ソフィアの本心
ソフィアは意を決したように語り出した。
「実は父には最初『士官学校に行く前の一年だけでも良いから、冒険者にならせてください』と訴えていました。そういう話をした後に偶然、シバさんたちと知り合い、あの飛空艇に乗せてもらう事が叶いました。
私個人としてはこのままずっと冒険者として生きていきたいですが、父との約束もありますし、帝が父に言われた言葉が私にも響きました。
私はモルタリア帝国の皇女です。これは揺るぎない事実です。私一人の人生でない事はよく分かっているつもりでしたが、そうではなかった事に気付かされました。
私も父と同じく自分の運命と立場から逃げたくはありません。いつまでも父の娘として誇りをもって生きていきたい。その気持ちは揺るぎません。ただそう言いながら……まだ全てを納得した訳ではありません。優柔不断ですみません……」
とソフィアはここまで語って帝に頭を下げた。
スサノ帝は黙って微笑んだ。
ソフィアは話を続けた。
「しかし、私は決めました。今年、士官学校には進学します。それからの事はそこで考えます。今、全ての結論は出せません。でも、今やるべきことは分かっています。シバさん。私の我儘ですみませんが、士官学校に行くまで面倒を見てください」
と最後はシバに頭を下げた。
「ふむ。ソフィアが決めた事なら僕は反対しないよ」
とシバはソフィアの決断を後押しするかのように笑顔で言った。
「話がまとまったようだな。では、余の願いも聞いてくれるか?」
とスサノ帝がシバに話しかけた。
「なんですか? 私に出来る事であれば……」
とシバは少し身構えながら聞いた。
「大したことではない。余の息子もその士官学校に入れて欲しいのだ」
と言った。
「はぁ? アメノはもうオッサンだろう?」
とシバは思わず叫んでしまった。
「慌てるな。アメノではない。余の末の子のタケルである。丁度、今年齢十八となる。それを留学させよ! と言っている」
「え? まだ子供が居たのか……」
とシバとアキトは絶句した。
――この国ではアメノの息子としてもおかしくない歳だろう?――
とシバとアキトは同時に同じ事を思っていた。
「余とオイチとの子だ」
とスサノ帝は側室の名を挙げた。
「元気なオッサンだな……」
とシバは呆れたようにボソッと呟いた。
「当たり前だ!」
とスサノ帝は聞き逃さずに胸を張って自慢げに言った。
――誰も褒めてないって……――
とシバは思いながらもそれは流石に口にする事は無かった。
その代わり
「まぁ、フェリーに言えばその望みは叶うと思いますよ。士官学校には『留学生枠』って言うのがありますからね」
と、まともにスサノ帝の依頼に応えた。
「それを聞いて安心した。明日、タケルを道場に向かわせるので顔を覚えておいてくれ」
とスサノ帝は安堵の表情を見せて言った。
王の中の王と呼ばれても、息子の事に関しては普通の父親であった。




