グリモワール
「なんだ? 魔導書がしゃべったぞ!?」
とシバは驚いたようにスサノ帝とスキノの顔を見た。
二人とも同時に首を振って
「知らん知らん。余もそれが話をするのを初めて聞いた」
とスキノも驚きながら否定した。
「そうかぁ……自律思考型の魔導書かぁ……もしかしてお前はグリモワールか?」
とシバは聞いた。
――アキトが居たら喜びそうな展開だな――
とシバは心の中でアキトの顔を思い浮かべていた。
「そうだ。我が名を良く知っているな。そこは褒めてやる」
と再び魔導書が答えた。
「ああん? なんだかタカビーな魔導書だな。お前、燃やしてやろうか?」
とシバは手のひらをかざして炎の魔法を発動する振りをした。シバはこうやって頭ごなしにバカにされるとキレることがある。
「止めろ! 流石にお前の魔力に耐える自信は無い!!」
と魔導書は素直に白旗を揚げて降参した。
「ふむ。素直でよろしい。だったら大人しく読ませろ」
「それは出来ん」
「何故?」
「吾輩は『英傑のみが許された魔導書である』。そもそもお前は英傑ではないだろ!」
と魔導書グリモワールは言った。
「うむ……確かに俺はしがない運送屋だが、面と向かって魔導書如きに言われるとなんだか腹が立つ。やっぱり燃やしてしまおう」
とシバは再び手の平をかざした。
「待て、待て!! だからお前……いやお主の魔力には耐えられんと言っているだろう!!」
と再び魔導書はシバに詫びを入れた。スサノ帝とスキノはこのやり取りをハラハラしながら眺めていた。
「ふむ……待てよ。今、『英傑のみ』と言ったな。スサノ帝は英傑ではないのか? このトウイの国を統一した大王だぞ!」
とシバは魔導書をスサノ帝に向けて聞いた。
「スサノは広い意味での『英傑』といえよう。しかし吾輩の認める『英傑』ではない。吾輩の言う英傑とは自らの力で運命を切り開こうとしている者であり、この世界では数百年に一人現れるか否かの英傑である。吾輩はその代々の『英傑』が生み出した魔法そのものであり、『英傑』のみに許された魔法を伝えるものでもある。故に我が魔法を行使できない者には、見せる必要が無いのである」
「スサノ帝や女王スキノには使えぬ魔法という事か?」
「ひとことで言ってしまえばそうなる。言い換えれば、我が魔法はスサノやスキノには必要のない魔法ともいえる」
「知ったところで会得もできないし、もし会得しても使い道は無いという事か?」
「うむ。そういう事になる」
「だったら何故、今ここに来て喋り出した? ずっと黙っていればいいだろう?」
シバはこの生意気な魔導書が気になり始めていた。
「うむ。お主の言う通りである。言葉にするのは難しいが、お主の魔力に懐かしさを感じたと言えば分かってもらえるだろうか?」
「懐かしさだと?……それでも見せられんのか……?」
「そうだ。正確に答えてやると、見せられないのではなくお主には見せても仕方がないという事だ」
「見せても仕方ないという事は、見ても意味がない……という事か」
とシバは呟くと暫く考え込んだ。
そして
「この魔導書を誰かに鑑定させなかったのか?」
とスキノに確認した。




