シバの認識その2
「噂だと思って気にも留めてなかったわ」
とシバは居直ったように胸を張って言った。
「はぁ……そうかぁ……残念ながらそれは事実だ。今でも多くの国で、それはまだ試されている」
「ふん……無駄な事を……」
とシバは呆れたように呟いた。
「無駄だと思っても、もし本当にそんな異世界人が召喚出来て味方に就いてくれたらどうだ?」
「まぁ、勇者だからな。最終兵器を手に入れたようなもんだわな」
「そうだ。そんなわざわざ呼び出してまで欲しい奴が、実際に目の前に二人も居たら、味方にしようと思うだろうが? それはお前もフェリーに散々言っていただろう?」
「確かに言ったけど、王族や貴族がすり寄ってくるようになったのは、俺たちがミカサを飛ばすようになってからだろう?」
とシバは反論した。
「そうだ」
「だから王族たちはミカサを欲しがっているのかと思っていたわ……ミカサを手に入れるために俺たちも欲しがっているのかと……」
「違うな。逆だ。俺たちが異世界人だからだ。ミカサは二の次だ。俺たちが手に入らないのであれば、その代わりにミカサを手に入れようとしただけだ」
とアキトはシバに言って聞かせた。
「そうかぁ……実はそうかもしれんと思った事はあったが……やっぱりそうだったんだ……」
とシバはこの期に及んでやっとこの世界での転生・転移者の位置づけが理解できたようだった。
「お前はマジで無自覚に生きてきたんだな? 本当に信じられないくらい、とんでもない所で勘がトロイというか……脇が甘い時があるよな? お前……」
と心底呆れたようにアキトは言った。
「……」
無言でシバは恨めし気にアキトを見た。返す言葉が見つからなかったようだ。
「……だって、アガサのババァには出会った瞬間にバレていたし、師匠にも直ぐにバレていたし……言わなくたって判る奴には判っていたじゃん……」
とシバはまだ納得いかなかったようで、ぶつぶつとひとりごとを呟いていた。
「すみません。シバが話の腰を折ってしまって……この勘トロは放っておいて、姫巫女様続きをお願いします」
とアキトは姫巫女に詫びながら話の続きを促した。もうこれ以上の会話をシバと続けても無駄だと悟ったようだった。
「はい。私もちょっとシバさんの認識には驚きましたけど、これだけ強ければもう何を言っても良いと思いますけど……」
と姫巫女は笑って言った。『この不毛な会話がいつまで続くのだろう?』と思っていた姫巫女は取り敢えず結論が出たみたいなので安堵していた。
ここに至っては、この二人の転移者は『自分たちが転移者だ』と言おうと言うまいと。すでに関係ない世界にいる事をこの場のこの二人以外は理解していた。




