理由
「何かあったんだ? 俺たちはあの魔獣を退治して満足して帰ったが、その奥に何があるかなんて考えた事も気に留めた事も無かったな」
とその当時を思い出しながらシバは答えた。
ただシバの今の言葉には若干の嘘があった。
さっさと帰ったのは満足してではなく、これ以上便利使いされたくなくて退散しただけだった。
今では『この女王、民の為なら何でも使う、手段を択ばない女王である』とシバとアキトは確信していた。
「実はあの氷穴の奥には地下遺跡があった……」
とスキノは言った。
「ほぉ……そんなものがあったのか……で、そこにお宝が眠っていたとか?」
「そうだ。よく分かったな。あの魔獣はその遺跡とお宝を護っていたようじゃ」
とスキノは答えた。
「本当にお宝があったのか?……しかしあの氷穴は神聖な場所と言っていなかったか? なのにあれからその聖地を探索したのか? 罰が当たったりしなかったのか?」
とシバは驚きながら聞いた。
「あたらん、あたらん。それよりもあんなことがあった後だからな。それにあそこを護る魔獣も倒してしまったしな。調べない訳にもいくまい」
とスキノは表情を曇らせた。本音を言えば、本人たちも調べたくて調べた訳ではなかった。
本来であればシバの言う通りあの氷穴は、誰も足を踏み入れてはならない禁足の聖地であった。故にこれまで誰もそこを探索しようなどとは考えなかった。しかし、流石にそういう訳にもいかなかった。
「で、分かったのか? あれが何故、急に暴れ出したのか? そしてこの島を何故氷の世界に変えたのか?」
とシバは聞いた。
「うむ。暴れ出した理由は分かった。誰かがあの魔獣を怒らせ、たたき起こしたのだと」
とスキノは眉間に皺を寄せながら言った。
「はぁ? 誰が? そんな無謀な事を?」
とシバは驚いたように聞き返した。
「どうやらラシール帝国の奴等らしい……」
とスキノは憎々しげに言った。
「らしいとは?」
「その遺跡に氷漬けにされたラシールの軍人の死体が沢山転がっておったわ」
とスキノは吐き捨てる様に言った。
「ほぉ……そりゃラシールで間違いないな。魔獣をたたき起こして、殺られていたら世話が無いな。でもなぜあの帝国の奴等がこの北島までやって来たんだ?」
「そこまでは分からん」
とスキノは首を振った。
「それにそんな多数のラシール帝国の軍人が侵入してきたのを、この島の奴等は誰も気が付かなかったのか?」
とシバは少し呆れた様な表情を見せて問い詰めた。
「そうだ。誰も気が付かなかった……」
誰が見ても明らかにスキノは悔し気に答えた。
「ふむ……この遺跡の宝が目的でやって来て、魔獣を目覚めさせたのか……?」
「そう考えるのが普通だろう?」
「あるいは魔獣自体を目覚めさせることが目的だったとか……」
とシバが言った。
「はぁ? そんな事をして何の得がある?」
「少なくとも『北の大地』は氷漬けになってどうしようもなくなった」
「目的はこの島か?」
とスキノは驚いたように身を乗り出しシバに聞き返した。
「そういう可能性もあるかもしれないという……あくまでも仮説だ」
とシバは表情を緩めて言った。
「そうか……」
と身を乗り出していたスキノは脱力したように椅子に座り直した。




