ソフィアの説明
「この魔導書は元々始祖の備忘録みたいなものだったようです。始祖亡きあとはその子孫たちが書き足しているようですけど、この方々も転生者みたいです。どの時代からこの世界に来たのか? とかここに来る前はどんな生活をしていたのかとか、そんな事も書かれています」
「はぁ? それって魔導書では無くて旅館や民宿によくありがちな『寄せ書き帳』じゃないの?」
アキトが呆れ返ったように言った。
「そこまで言うのはちょっと酷なような気がしますが……前半部分はそれに近いかもです」
とソフィアは、困惑したような表情を見せながらもアキトの言葉に反論はしなかった。
「そりゃぁ、あの二人の王にこれは見られたくないだろうなぁ……というか『永遠氷結の魔獣』が護っていたお宝の魔導書が、こんなショボイ内容だと分かったら、スサノ帝やスキノなら怒り狂って燃やしかねんな」
とシバは少し魔導書に同情しながらつぶやいた。
「それにしてもこの内容……転生者か転移者しか読んでも理解できん内容だわなぁ……俺もあの漫画の最後は気になるし……」
とシバは言いながらも
――俺は転移者だっつうの……だから見せるぐらいは見せても良いだろうが――
と自分だけ、同じ転移者として除け者にされたような気がして納得しかねていた。
「はぁ……何がお宝だ! 単なる民宿の寄せ書きみたいなもんだろう。ふん。本当にこの役立たずの古本がぁ。勿体ぶりやがって! 期待して損したわ」
とシバは落胆したように悪態をついた。
「まあ……前半はシバさんの言う通りですが、ちゃんと後半部分には魔法も書かれています。ざっと目を通しただけですけど、そこはさすがに高度な魔法みたいですよ。それにこの魔法陣なら魔力の消費量も半端ではないでしょう……」
とソフィアがシバを慰めるように言った。
「ほほぉ……これはスサノ帝でも使いこなせないかぁ?……」
とその言葉にシバも興味を引かれたのか、ソフィアが手にしている魔導書を覗き込んだ。
「例えば……これは始祖が残した魔法ですね……『結界魔法』の章の中に『結界の無効化』とかありますけど、これってシバさんたちには意味ないですね」
とソフィアは魔導書のある文章を指さして言った。
「ふむ……確かに……『結界魔法』自体、今更学ぶことは無いな……」
と言いながらシバはそこに書かれている魔法解説を読んだ。
――なんだ? 今なら俺にも普通に読めているじゃないか……やっぱり勿体ぶりやがって、このクソ古本がぁ――
と憤りながらだったが……。
それはさておき、ソフィアの指摘は彼ら二人には思い当たる節があった。ここに来て早々『翡翠』が張り巡らした姫巫女の聖域の結界さえ、苦もなく入ってしまったという前科があった。
「その事もこの魔法の結界魔術の章で書かれていますよ。『結界の影響を受けない者……転移者はそれが持つ魔法の流れから、この世界の結界魔法の影響は受けず、無効である』……『転生者は転移者と似た魔法の流れを持っているが、元々がこの世界で生まれた人間なので、この結界魔法は機能する』と……ほらここに書いてありますよ」
とソフィアは魔導書を指し示しながらシバとアキトに見せた。




