封印
「話は少し戻って、二人で大陸を旅している頃の話です。その頃から、イササギはこの書に魔法を書くようになりました。それらは全てイササギが生み出した魔法です。彼がこの国を統一した後もそれは続きました。もちろんイササギが生み出した魔法ですから高度で難易度の高い魔法です。誰にでもすぐに再現できるものではありませんし、誰にでも無制限に見せられるものでもありません。
そこで私はイササギの指示で、この魔導書に選ばれた人間しか読む事が出来ないように縛りをかけました。イササギの死後、彼の子孫やこの国の者に転生者が生まれたりすることがありました。
彼の子孫の一人に転生者が生まれました。ハツネという娘でした。彼女の魔力は始祖イササギと比べても、何の遜色も無いくらい強力なものでした。それもあり彼女を幼き頃に我が神殿で『伍柱の守護巫女』の一人として私の手元に置き弟子にしました。この魔導書の後半部分にはその彼女が生み出した魔法も書かれています。そのハツネが最終的にその魔導書を『永遠氷穴』の奥に魔獣とともに封印したのです。
その時に『私がかけた魔導書の縛りが、時の流れによって弱まったり解けたりしないように』と、魔導書自体に魔力を持たせました。更に魔力の行使を自ら行い、対象者の魔力の流れや生まれ、血筋だけでなく、その人物の考え方も見極めさせるためにハツネと私で『永遠氷穴』の精霊にこの魔導書を護らせることにしました。それがグリモワールなのです。なので正確にはグリモワールを名乗る精霊という事になります」
「なるほど。そこでこの雑記帳は『しゃべる古本』と進化したんですね」
とシバが納得したように満足げな表情を浮かべて言った。
「その通りですが、『古本』は可哀そうすぎますね」
と姫巫女は魔導書に視線を送りながら言った。
「そのハツネという人の時代には、この国は、元の様に分裂していたという事ですか?」
と今度はアキトが聞いた。
「そうです。分裂というか、四つの島は各々イササギの子孫の王が立ち、独自に島の運営を行うようになっていましたね。別にいがみ合うとか、島同士が争うとかはありませんでした。何かあればその四人の王が集まり協議をする事に依り穏便に事を済ませておりました。
ハツネは本島の王の娘でしたが、国の運営には関わらずに幼少の頃からこの神殿に入りました。なので冷静にこの国の状況を第三者的に判断できていました。ハツネは『今ならこの国は、万が一他国から攻められても、この魔導書に頼らずとも各々の王が力を合わせる事に依って戦える。それくらいの軍事力をこの国は持っている』と判断しました。それが魔導書を『永遠氷穴』に封印した理由です。
その時、魔導書は彼女を主として認めていましたが、ハツネの決断に従い北島の始祖イササギの遺跡『永遠氷穴』に封印される事を了承しました」
「なるほど、この魔導書は主を選ぶ系の魔導書なんですね」
とアキトが納得したように頷いた。
「そうです」
と姫巫女は頷いた。




