ」
「そうだったな……これは炎杜家の力だったな……」
とシバは有りし頃の迦焔の姿を思い出していた。
『神之怒』は、炎杜迦焔に『神の領域の力』を教えて貰いながら作り上げた魔法だった。
その当時の事をシバもアキトも同時に思い出していた。
「そんなお主達に今更隠す必要もないだろう」
「……それで諦めて見せることにしたのか?」
「いや、正直に白状すると、それでもできれば知られたくなかったんだが……知られたら知られたで、それでも良いとも思っていたのも事実だ。お主の作った魔法は『アルマゲドン』と匹敵すると言っても過言ではない力だ。それを持っているお主に、今更隠し立てしても仕方ないという思いはここにきて更に感じていた」
と魔導書はすっきりしたように話した。この期に及んではどっちでも良かったのだろう。
「ふむ。ところでイササギはこの魔法を行使できたのか?」
とシバは魔導書に聞いた。
「始祖様か……もちろん行使できる力はあった。実際に行使したことはないが」
「当たり前だ。そんな事をしていたらこの世界が無くなっているだろう?」
とシバは呆れたように言い返した。
「そういう事だな」
「それにしても……本当に始祖イササギは俺たち並みにチートだったんだな……」
とシバは言いながら
――会ってみたかったなぁ――
と思っていた。
「もしお主達と出会っていたら始祖様も喜んだであろうな」
と魔導書も同じ事を思っていた。
その時アキトが
「魔導書。ちょっと聞いて良いか?」
と声を掛けた。
「何を聞きたい?」
「ソフィアに見せたのは、彼女のまだ知らない魔法を教えるためだと言ったな?」
「ああ、そうだ」
「実はそれこそが本当の目的だったんじゃないのか?」
「それはどういう事だ?」
と魔導書ではなくシバがアキトに聞き返した。
「いやね。魔導書の話しぶりを聞いていると、元々ソフィアには初めから魔法を伝えるつもりだった様に聞こえるのだが……シバの件は……まぁ、嘘ではないが、その時次第って感じだな……そうだろう?」
とアキトは魔導書に尋ねた。
「……」
魔導書は無言だった。
「あの『北の大地』でスサノ帝やスキノに読ませなかったのは、あの二人には使いこなせない魔法だったからだな? あの二人の魔力はそれなりに強いが、転移者のイササギには敵わない。それこそ見せても意味がないわけだ。だから無言を通した。そういう時にシバがこの魔導書を手にした。本来なら転移者で始祖と同じ魔力を持つ男が目の前に現れた。そこで開いても良かったが、開かなかった。それは何故か? 『ここで見せてしまうとソフィアまで辿り着けない』そういう事じゃないのかな? お前には姫巫女を通してソフィアの存在が分かっていた。だから敢えてそこでは開かずに、シバにここまで魔導書を運んでこさせた……という事なんじゃないのか?」
とアキトはこれまでのやり取りを見て、この一連の流れは魔導書が仕組んだ事だと感じていた。




