女王スキノの館
話は少し戻る事になる。
飛空艇ミカサでスサノ帝を『北の大地』と呼ばれる北島まで送り届け終えた時の話である。
この島はスサノ帝が治める本島の北に位置し、本島が縦長の島であるのに対して北島は本島に次ぐ大きさの菱形の大きな島だった。
この北島に連なる小さな島々を伝っていくと、ラシール帝国の東の端に辿り着く。そんな位置にこの北島はあった。
「そろそろ接待の時間ですよ」
とダミアンが操縦席で寝ていたシバを起こした。
「なんだ? もうそんな時間か?」
と大きな伸びをしながらシバは聞いた。
「そうですよ。そろそろ行かないと帝が怒鳴り込んできますよ」
「はぁ……気乗りしないなぁ……お前が代わりに行ってくれないか?」
「なに言っているんですか? さっさとスサノ帝とスキノ女王と飲んできてくださいよ。ついでにお仕事も取ってきてもらえるとありがたいです」
とダミアンは事も無げに言った。
「あの女狐に仕事を頼まれても金にならんだろう?」
「それを何とかするのが艇長の仕事でしょう?」
とあくまでもダミアンはシバの甘えを許さなかった。
「はぁ……どこに行っても虐げられている気がする……」
とシバは盛大なため息をついた。
「何を黄昏ているんですか? さっさと接待に行ってくださいね」
とダミアンはあくまでも容赦がない。
……そんな事をダミアンに言われて、シバは今ここに居る。
場所は女王スキノの館である。
スキノのプライベートルームにスサノ帝とシバと三人はいた。
スサノ帝の和室と違って、ここはフローリングの床にイスとテーブルという、いたって洋装なつくりの部屋であった。
「お主、また力が増したのではないか?」
スキノは席に着くなり、シバに唐突に聞いた。
既にスサノ帝とシバはこの部屋に通されるなり、彼女が来る前から酒を飲み始めていた。この二人にはいちいちスキノを待ってから飲み始めるという考えは全くなかったようだ。
「あん? 何も変わってないだろう?」
とシバは首を振ったが、
「いや、そんな事は無い。間違いなく増している。本当にこの男はどこまで成長する気なのだ?」
とスキノは半ば呆れたように言った。
彼女のスキルの一つである鑑定は、正確無比に相手の能力を余すことなく見破る。流石に桁違いの魔力を持つシバの全ては掴み切れていないが、そのスキルや能力の変化は敏感に分かるようだ。
いつもスキノの傍に控えている執事が、女王の前に置かれているグラスに静かに赤ワインを注いだ。
スキノはそのグラスを手に取るとワインを一気に飲んだ。
「いつもながら良い飲みっぷりだのぅ……」
とスサノ帝は感心しながら
「それはさて置き……実は余もそう思っていたが、やはりそうか……」
とスサノ帝も思い当たる節があったのか、シバの顔を見て何度も頷いた。
そして改めてシバに
「それよりもこの女王に隠し事は無駄だ。シバよ諦めるが良い」
とスサノ帝は言った。
「まぁ……確かに俺とアキトはまだ伸び代があるのは認めるが……」
と言い当てられて、シバはどこか不満げに見えた。
そんな事はお構いなしに
「ところで、お主覚えておるか?」
とスキノは唐突にシバに問いかけた。




