理由
「この魔導書は、このトウイの国の始祖と呼ばれるイササギが著したものです。それはご存じでしたか?」
と姫巫女はシバに確認するように聞いた。
「はい。それは知っています。この国の成り立ちは、この前『北の大地』に居る時にスサノ帝から、簡単にだけど聞かされました。その時に教えてもらいました」
とシバは答えた。
「そうですか。その始祖イササギですが、実は彼も転移者です」
「え?」
とアキトとソフィアは軽く驚きの声を上げたが、
「やはり……そうでしたか……」
とシバは姫巫女の言葉に驚く事もなく、頷いていた。
「ご存じでしたか?」
「いえ。この『古本』が私の魔力を『懐かしい』と言ってましたからね……なんとなくそんな気がしていただけです」
「それで今日はソフィア様もここにお連れしたのですね」
「そうです。それは姫巫女様も最初からお見通しだったようですけど」
とシバは頭を掻きながら言った。
「そうですか……流石シバさんですね。多分、魔導書はシバさんの魔力にイササギと同じ流れを感じたのだと思います」
「その通り!」
と唐突に魔導書が口を挟んだ。
「だったらさっさと見せても良いだろうに……俺やスサノ帝達には見せないのに、ソフィアには何故見せたんだ?」
と不満そうにシバは聞いた。
「前にも言っただろう? ここに書かれている内容は、お主たちには全く必要のない事だと」
「じゃあ、ソフィアには必要な魔法だというのか?」
「そうだ。その通りだ。そもそもその娘は姫巫女様の眷属である。吾輩を読んでも読まなくても結果は同じだ」
魔導書の言う通りソフィアは既に姫巫女の眷属である。わざわざ読んだりしなくても姫巫女の持つ魔力や知識はソフィアにも自然と共有できる。
「だからさっさと開いたというのか?」
とシバは更に訳が分からなくなってしまっていた。
「そうだ」
――なんかその言い草は、腹立つな……――
シバはいまひとつ魔導書の説明に納得していなかった。
その時、姫巫女は手にした魔導書に目を通していたソフィアに声をかけた。
「ソフィア様はもうお分かりになりましたね」
「はい」
「では私に代わってご説明できますか?」
「はい。では姫巫女様に代わりその理由は私が答えます」
とソフィアは言って話し始めた。
「まず、これを見てください」
とソフィアはシバとアキトの目の前で魔導書を開いて見せた。
そこには昔懐かしい日本語の文字が目に飛び込んできた。
『本当に異世界転生なんかあるとは思わなかった。日本に帰りたい!』
『美味い寿司が食いたい。そばも食いたい。米と味噌が恋しい』
『ガラスの仮面の最終話はいつなのか?』
『ウォッシュレットが恋しい』
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などと愚痴とも望郷の念ともいえる書き込みが連なっていた。
それを見たシバとアキトは
「なんじゃ? こりゃ?」
と目が点になるほど、拍子抜けして思わず声を上げた。




