飛空艇ミカサにて
その日、シバは珍しく朝から飛空艇ミカサに乗艦していた。
「おや? 艇長がこんなに朝早くからこの艇に居るなんて珍しい」
とダミアンが艇長室を覗き込んで驚いたようにシバに声を掛けた。
「なんだ? わざわざ嫌味を言いに来たのか?」
と自分のデスクに片腕をつき顎をその手で支えながら、シバは眉間に皺を寄せて言った。
「いえね。珍しく艇長室の扉が開いていたので、覗いたら艇長が居たのでね。驚いたわけですよ」
とダミアンは言いながら部屋の中へと入って来た。
「なんで驚く? この艇に俺が居るのがそんなに珍しい事かぁ?」
「なに言っているんですか! ここ数ヶ月で艇長は何度ここに来ましたか? 数えるほどですよ。それもこんなに朝早くから……」
とダミアンはシバの前まで来ると憤慨しながら反論した。
「そうだっけ?」
とシバは一気に弱腰になった。
「そうですよ。で、どうしたんですか?」
「ああ、今日は八雲のダンナが乗艦するらしいからな」
と言ってシバは身体を背もたれに預けて椅子を揺らした。
「ああ、そう言う事ですか。別当のダンナから『艇長も居ろ』って言われちゃいましたかぁ……そりゃ仕方ないですね」
と同情したようにダミアンは言った。
「なんで分かるんだ? 俺は『ダンナが乗艦する』としか言ってないぞ」
「そりゃ分かりますよ。言われもしない限り、こんな朝早くから乗らんでしょ?」
「……まぁ……そうだけど……」
とシバはダミアンに先読みされた事が気に食わなかった。
「それはそうと今日の行き先は『北の大地』ですよ。まだあっちは雪が積もってますからね。ちゃんと準備はしてきましたか?」
とダミアンは追い打ちをかける様に聞いた。
「ああ、とりあえずはな……ってお前は俺の母親か?」
とシバは眉間に皺を寄せて言い返した。
「だって、艇長はそう言うところ無頓着ですからねぇ。副長がいない時は特に気を付けておかないと、後で言われるのは俺ですからね」
とダミアンはいつもの事だと言わんばかりに反論した。
「分かった分かった。それはそうと、今日の夜はダンナを運び終わったら飲みに行くか?」
とシバは話題を変える様にダミアンを誘った。この話題を続ける限り自分には勝ち目がないと悟ったようだ。
「良いですね。でも行けますかねぇ……?」
とダミアンの返答は懐疑的だった。
「なんで? 他に何かあるのか?」
「どうでしょうかねぇ……」
とダミアンが考える素振りを見せた瞬間、
「副島八雲様が御乗艦されます!」
と甲板員のトニーの声が艦内に響いた。
「話は後だな。出迎えに行くか」
とシバは立ち上がった。
ダミアンは搭乗口へ向かい、シバは貴賓室へ向かった。
暫くして副島八雲が貴賓室に入ってきたが、その前に入って来たのはトウイの国の大王と呼ばれるスサノ帝であった。
「げ! 帝もご一緒でしたか?」
とシバは驚いたように声を上げた。




